表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乱れしこの世で夢見たり  作者: 泰兵衛
第4章 風林火山!!
37/157

第37話 これぞ、茶室監禁

【元亀二年 山田大隅守信勝】


おお。家を継げなくて、色々溜まっていた次男坊、三男坊の勢いはすごい。


おれのストレス発散は、カラオケだったが、こいつらは戦のようだ。


その勢いが人間離れした本願寺勢を食い止める。本願寺勢の足が止まった。


その時


「突撃!!」


間違いない。首元で揺れ、日光を反射している十字架を見て確信した。


右近だ。


ベストタイミング。ここが勝機だ。


「いくぞ!てめえら!全軍突撃!削りまくれや!」


ええい。なんでまたおれも槍をふりまわさんといけないんだよ。せめて刀にしてくれ。


馬を駆け出しながら思う。


帰りたい。


なんで、どうして?おれの戦はこうおれも槍をふりまわす展開になるんだよ。怖いんだよ。

本願寺がじゃない。戦が。


信長なんざ、本陣でじっと戦を見つめ、伝令に

であるかと答えるだけの簡単なお仕事じゃねえか。


そんな怖い思いを払拭するためにも叫ぶ。


「死ねや!死ねや!おまえらの死に場所はここと思い定めろ!」


采を振り回すのも、槍をふりまわすのもどっちも

しんどい。


【元亀二年

下間刑部頼廉】


天の気紛れか。はたまた山田大隅守は天に選ばれているのか。


天満より来襲してきた高山隊は槍衾をついた。

槍衾は反転できない。たちまち蹴散らされ、中をつかれた瞬間、全軍突撃。元々、数に劣る我らはこのように乱戦に追い込まれては、不利だ。


さすがによく鍛えられた我らが兵だが、こうまで好機をつかれては分が悪い。


魑魅魍魎〈ちみもいうりょう〉はびこる北摂津をまとめるだけはあるということか。


別に、天満、大和田を失っても石山さえあれば

本願寺になんの影響もない。


堅固なる石山本願寺に、強力なる兵。


そして、人の心をつかんではなさない上人。


本願寺は織田に勝てる。


「撤退ぞ!」


ここは潔く負けを認めてやる。


【元亀二年

山田大隅守信勝】


なんとか、本願寺勢を退けたおれたちは、隊列を整えていた。


「右近」


「はっ」


「ありがとう」


間違いなく右近が決死の思いで横をつかないと

おれたちは負けていた。


「いえ、神が拙者の力になったのです」


ありがとよと右近に手を振る。


「信濃、わが采はどうだったか」


「……は、大変素晴らしきものにございました」


心にもないことを言うなよ。顔に出てるぞ。まあ、からかうのもこんぐらいにしてやる。


その後、天満砦、陥落。山田軍は大和田砦に向かった。



「今、何と申した?」


おれは使番の口上に唖然とする。


「は、松永弾正忠様がご援軍に駆けつけられた、とのこと」


はあ?どういうことだよ


「困りまする!殿は今お忙しい!至急取り次ぎますゆえ、暫しお待ちを!」


「ああ?おれだぞ!てめえ!山田!会え!」


絶対、弾正だ。うん。もう大和田の兵は追撃しないだろう。弾正を手打ちにして大和に攻めこみ、大和を取ってやろうか。


「こいや、弾正!通してやれ!」


ずかずかと頬に傷がある変態醜悪ごみ虫弾正が入ってきた。


「6千の兵をつれてきてやったぜ。礼をいえ」


「 ど ー も あ り が と う 」


間延びした声で言ってやる。


「礼なんざ、銭しかだせねえぞ?それか、なぜかおれの手元にある三好下野守の松本茶碗をやろうか?」


「いいんだ。これはまあ、本願寺との縁切りだ」


?意味不明なおっさんだ。おれはこの通りに弾正に言うと、このおっさんは


「ハハハッ!そりゃわからんわ!」


「ふん、大和衆は好きに動かせ。北摂津勢はおれが動かす」


大和衆なんざ、おれは知らんから動かせね。こいつをおれの采で動かせないんのは残念だが。


「あいよ」


そう言って手を振る弾正だが、どうせ真面目に働く気はないだろう。


だが、1万6千もの兵で囲んだんだ。少しは楽になるかな。


ならない。楽にならない。


大和衆が働かない。


「弾正を呼べ」


もう、大和衆の指揮はおれがとる。んで、やつらを馬車馬にように働かせてやる。


「お呼びか?隅州」


にやつく弾正。


「見ろ」


「あ?なんだ?」


「折り畳み式の茶室だ。ここの右近は茶の心得がある。茶を用意しよう」


正史で秀吉がつくったという折り畳み式の茶室。


へえと笑う弾正はにやにやしながら、右近についていく。


二人が入ったのをみたおれは馬廻り衆と共に、一気に端をおり、屋根を広げ、縄で縛った。


これぞ、茶室監禁。


「おい!なにしやがる!」


「まあまあ。大和衆に手柄を立てさせてやるんだから」


おれは伝令を大和衆に送り、弾正が副将に任じられたことと、弾正が大和衆全軍突撃を命じたと

嘘をついた。


弾正の配下は弾正に似ず、アホなのでこれを信じた。


大和砦は、陥落。おれは弾正を出してやった。


「おい、弾正、右近になにもやってないよな?」


「なに、茶を飲んでたわ」


わめくと思ってたのによ。おれはむっとした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ