生まれ故郷を出る
十二歳で街に出る子どもたちを大人が引率してくれる。
今年は八人だ。
子どもの足では三泊四日かかる。
ここで、他の子どもたちが全然準備できていないことを知った。
大きな荷物のせいで、リュックの肩紐が切れたり、肩が擦れて血が滲んだり。
新しい靴で靴擦れを作ったり。
井戸や川の場所を考えずに水を飲み切ったり――。
これから親元を離れて街で暮らすの、大丈夫か?
引率の大人――村長の息子さんが飛び回って面倒を見ている。
水筒をいくつも持っていて、「これからは気をつけるんだぞ」と注意をしてから渡している。
失敗を経験させて、事前に調べておく大切さを教えているのだろう。
……なんか、大変そうだな。
仕方なく靴擦れの手当を手伝ったら、すごく感謝された。
「トーマ君はしっかりしているね。すぐに街の暮らしにも慣れて、一人前になれそうだ」
たぶん、褒め言葉なんだよな?
当たり前のことすぎて、返事を返す顔が引きつっていたかもしれない。
だって、準備していても想定外なことは起きるのに、準備不足で行動するのって怖くないか?
このときの俺は、自分が「下ごしらえ」というスキルの恩恵を受けてることを、すっかり忘れてた。
後から考えると、俺も傲慢だったと恥ずかしくなる。
一人の女の子がほぼ何も準備しておらず、ちらちらとこちらを見てくるが、無視だ。
俺だって、街までの必要最低限しか用意していない。
こういう「なんとかしてもらおう」とする人間に甘い顔を見せたら、際限なく寄りかかられてしまう。
今回は大人もいるんだし、そっちに行け。
……こういうところが、ヒーローじゃないんだろうなぁ。
颯爽と手を差し伸べて――なんて、ガラじゃないんだ。
「そんなだから、モテないのよ」
って、ボソッと言ったのが聞こえた。
はあ?
これから街に出て仕事して自活するっていう、自覚ないんじゃねぇの?
手を差し伸べなくてよかったわ。
お前なんかにモテなくて、結構だ。アホか。
村で一番かわいいとちやほやされて、デレデレした男どもがいろいろ世話を焼いてくれたんだろう。
でも、俺はそんな連中の仲間に入る気はないからな。




