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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第九章 ダンジョン

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崩落

 翌朝、三層に挑むために階段を降り始めた。

 その後ろをミナスがついてくる。


 気の毒だが、朝食は別にさせてもらったし、一緒に行動はしないとルナが代表で宣言した。

「わかった、わかった」と両手を挙げて、少し離れたので安心したのだが……。


「神経、図太すぎにゃ」

 サァラが苛立っている。


「落ち着かないとミスをしやすいわよ」

 フォンが言葉をかけた。自分自身に言い聞かせるように、胸に手を置いている。


「撤退するのも手だな」

 ルナの言葉に、俺たちは立ち止まった。

 後方のミナスまで立ち止まるのが、腹立たしい。


「そうだな。イライラするし、依頼を受けて潜っているわけじゃないもんな」

 俺も注意力が散漫になって、危ない気がしてきた。



 三層にいる崩落トカゲは、上から落下してくるモンスターだ。

 時々、ダンジョンの壁ごと落ちてくることもある。


 前方に崩落した様子が見られた。

 それに巻き込まれたパーティーがいて、怪我人が出ている。だが、ポーションなどで治療は済んでいるようだ。

 崩落に荷物が巻き込まれて、それを掘り起こそうとしているところだった。



「手伝う?」

 サァラがルナを見る。


「まあ、急ぎじゃないから手伝ってもいいか」

 ルナが俺たちに訊いた。


「ええ? そんなただ働きやめようよ」

 いつの間にか近づいてきたミナスが、しれっと会話に参加してきた。


「あんたはメンバーじゃないにゃ。一人で先に行けばいい」



 そのパーティーに近づいて声をかけようとしたら、ミナスがさっと俺たちの前に出た。

「ねえ、手伝ってあげようか」

 ミナスがそのパーティーに話しかけた。


 俺たちはぎょっとした。先ほどと言っていることが違う。

「この子たちは気が進まないみたいだけど、あたしは手伝うべきだと思って。ねぇ」

 と俺たちを振り返る。


 なんだこの茶番は。

 親切なのは自分で、俺たちは言われてしぶしぶ手伝うというシチュエーションを作られたのか?



 ルナがさっと腕を俺たちの前に出し、俺たちは立ち止まった。

「あたしたち、その女とは仲間じゃないんだ。

 怪我の手当は終わっているみたいだし、緊急の手伝いは要らないとみていい?」


「ああ、大丈夫だ。気をつけて、よい冒険を」

「ありがとう。そちらも無事に地上へ戻れるよう、エールを」

 リーダー同士が、冒険者がよく使う挨拶を交わした。



「え、ちょっと。何……待ちなさいよ」

 慌てるミナスを置いて、ルナは元の道を引き返す。もちろん、俺たちもそれに続いた。

 優しい人のふりをしたミナスは、彼らを置いて追いかけてくることはできないようだ。




「わかった。あいつ、自分が中心にいないと落ち着かない女なんだ」

 ルナが早足で遠ざかりながら言った。


「仲間に入れてほしいんじゃなくて、乗っ取る気だったのね」

 フォンがそう付け加えた。


 なんだか、一気に腑に落ちた。

 些細なことでも優位に立とうとしてきたのは、そういうことか……。


「昨日言っていた愚痴をまとめると、逆ハーレムパーティーに欠員が出て、臨時メンバーの募集で移籍してきた。

 その女王様が妊娠したからその後釜に座れると思ったのに、他のメンバーは出産の面倒までかいがいしくみて活動休止になっている、と」

 フォンはざっくりと身も蓋もないまとめをした。


 その逆ハーレムパーティーはこの街では有名で、女性の冒険者たちは「欠員の募集になんか絶対に応じない」と言っていたらしい。

 それで他の街の冒険者ギルドにまで応募を出し、ミナスが引っかかったのだ。


「当てが外れて、次のターゲットとして私たちに目をつけたのね」

 フォンがぷりぷりと怒っている。珍しい。


「実力を磨いても、孤立する人はするんだな」

 腕だけ磨いても、それで生きていけるわけじゃないんだ。

 いや、ソロでやっていくと決めてしまえばいいのか?


「自分の欲望のために人に利用するにゃ」

 サァラがそう吐き捨てた。


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