第四話 「盗賊団」
……うん?
「ちょ、ちょっと待って刹那。あの鎧は──。」
優駿は慌てて、剣を持ち身構える刹那に制止する様呼びかける。優駿はその一団の鎧や旗を見て、その一団が何であるかを理解していた。
「あの鎧は……。あれは、この国。翔国の軍隊の鎧だよ。」
「……何?」
──ドドドドドド!
「一体、何しに来やがった。」
その騎兵の隊長らしき人物が一人、刹那の方に向かい馬上のまま近付いてくる。
──ドガラ。
「……どうやら遅かった様だな、すまぬ。」
……え?
この村が襲われた事を知っている?
「先程、この村が盗賊団によって襲われていると、知らせに来た者が居てな。その為、我らが急遽駆け付けて来た訳なのだが、その肝心の盗賊団は既に去った後の様だな。……すまぬ、我らがもう少し早く来ていれば。」
……盗賊団?
この村は盗賊団に襲われたのか?
「おいっ、それは一体何処の盗賊団だ!教えやがれ、俺が行って全員ぶっ殺してやる!!」
怒りを顕にし、刹那は騎兵に詰め寄った。
「……朧の団。この村を襲った盗賊団は、朧の団だ。」
──!?
「……えっ?」
朧の団。
その名を聞き、怒りに震える刹那だが。対称的に優駿は口に手を当て、何かを考えていた。
「今から我らは、その朧の団の討伐に向かう。……村の者達よ、くれぐれも変な気は起こさぬ様にな。」
──ドドドドドド。
そう言って、騎兵の一団は村を後にした。
…………。
「朧の団。……必ずぶっ殺してやる!俺は絶対許さねぇからな!!」
…………。
優駿はただ黙って、何かを考えていた。
──ざっざっ。
刹那達が土を掘り、村の人達を埋葬しているのを横目に。優駿は寝転がりながらただそれを、ぼーっと眺めていた。
優駿は手伝った方がいいのか?と、申し訳ない気持ちで一杯ではあるのだが。……とにかく、空腹で動く事すら出来なかった。一応土を掘る努力はしてみたものの、空腹の為に力が入らず全く土が掘れなかったのである。
村の状況を見て回る際に、刹那達も何か食べられる食料は無いかと探したのだが。すぐに食べられそうな物は、あらかた盗賊達が持って行ったらしい。
…………。
優駿は何も出来ずにその場に倒れ、自分が何も出来ない事に歯痒さを感じながら。その盗賊団。……朧の団に付いて考えた。
朧の団。
この国の盗賊団の一つである朧の団。朧の団はこの国、翔国で一番名の通った盗賊団である。この国の人全てが、その朧の団の名前を知っていると言っても過言では無い。
何故なら、その朧の団は──。
…………。
──!?
……あれ、刹那は?
優駿は先程から、刹那の姿が見えないのに気が付いた。
「あ、あのー。刹那は?」
とりあえず、優駿は地面にへばり付きながらも聞いてみる。
「ん、あれ?おかしいな、さっきまでそこに居た筈なんだが……。用でも足しているのかな。」
…………。
先程、刹那は仲間四人に。明日盗賊団、朧の団の討伐に向かうと言っていた。そう決め刹那達は今日、村の人達を埋葬するお墓を作っていたのだ。その為刹那もつい先程迄、土を掘っていた筈なのである。
…………。
……まさか?
刹那は走っていた。薄暗い森の中、一人走っていた。
──パチパチパチ。
刹那達の村からその盗賊団、朧の団の根城迄はかなりの距離があった。馬でも丸一かかる程の距離が離れており、刹那もここ迄来るのに二日間も要していた。
刹那は明日に備え、本日はここで休む事に決めた。森の中で仕留めた獣と、川で取れた魚に火を通し。その微かに揺れる焚き火の火を、ただ眺めていた。
──パチパチパチ。
…………。
刹那は、静かに剣を手に取る。
……一人。
この森の獣の気配では無い。人だ、恐らく一人。明らかに人の気配、こちらに向かっている。刹那は神経を研ぎ澄まし、気を張り巡らせて辺りの様子を伺う。
刹那の剣を持つ手に力が入る。
──ガサッ。
武将紹介
「優駿」
武力 ?? かなり低い
知力 ?? 今の所ぽんこつ
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。




