第三十六話 「苦汁の選択」
厳狼将軍に一斉に襲いかかる、月影団の盗賊達。それを崖の上から見下ろしている他の盗賊達は、たった三百しかいない討伐軍の姿を余裕の表情で眺めていた。
迫りくる千五百の盗賊達に全く動じずに、厳狼将軍はニヤリと笑う。
「……田分けが。」
──ゴパァ!!
「ぐはぁっ!」
一刀両断される月影団の頭目呉頭。……いや、少し違う。正確には、その巨大な矛は一振りで十数人の盗賊達を斬り裂いていた。
「なっ!?」
その衝撃の光景に、我が目を疑い静まり返る五千の盗賊達。
「ふははははははは。これから始まる戦の前に、軽く準備運動と行くかのぉ……。」
──ザシュウ!ズシャア!!
盗賊達は為す術も無く、次々に只の肉片と化していった。一瞬で百人以上を斬り裂く老将の姿に。……厳狼将軍の恐ろしさに。
千を超える月影団の盗賊達は戦意を消失し、ガタガタと震えていた。
「…………。」
厳狼将軍の戦う姿に呼応し、後ろに控えている三百の騎兵達も動き始める。……いや、三百では無く、四万の兵が動き出す。
──ドドドドドドドド!!
「俺達に最初から、勝ち目何て無かったんだ……。」
「あんな化け物が居るなんて、聞いてねぇぞ!!」
「やってられるか畜生、俺は逃げるぜ。」
動き始めた四万の大軍に恐れを成して、蜘蛛の子を散らすが如く逃亡し始める盗賊達。崖の上に待機していた他の盗賊団も、全て撤退を始めた。
──ドドドドドドドド!
「五千で、奴らを追え。」
「はっ!」
そして厳狼将軍率いる討伐軍三万五千は、標的を公孫翔率いる反乱軍に変更し進軍を開始する。
「こちらと違い、あちらは何やら嫌な臭いが立ち込めておるのぉ。」
厳狼将軍は、何かしらの罠がある事を承知していた。……しかし、王の命令は絶対である。今日中に首を上げろ、との指示が無ければあの様な罠の中に飛び込む必要は全く無い。
「……全く、困った物じゃわい。」
援軍である五千の月影団の逃亡、そして迫る三万五千の大軍勢……。
こうなる事を予測していた公孫翔達朧の団は、三千の兵で山中を馬で駆けていた。公孫翔は目的の地点に到着し、走らせていた馬の足を止め、静かに後ろに振り返る。
「…………。」
動き始めた討伐軍、三万五千と言う大軍が朧の団を追ってこちらに迫ってきている。しかし公孫翔は動く事無く、只その目を閉じ頭を悩ませていた。
そこに一人の仲間が、公孫翔の元に急いで駆け寄ってくる。
「……何か情報は?」
「大変だっ、翔。月影団、全員逃げ出しやがった。討伐軍は、それを追って行ったんだが……。減らせたのは、その五千だけだ。」
「……そうか、やはり五千程度か。」
「…………。」
険しい表情で悩む公孫翔の姿に、黄牙は何も声を掛ける事が出来ない自分に歯痒さを感じていた。……自分が一番、公孫翔を支えてやらなければいけないのだと。黄牙はそう考え、剣を力強く握り締めていた。
迫りくる、三万五千の討伐軍。……策が潰え、迷う姿の公孫翔。
──ドドドドドドドド!!
三万五千の進軍で揺れ動く山中、公孫翔はそれを険しい表情で睨み付けていた。
──ギリッ。
歯を軋ませ、ある決断を迫られる公孫翔。……苦汁の選択を。公孫翔には最早、苦肉の策を選ぶしか道は残されてはいなかった。
「…………。」
武将紹介
「優駿」
武力 45
知力 85
主人公 オーラがあまり無い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89
知力 54
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。
「公孫翔」
武力 92
知力 99
髪型 98 美容院通ってるの!?
朧の団の若きリーダー。義賊。これでもかって程、髪型に気合いを入れている。え?毎日、美容院通ってる?ってレベルに気合いが入っている。後、仲の良い妹が一人居る。
「黄牙」
武力 96
知力 77
自称 最強剣士。
公孫翔の相棒。非常に腕の立つ剣士。最強を自負しているのだが、実際は……。
「劉士元」
武力 97
知力 67
暗殺 最強の一族
大陸最強の暗殺者一族、"剣竜"。
「臥龍」
武力 96
知力 68
体格 98
"天覇十傑"に名を連ねる、最強の将軍の一人。その実力は、剣竜とも互角に戦える程の強さを持つ。翔国が誇る、二大将軍である。
「張翼」
武力 94
知力 87
自分 大好き
翔国、臥龍配下の部隊長。その実力から、将来を有望視される人物。野心家で、自信過剰な所がある。
「青辛」
武力 74
知力 92
糸目 では無い。目を閉じているだけ。
知将。その知略は翔国一と称される人物。翔国の軍略を一手に取り仕切っている将軍である。二大将軍に隠れがちだが、非常に優秀な将軍と言える。
「呉頭」
武力 85
知力 38
悪行 96
大陸最大の盗賊団、月影団の頭目。朧の団以外で唯一、討伐隊を退ける程の武闘派集団の親玉である。かなりの怪力の持ち主。かなり悪事を働いているが、領主程嫌われてはいない。
「士龍」
武力 84
知力 58
努力 家
志願兵の一人。刹那にその実力が認められ、一隊を任せられる。槍の使い手で、実力はそこそこ。割と勘が冴える事もある。
「司馬晋」
武力 78
知力 89
糸目 開眼しないタイプの糸目。
掴み所の無い、何考えて居るのか良く分からない糸目。……その糸目が、開眼する事は無い。
「厳狼」
武力 98
知力 84
最強 お爺ちゃん
"天覇十傑"に名を連ねる将軍。翔国軍、筆頭の大将軍でもある。……そろそろ引退して、孫とゆっくりしたいお年頃。身長二メートル以上の巨体を誇っている。




