第三十四話 「老兵」
「何て、数なんだ……。」
まだ戦いに慣れていない、新入りの志願兵数名がそう小声で漏らした。
──オオオオオオオオ!
四万と言う大軍を前にして、恐怖に怖じける新人兵士達。この四万の大軍と、それを率いる"天覇十傑"の将に動じずに居られるのは、公孫翔と黄牙の二人だけではないだろうか。
三千しかいない朧の団に、襲いかかる四万の討伐軍。十倍以上の差がある、翔国軍との決戦が始まろうとしていた。
「…………。」
公孫翔は、チラリと左側の崖に視線を移す。手筈通り月影団を中心に、多数の盗賊団が加勢に来ていた。……その数は、ゆうに五千を超え。朧の団三千と合わせれば、八千対四万と言う形になるだろう。
「勝てそうか?……翔。」
この大軍を前にして、少し不安を感じたのか。黄牙は公孫翔を心配し、そう尋ねる。
「こちらが負ける事は、まず無いだろう。悪くても引き分けだ。奴らには、軍師が居ないからな……。」
四万の大軍を見ながら、公孫翔は何処か寂しそうにそう話した。
「……そうか。」
四万の大軍を前に、二人は全く動じもせず語り始める。
「刹那、司馬晋、士龍……。俺は、実に良い拾い物をした。あの三人は、いずれ"天覇十傑"にさえ引けを取らない将に成長する事だろう。これでまた俺達の野望に、一歩近付く事になる。」
公孫翔は黄牙の顔を見つめ、熱く野望を語る。
「俺は目の前に居る四万の討伐軍を倒し、そして十国全てもを制圧し。……この大陸全土を、統一する王になる。その為には黄牙、お前の力が必要だ。……これからも頼むぞ。」
「任せておけ、"天覇十傑"は全員この俺が倒してやる。」
「フッ……。」
……二人は、笑っていた。
「……行くか、三人の夢へな。」
──────────。
「うーむ、どうしたものか。全く、この国の王にも困った物じゃ……。」
この戦いに無理矢理参加を余儀なくされた、一人の老兵はボソリと漏らす。
「儂もそろそろ引退して、ゆっくりとした老後を送りたいのだがな……。」
この老兵は隣国である葉国への侵攻に、参加を強要されていた。
しかし急遽、本国から呼び戻されて戻って来てみれば……。翔国軍随一の知将である筈の青辛将軍が敗戦の責任を取らされ、そして処刑された事に心を痛めていた。
「やれやれ、本当にこの国の王には困った物よな……。」
おまけに、その反乱軍の鎮圧に向かわせられ。更には本日中に、その首を取ってくる様に命じられる事になる。
「反乱軍がそれを逆手に取り、罠を仕掛け様物なら終わりなんじゃがのう……。」
老兵は白くなった髭を触りながら、げんなりと呟いた。
「……如何なさいますか?厳狼将軍。」
隣に居る側近の兵士が、そう老兵に話し掛けた。……いやその人物は、老兵と言うにはあまりにも似つかわしく無い風貌なのである。その鍛え上げられた肉体は同じ"天覇十傑"である、臥龍将軍に匹敵する程の巨躯であった。
──"天覇十豪"の一人でもあり翔国軍筆頭の大将軍、厳狼。
「ならば策ごと、潰すしか無かろうて。」
厳狼将軍は巨大な矛を手に、鋭い目付きで反乱軍を睨み付けながら。……ニヤリと笑っていた。
武将紹介
「優駿」
武力 45
知力 85
主人公 オーラがあまり無い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89
知力 54
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。
「公孫翔」
武力 92
知力 99
髪型 98 美容院通ってるの!?
朧の団の若きリーダー。義賊。これでもかって程、髪型に気合いを入れている。え?毎日、美容院通ってる?ってレベルに気合いが入っている。後、仲の良い妹が一人居る。
「黄牙」
武力 96
知力 77
自称 最強剣士。
公孫翔の相棒。非常に腕の立つ剣士。最強を自負しているのだが、実際は……。
「劉士元」
武力 97
知力 67
暗殺 最強の一族
大陸最強の暗殺者一族、"剣竜"。
「臥龍」
武力 96
知力 68
体格 98
"天覇十傑"に名を連ねる、最強の将軍の一人。その実力は、剣竜とも互角に戦える程の強さを持つ。翔国が誇る、二大将軍である。
「張翼」
武力 94
知力 87
自分 大好き
翔国、臥龍配下の部隊長。その実力から、将来を有望視される人物。野心家で、自信過剰な所がある。
「青辛」
武力 74
知力 92
糸目 では無い。目を閉じているだけ。
知将。その知略は翔国一と称される人物。翔国の軍略を一手に取り仕切っている将軍である。二大将軍に隠れがちだが、非常に優秀な将軍と言える。
「呉頭」
武力 85
知力 38
悪行 96
大陸最大の盗賊団、月影団の頭目。朧の団以外で唯一、討伐隊を退ける程の武闘派集団の親玉である。かなりの怪力の持ち主。かなり悪事を働いているが、領主程嫌われてはいない。
「士龍」
武力 84
知力 58
努力 家
志願兵の一人。刹那にその実力が認められ、一隊を任せられる。槍の使い手で、実力はそこそこ。割と勘が冴える事もある。
「司馬晋」
武力 78
知力 89
糸目 開眼しないタイプの糸目。
掴み所の無い、何考えて居るのか良く分からない糸目。……その糸目が、開眼する事は無い。
「厳狼」
武力 98
知力 84
最強 お爺ちゃん
"天覇十傑"に名を連ねる将軍。翔国軍、筆頭の大将軍でもある。……そろそろ引退して、孫とゆっくりしたいお年頃。身長二メートル以上の巨体を誇っている。




