第三十三話 「それぞれの目標」
「おかえりなさい、どうだったんですか?」
公孫翔が戻り、出迎える優駿。
「まずまずだな。俺が居ない間に、何か変わった事はあったか?」
「……え?いや、特に何も無かったかなぁ。あ、そう言えば刹那が探してた様な気が……。」
「ああ、あの件か。すまないが、部屋まで呼んできてくれるか?」
「分かりました。」
「よう、連れてきたぜ!こいつらだ。」
バン!と勢い良く扉を開け放ち、自信満々の表情で部屋に入ってくる刹那とその一行。
公孫翔が先日、刹那に頼んで置いた一件である。公孫翔は、次の戦いに腕の立つ者を二、三人集める様に刹那に指示を出していた。
「俺の剣を一度でも受け止める事が出来たのは、この二人だけだったぜ。」
「……名を聞こうか。」
「俺の名前は士龍です、よろしくお願いします。」
「僕の名前は、司馬晋だよ。……よろしく。」
「良い面構えだ。こちらこそ、よろしく頼む。お前達三人は、次の戦いで三百人程の隊を率いてもらう。残り五日と短い間だが、俺の元でしっかりと戦い方を学んでくれ。」
「おお三百かよ、任せとけって!」
刹那は意気揚々と返事を返す。
五日後には、国が大軍を率いてやって来る。朧の団と討伐軍による、これまで以上に熾烈な戦だと予想出来るだろう。
その時に軍を率いてくるのは勿論"天覇十傑"の一人、厳狼将軍である。
公孫翔達、朧の団は次の決戦に備え準備を行っていた。
「悪いな……。当分帰れそうに、なくなっちまった。」
刹那は故郷の村の空を眺めながら、少し寂しそうに呟いていた。村の人達の様な悲劇を繰り返さない為にも、刹那は戦う覚悟を決める。……そして誓ったのだ、誰もが驚く天下最強の剣士になってやると。
刹那が故郷の村に帰るのは、きっとその後になるに違いない。
「皆の仇は、俺が討つよ……。それまで、もう少しだけ待って居てくれ。」
悲壮感漂う寂しい目付きで槍を手に、激しく鍛練に励む一人の青年、士龍。
彼は故郷も、家族も友人も全て領主に奪われ亡くしていた。謂れ無き罪で捕らわれ、命を失った家族や仲間達。
士龍はこの東の領土よりも、更に貧しい南の地域から朧の団に参加していた。
士龍にとって今回の志願兵は、正に天命だったと言えるだろう。
「世の中には、こんなに凄い人が居るんだね。」
司馬晋は只たんに、公孫翔と言う存在に憧れて朧の団に入団していた。
たった二百人程度と言う寡兵で、一万二千もの討伐軍を打ち破る朧の団の姿に。……悪に抗い立ち向かう公孫翔の姿に、心酔し入団を決意した。それは司馬晋の過酷な生い立ちの所為、もあるのかも知れない。
「明日か……。」
「……ああ。」
二人で夕陽を眺める公孫翔と黄牙。……公孫翔には夢があった。幼い頃親を亡くし、兄妹二人できり育ってきた公孫翔。
例えどんなに頭が切れると言っても、まだ十に満たない子供達がまともな生活を送れる筈が無い。住む家が無く、食べる物さえ無く。……時には、一週間も何も口に出来ない事もあった。それに何かあった時に、力の無い子供では到底大人達に敵う筈が無い。公孫翔一人の力では、たった一人の妹を守る事も厳しかった事だろう。
……もし黄牙に出会う事が出来なかったら、今頃何処かで野垂れ死にしていたか可能性もあった。
公孫翔にとって黄牙は友では無く、兄弟の様な存在なのかも知れない。
公孫翔よりも体格に恵まれていた黄牙は、どんな相手にも負けなかった。……その強さに時には大人達でさえも、恐れる強さを持つ黄牙。
そんな黄牙にとって、公孫翔達兄妹とは"守るべき存在"だった。
ある日公孫翔は、黄牙に朧の団に入ろうと言い出す。……一体何故、と意味が理解出来ない公孫翔の行動を。黄牙は当初、不思議に感じていた。
……しかし公孫翔は瞬く間にその頭角を現し、朧の団の頭目にまで登り詰め、天才的な軍略で討伐隊をも退ける様になっていた。
そして遂には打倒翔国を掲げ明日、討伐軍と雌雄を決するまでに至る。
勿論、その功績は黄牙の実力による物が大きいえるのかも知れない。……だが、黄牙は思う。
──公孫翔なら、この翔国だけで無く十国全てを統一する王になれると。
……黄牙は、そう信じていた。
「…………。」
優駿は、その夜。なかなか眠れないで居た。……明日の戦いを勝てば、優駿の世界が変わる事になるだろう。
優駿は今まで、自らの夢を諦めていた。いや、正しくはその夢を見る事すら叶わなかったのだ。
……しかし、今は違う。
"天覇十傑"の将軍が率いる討伐軍に、本当に勝つ事が出来るのなら……。
仇である蛇国への復讐も叶うのでは無いだろうか?
……優駿は遠い日に見た目標を思いだし、束の間の眠りに就いた。
武将紹介
「優駿」
武力 45
知力 85
主人公 オーラがあまり無い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89
知力 54
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。
「公孫翔」
武力 92
知力 99
髪型 98 美容院通ってるの!?
朧の団の若きリーダー。義賊。これでもかって程、髪型に気合いを入れている。え?毎日、美容院通ってる?ってレベルに気合いが入っている。後、仲の良い妹が一人居る。
「黄牙」
武力 96
知力 77
自称 最強剣士。
公孫翔の相棒。非常に腕の立つ剣士。最強を自負しているのだが、実際は……。
「劉士元」
武力 97
知力 67
暗殺 最強の一族
大陸最強の暗殺者一族、"剣竜"。
「臥龍」
武力 96
知力 68
体格 98
"天覇十傑"に名を連ねる、最強の将軍の一人。その実力は、剣竜とも互角に戦える程の強さを持つ。翔国が誇る、二大将軍である。
「張翼」
武力 94
知力 87
自分 大好き
翔国、臥龍配下の部隊長。その実力から、将来を有望視される人物。野心家で、自信過剰な所がある。
「青辛」
武力 74
知力 92
糸目 では無い。目を閉じているだけ。
知将。その知略は翔国一と称される人物。翔国の軍略を一手に取り仕切っている将軍である。二大将軍に隠れがちだが、非常に優秀な将軍と言える。
「呉頭」
武力 85
知力 38
悪行 96
大陸最大の盗賊団、月影団の頭目。朧の団以外で唯一、討伐隊を退ける程の武闘派集団の親玉である。かなりの怪力の持ち主。かなり悪事を働いているが、領主程嫌われてはいない。
「士龍」
武力 84
知力 58
努力 家
志願兵の一人。刹那にその実力が認められ、一隊を任せられる。槍の使い手で、実力はそこそこ。割と勘が冴える事もある。
「司馬晋」
武力 78
知力 89
糸目 開眼しないタイプの糸目。
掴み所の無い、何考えて居るのか良く分からない糸目。……その糸目が、開眼する事は無い。




