第三十一話 「戦いの準備」
──青辛将軍との戦いが終わり、あれから一週間の時が経過していた。
……何やら少し、騒がしくなった事に気が付く優駿。優駿達が住まう、ここ領主邸に慌てて伝令係が駆け込んでくる。
「…………。」
……何だろう?そう考え優駿は、公孫翔の居る部屋に向かう事にした。
優駿はあまり動じずに、落ち着きを見せながら歩いていく。それは優駿の中で伝令の内容が、ある程度予想がついていたからである。
あれから優駿は公孫翔の元で戦術を学び、目覚ましい成長を遂げていた。その為、ある程度の討伐軍の動きを予見出来る様になっていたのである。
……理由は、もう一つあった。
優駿は、次の戦いでは兵を率いて戦場に出る予定なのである。その為、詳しい作戦内容を公孫翔から聞かされていた事も大きい。
「…………。」
……作戦。しかし、その作戦は誰がどう考えても無謀だと思える内容だった。
──ガチャリ。
「やはり、率いてくるのは厳狼将軍ですか?」
優駿は扉を開け、伝令係の内容を予想し公孫翔にそう話し掛ける。
「……ああ、だが臥龍将軍と青辛将軍は出てこない。しかし参ったな、俺の予想が大分外れていた。こうなった以上、もう一度策を作り直さないとな……。」
「おかしいな、戦術に長けている青辛将軍を戦いから外すなんて……。一体、何を考えているんだろう?……隣国の侵攻に回ったのかな?」
今翔国は隣国である"葉国"に大軍を起こし、侵攻をしている最中である。その為討伐軍を率いてくるのは、厳狼将軍か臥龍将軍どちらか片方だけであり。それを補佐する為に青辛将軍も来るのでは、と優駿達は予想をしていたのだ。
……しかし優駿は、公孫翔の態度に疑問を感じていた。何時も冷静沈着な筈の公孫翔の表情が、かなり深刻な程険しい様に優駿には捉えられた。
……おかしい。青辛将軍が出てこないなら、次の戦いは有利に進められる筈なのである。
しかし公孫翔の表情は、かなり思い詰めている様に優駿には感じられた。……いや、これは怒りに震えているのだろうか?
「……何か、あったんですか?」
優駿は、おずおずと尋ねる。
「青辛将軍はこの前の戦いの責任を取らされ、斬首されたそうだ。」
──!?
その情報に驚き、耳を疑う優駿。
「何だって!?どうして、そんな馬鹿な真似を……。この国の王は、自分の首を絞めているのが理解出来ないのか?」
「……どうやら、そうらしい。」
公孫翔は何処か寂しげな表情で、そう語った。
……これで次の戦いは、かなり楽に事が運ぶだろう。しかし優駿には、例え敵であろうとも……。あの様な知略に秀でた将軍の首を斬る国の判断に、何か納得がいかなかった。
「あの……。あの件は、どうでしたか?」
確かに次の戦いは、こちらに有利に事が運ぶかも知れない。だが、それはこちらの準備がきちんと整った場合の話である。
「……ああ、それなら問題無い。良い返事が聞けそうだ。明後日、俺が直々に出向く予定だ。……まあ、それよりも先ずは明日が問題だ。果たして、何人集まるか……。」
──先の戦い。
青辛将軍率いる一万二千の討伐軍に対して、朧の団はたった二百人程度の寡兵で勝利を収めた。
その為、圧政に苦しめられている民達は歓喜の声を上げ。国中が朧の団の勝利に沸き立ち、皆が朧の団を讃えていた。
国中がその話で持ちきりになる中、朧の団は打倒翔国を掲げ義勇兵の募集を呼び掛ける。
ここ翔国は圧政に苦しめられているのにも関わらず、反乱を起こす人々は極僅かであった。……それは国の軍隊が、あまりにも強大な為である。
──そんな中、打倒翔国を掲げ颯爽と立ち上がる朧の団の姿に。民達の希望が集まり、共に戦おうとする人々は決して少なくは無いだろう。
「……何人、集まるのかな?」
優駿は何気無い気持ちで、そう喋ってしまった事に気が付く。……そして後から、しまったと後悔をする。
優駿の言葉に公孫翔はニヤリと笑みを浮かべ、何時もの様にこう話す。
「優駿、お前の頭の中ではどうなっている?お前は明日、何人の志願兵達が集まっていると予想している?」
……これだよ。
「……はぁ、三千人位ですかね。」
優駿はそう言いながら肩を落とし、大きな溜め息をついた。
武将紹介
「優駿」
武力 45
知力 84
主人公 オーラがあまり無い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89
知力 54
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。
「公孫翔」
武力 92
知力 99
髪型 98 美容院通ってるの!?
朧の団の若きリーダー。義賊。これでもかって程、髪型に気合いを入れている。え?毎日、美容院通ってる?ってレベルに気合いが入っている。後、仲の良い妹が一人居る。
「黄牙」
武力 96
知力 77
自称 最強剣士。
公孫翔の相棒。非常に腕の立つ剣士。最強を自負しているのだが、実際は……。
「劉士元」
武力 97
知力 67
暗殺 最強の一族
大陸最強の暗殺者一族、"剣竜"。
「臥龍」
武力 96
知力 68
体格 98
"天覇十傑"に名を連ねる、最強の将軍の一人。その実力は、剣竜とも互角に戦える程の強さを持つ。翔国が誇る、二大将軍である。
「張翼」
武力 94
知力 87
自分 大好き
翔国、臥龍配下の部隊長。その実力から、将来を有望視される人物。野心家で、自信過剰な所がある。
「青辛」
武力 74
知力 92
糸目 では無い。目を閉じているだけ。
知将。その知略は翔国一と称される人物。翔国の軍略を一手に取り仕切っている将軍である。二大将軍に隠れがちだが、非常に優秀な将軍と言える。




