第三話 「火の手」
──ザシュ!ザシュ!!
次々と盗賊を斬り伏せる刹那。
「シッ!」
刹那の、その強さは凄まじい物があり。優駿は初めて見る武に震え、固唾を飲んで見守っていた。
こんな盗賊が例え何人集まろうと、刹那の敵では無いだろう。この刹那と言う男の前では、その全てが無に等しかった。刹那はまるで赤子の手を捻るが如く、次々と盗賊達を蹴散らしていく。
「……ひえぇ、化け物だ。」
「おいおい、どの面下げて言いやがるんだよ。」
──ザシュ。
あまりにも刹那の、その圧倒的過ぎる強さの前に。盗賊達は恐れをなし、逃げ出し始める。
「おいっ、待てよ。威勢がいいのは口だけかよ。……全く。」
剣で肩をとんとんと叩き、余裕の表情を見せる刹那とその仲間達。
「やっぱり凄ぇな刹那は、流石村の守護神だぜ。」
「……ははは。」
優駿はその強さに圧倒され、ただ笑う事しか出来なかった。
盗賊団を殲滅し、村への帰路に着く五人……。と、それに付いていく一人。
…………。
「で、お前。何で付いてくるんだ?」
……あ。
「いやぁ……。あははははははは。」
言い出しにくい。
恥ずかしかった。あの様な強さと格好良く、凄まじい戦いをした男の前で。それを言い出すのは、少し勇気がいる優駿であった。
「あの、その。実は僕、帰る家とか無くて……。あの、その……。」
…………。
……あー。
「ちっ。情けねー野郎だなぁ。仕方ねーな、うちの村に来るか?……いいか?お前ら。」
「え?ああ、刹那がそう言うなら……。」
……良かったー。いい人そうみたいだ。と、優駿はほっと一安心する。
「所でお前、名前は?何処の村の者だ?」
「ぼ、僕の名前は優駿。出身は……。優国なんだ、もう無いけどね。」
…………。
「あー。それでか、情けねーとか言って、悪かったな。」
謝る刹那の姿を見て、少し驚く優駿。思ったより優しい人物の様だと改めて思う。
そんな他愛の無い話をしていると、優駿はある事に気が付く。
……煙?
──!?
「……あれは、俺達の村の方角だ。」
「……えっ?」
急ぎ村の方へと走り出す、刹那達。
「待ってくれよー。」
村の自警団に所属し、日々戦いや訓練等いつも体を動かしている五人に対し。何時もごろごろしては体を動かさない上に、空腹で飢え死に寸前の優駿。
……ぜぇぜぇ。
優駿はふらつきながらも必死に走り、五人の行方を見逃すまいとひたすら走り続けた。
……ぜぇぜぇ。
「もう駄目、もう無理……。」
諦めて、ゆっくり歩きながら後を追う優駿。しばらく歩くと優駿はその異変に気が付き、慌てて駆け出した。
──!?
……燃えていた。そこは地獄だった。村は火の海と化し、村の人は全て殺されていた。
「……酷い。」
優駿は、この様な地獄を目にする事は久しい事だった。そう九年前のあの日、以来……。
「……ぐっ。」
優駿の脳裏に、あの日の絶望が過る。
「うわぁぁぁ、父さん。」
「畜生……。何で、こんな目に。」
泣き叫ぶ四人。その姿を後ろから一人、黙って立っているだけの刹那に、優駿は多少の違和感を覚える。
……?
「……あの。」
不思議に思い、空気を読まず刹那に話かける優駿。
「……ん?ああ、俺か。俺は孤児だからな、家族なんて一人もいねぇ。だけどな、俺にとってはこの村の人が家族みたいなもんだ。……それを、それを。俺は、絶対に許さねぇ。俺達の村に手を出した事を、必ずこの手で後悔させてやる。」
……刹那。
優駿は、かつて自分も同じ感情を抱いていた事に同情し。刹那に過去の自分を重ね、何か自分に出来る事は無いのか?と、必死に辺りを見回す。
…………。
何か分かる事は、何か役に立てる事は。と辺りをきょろきょろと見回すのだが、特に何も見付ける事は出来なかった。
──ドドドドドド!
突如騎兵の集団が現れ、村の方へと駆け寄って来る。
──!?
その数、二百弱。
皆に緊張が走り、刹那の剣を持つ手に力と怒りが込み上げる。
「この村を襲った奴らか!?」
武将紹介
「優駿」
武力 ?? かなり低い
知力 ?? 今の所ぽんこつ
一応これでも主人公
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。




