第二十九話 「切り札」
「……え?切り札?」
……切り札。勿論、その件も気になる優駿なのだが。優駿にはもう一つ、先程から気になっている事があった。
確かに朧の団は討伐軍に囲まれ、窮地に追い込まれている。その為、優駿は先程から朧の団の事は心配しているものの……。何故か、自分の身の安全の事は心配していなかった。
──ガリッ。
優駿の背後は崖になっている。その為、後方から敵軍に襲われる心配は無いだろう。
優駿の左側には刹那が守っており、逆の右側には公孫翔が。……そして中央には黄牙が堂々と立ち構え、次々と討伐兵を薙ぎ倒していた。
……刹那が強い事は良く知っている。優駿は今まで、幾度も刹那の戦いを見守ってきたのだ。今この窮地で次々と敵兵を屠るその姿は、例え優駿で無くとも惚れ惚れする事だろう。
その刹那に勝利する程の腕を持つ、公孫翔の強さも理解出来る。刹那同様この窮地の中で、既に百人以上の討伐兵を倒しているのだ。……その実力は、かなり凄腕の剣士だと言うのは疑う余地も無いだろう。
……しかし。
──ザシュ!ザシュゥ!!
「……な、何だこいつは!?」
「ぐはっ!!」
「こんな化け物が居る事など、聞いていないぞ!?」
そんな中、恐ろしい気迫で討伐兵を次々と斬り裂いていく黄牙。その鬼神の如く戦う黄牙の姿を見て、優駿は考える。……この黄牙と言う男は、一体何者なのかと。
その恐ろしさに敵である討伐軍だけでなく、味方の筈の優駿ですら恐怖に震えていた。
……優駿には、それが理解出来なかった。優駿の目に映る黄牙の戦う姿は、もはや──。
……人の領域を超えた、人ならざる者にしか見えてはいなかった。
「…………。」
三千もの兵が居ながら、まだ討ち取れずにいる朧の団十六人に。青辛将軍は次第に苛立ちを覚え、険しい表情へと変わっていく。
「無駄な足掻きを……。それも何時まで持つか、見物だがな。」
──ドドドドドドド!
「第四隊、只今到着致しました!」
「……よし。」
第四隊が到達し討伐軍の数が増え、更に窮地へと追い込まれる朧の団。大軍に囲まれる中、優駿は焦りを感じ公孫翔の表情を確認する。……だがその顔は険しいものの公孫翔の顔は、まだ諦めている様には見えなかった。
──ドドドドドドド!
「第五隊、到達しました!」
「うむ。」
「だっ、第六隊……。」
伝令の兵士は顔面蒼白になり、がくがくと震え何かに怯えていた。
「……何をしている、早く報告しないか。」
周りの兵達が、喋らない伝令兵に見兼ねて声を掛ける。
「……どうした?」
「だ、第六隊。……全滅です。」
伝令兵はガクガクと震えながら、そう話した。
「……は?」
「たっ、大変です!第七隊が、全滅しました!!」
「同じく第八隊、壊滅!!」
あれだけ活気があり、勝利を信じ賑わう討伐軍陣営が一斉に静まり返る。
「……なん……だと!?一体、何が起こっていると言うのだ?」
青辛将軍は驚き、そして戸惑いながら公孫翔の方に振り向いた。
「……来たか。」
戸惑いを見せる青辛将軍とは対照的に、ニヤリと笑みを浮かべる公孫翔。
「……馬鹿な、三隊同時に壊滅だと!?有り得ん、奴等はたった二百人程度しか居ない筈だ。……援軍が、居たと言うのか?」
青辛将軍は少し冷静になり、伝令兵にその数を確認する。
「……それで、伏兵の数は?」
青ざめた表情の、伝令兵は言う。
「それがっ、たった一人に……。」
──ザッ。
怪しく光る刀を携え、討伐軍を殲滅しながら死神の如く登場する大陸最強の暗殺者一族"剣竜"。
……公孫翔は不敵に笑う。
「終わりだ、青辛将軍。お前が俺の前に姿を現した時点で、既に勝負は決していた。」
武将紹介
「優駿」
武力 45
知力 78
主人公 オーラがあまり無い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89
知力 54
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。
「公孫翔」
武力 92
知力 99
髪型 98 美容院通ってるの!?
朧の団の若きリーダー。義賊。これでもかって程、髪型に気合いを入れている。え?毎日、美容院通ってる?ってレベルに気合いが入っている。後、仲の良い妹が一人居る。
「黄牙」
武力 96
知力 77
自称 最強剣士。
公孫翔の相棒。非常に腕の立つ剣士。最強を自負しているのだが、実際は……。
「劉士元」
武力 97
知力 67
暗殺 最強の一族
大陸最強の暗殺者一族、"剣竜"。
「臥龍」
武力 96
知力 68
体格 98
"天覇十傑"に名を連ねる、最強の将軍の一人。その実力は、剣竜とも互角に戦える程の強さを持つ。翔国が誇る、二大将軍である。
「張翼」
武力 94
知力 87
自分 大好き
翔国、臥龍配下の部隊長。その実力から、将来を有望視される人物。野心家で、自信過剰な所がある。
「青辛」
武力 知略型なので低め
知力 翔国一らしい
糸目 では無い。目を閉じているだけ。
知将。その知略は翔国一と称される人物。翔国の軍略を一手に取り仕切っている将軍である。二大将軍に隠れがちだが、非常に優秀な将軍と言える。




