第二十八話 「疑問」
討伐軍の雄叫びと共に、千五百の軍勢が朧の団十六人に襲い掛かる。いや、優駿は武器を持っていない為、正確には十五人と言う事になる。……戦う事が出来ない優駿は、刹那達の戦いを見守り只祈る事しか出来なかった。
刹那達の戦いを見守りつつ、その戦いの最中優駿は考える。
……確かに公孫翔の分断作戦により、討伐軍の戦力を大幅に削る事が出来た。討伐軍はその数を、一万二千から千五百までに減らしたのだ。それは全て、公孫翔の策の成果と言えるだろう。
……しかし。
公孫翔の姿を、ちらりと視認する優駿。この時優駿の頭には、ある疑問が過っていた。
「…………。」
……公孫翔の策は、本当にそれだけなのだろうか?それだけで、あんなにも公孫翔は自信に満ち溢れる事が出来るのだろうか?
優駿は、次に崖の上に視線を移す。そこからこの戦いを傍観し、只眺めている討伐軍の指揮官、青辛将軍の姿を見る。
「…………。」
……そして、もう一つの疑問。
分断し軍を分けた筈なのに、この千五百の中に指揮官の青辛将軍が居る事である。
……どうして敵将である青辛将軍は、この場所が分かったのだろうか?それは、たまたま偶然なのか?それとも十六に分けた隊の中から、ここに朧の団を率いる公孫翔の存在を見抜いたとでも言うのだろうか?
……本当に、そんな事が可能なのか?
こちらは、隊を十六に分けたのだ。確率は十六分の一の筈なのである。それを、本当に……。
──!?
その事に気が付いた瞬間、優駿の体に背筋が凍る程の寒気が襲った。
「……不味い!早く逃げないと!こちらの策は、全て読まれていたんだ!!」
「何だって!?」
優駿の叫びに、刹那は驚く。……公孫翔の顔からも、以前の様な余裕の表情が消え失せていた。
「今頃、気が付いたか……。」
青辛将軍は崖の上から、こちらを見下ろし不敵な笑みを浮かべていた。
「貴様らの策など、全てお見通しよ……。七百五十なら、勝てると思ったのか?」
……そうなのだ。
朧の団は隊を十六に分けたのである。ならば討伐軍も軍を十六に分け、その数を十六分の一へと減らしている筈なのだ。
……しかし、討伐軍の数は七百五十ではなく千五百も居るのである。
──つまり。
青辛将軍はこちらの策を全て読んだ上で誘いに乗り、軍を分けた振りをしていたのだ。
──ドドドドドドドド!!
「第二隊、到着しました!」
「同じく第三隊、只今到着致しました!!」
青辛将軍の元に、分かれていた筈の討伐軍が続々と集まり始める。その数は、既に三千近くに膨れ上がっていた。
「……俺は、貴様らの策に乗じて軍を分けていたのだ。反乱軍の首謀者を炙り出し、誘い出す為にな。じきに討伐軍一万二千、その全てがここに集結する手筈となっている。……朧の団よ、貴様らの敗けだ。」
「……くっ。」
策が全て読まれ、追い詰められた事に気が付く優駿。その絶望を知り、目を閉じて膝を突きその場に倒れ込んだ。
「ざけんな!まだ、終わっちゃいねぇ!立つんだ、優駿!!」
「……せ、刹那。」
「俺が絶対、終わらせねぇ!!」
猛る刹那の姿に、震える優駿。……そして、そんな二人の掛け合いを見て公孫翔は笑っていた。
「ははは……。その調子だ、もう暫く耐え凌いでくれよ。それにだ優駿、諦めるのは少し早い。……俺達には、まだ切り札が残されているからな。」
武将紹介
「優駿」
武力 45
知力 78
主人公 オーラがあまり無い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89
知力 54
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。
「公孫翔」
武力 92
知力 99
髪型 98 美容院通ってるの!?
朧の団の若きリーダー。義賊。これでもかって程、髪型に気合いを入れている。え?毎日、美容院通ってる?ってレベルに気合いが入っている。後、仲の良い妹が一人居る。
「黄牙」
武力 96
知力 77
自称 最強剣士。
公孫翔の相棒。非常に腕の立つ剣士。最強を自負しているのだが、実際は……。
「劉士元」
武力 97
知力 67
暗殺 最強の一族
大陸最強の暗殺者一族、"剣竜"。
「臥龍」
武力 96
知力 68
体格 98
"天覇十傑"に名を連ねる、最強の将軍の一人。その実力は、剣竜とも互角に戦える程の強さを持つ。翔国が誇る、二大将軍である。
「張翼」
武力 94
知力 87
自分 大好き
翔国、臥龍配下の部隊長。その実力から、将来を有望視される人物。野心家で、自信過剰な所がある。
「青辛」
武力 知略型なので低め
知力 翔国一らしい
糸目 では無い。目を閉じているだけ。
知将。その知略は翔国一と称される人物。翔国の軍略を一手に取り仕切っている将軍である。二大将軍に隠れがちだが、非常に優秀な将軍と言える。




