第二十六話 「知略」
優駿は馬を走らせながら、ちらりと後ろを振り向く。
──ドドドドドドドド!
大量の土煙が舞い、後方から迫るくる一万二千の大軍勢。
「…………。」
ゾッと寒気が走り、優駿は身震いをする。今追い付かれたり、落馬すれば確実に命は無いだろう。……もう後ろは見ないでおこうと、震えながら考えを改める優駿。
「……公孫翔さん。これ、わざとギリギリで逃げましたよね?」
優駿の言葉に、公孫翔はニヤリと笑う。
「当然だ、奴等を誘き寄せるのが目的だからな。優駿、お前も少しは分かってきた様だな。」
「やっぱり……。」
がっくりと肩を落とす優駿だが、それと同時に少し安堵していた。……公孫翔には、この戦いに勝つ自信があると分かった為だ。
「優駿、軍を率いている将軍の事は知っているか?」
馬を走らせながら、公孫翔は優駿に尋ねる。
「あ、はい。翔国ではあの二人の将軍に次ぐ実力者で、巧みな戦術を操る名将だと聞いています。」
──青辛将軍。
翔国には"天覇十傑"に名を連ねる二大将軍が居る為、その存在を軽視されているのだが。青辛将軍は、知略に優れた優秀な将軍である。その知略は翔国一と言われる程の知将で、翔国軍の軍略を一手に取り仕切っていた。
「…………。」
……翔国一の知将。
優駿は、横目でちらりと公孫翔の姿を見る。
「どうした?優駿。」
「……いえ、何でもないです。」
──ドドドドドドド!
「…………。」
公孫翔は馬を走らせ、ニヤリと笑う様に優駿に話し掛ける。
「優駿。朧の団は二百とかなりの寡兵で、人数的にかなり不利な状況に曝されている。……しかし、俺達朧の団に有利な物が幾つか存在する。優駿、それが何か分かるか?」
「え、えーと……。」
いきなりの質問に戸惑いながらも頭を捻る優駿だが、特に気の効いた答えが出る事は無かった。
──ドドドドドドド!
南へと走る朧の団は目的地である南の山に到着し、一斉に山を駆け上がって行く。
「後は、手筈通り頼む!皆、死ぬなよ!必ず、生きて会おう!!」
公孫翔は手を掲げ、味方の兵を鼓舞した。
「優駿、お前は俺達に付いてこい。」
そう言って公孫翔は朧の団を半分に分け、二手に分かれさせた。
「…………。」
……二手に分かれる。その行動で優駿には公孫翔の狙いが、ある程度理解出来る様になった。
「……これは!」
──!?
「全軍、止まれ!」
青辛将軍は全軍に号令を掛け、進軍を停止させた。
「…………。」
「どうなされましたか?青辛将軍?」
二手に分かれる朧の団の姿に違和感を覚え、それが何かの策であると青辛将軍は感づいていた。
……朧の団は、二百と寡兵である。それをこの様な追い詰められた状態で、更に隊を分けその数を減らすと言うのは、あまり上策とは言えない。
「…………。」
青辛将軍は朧の団の中に、ある程度の軍略を操る者が居る事を理解していた。……だがそれは、どの程度の実力を持つ人物なのかは分からなかった。
それは今迄、公孫翔があまり策を弄していなかった所為でもある。
「……これは。」
──────────。
「一万二千の軍を分散させるのが、目的ですよね?」
優駿は山中を駆けながら、公孫翔の狙いを理解し公孫翔に話し掛けた。
……こんな山の中では鬱蒼と生い茂った木々に視界を遮られ、朧の団の正確な位置を判断し辛くなる事だろう。
「…………。」
恐る恐る、後方を確認する優駿。討伐軍の姿が見えず、優駿は討伐軍が動いていない事を理解する。
「追って、来ないのかな……?」
「……来るさ。俺達に有利な状況があるとすれば、それだ優駿。……奴は必ず追ってくる。例え、それが罠だと分かっていたとしてもな。」
「…………。」
──────────。
……青辛将軍は笑っていた。
「面白い。翔国一と称されるこの俺に、知略で挑むか?いいだろう朧の団よ、貴様の策に乗ってやろう。同じく軍を二つに分け、奴等を追え!」
「はっ!!」
──ドドドドドドド!!
知将と呼ばれる青辛将軍は、この時。公孫翔の放つ計略を全て見破り、その手の内を完璧に読んでいた。
……そして、その上で敢えて策に乗ったのである。
「この俺に知略で挑むとは、愚かな奴よ。朧の団よ、この俺の手の上で精々踊るがいい!」
武将紹介
「優駿」
武力 45
知力 78
主人公 オーラがあまり無い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89
知力 54
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。
「公孫翔」
武力 92
知力 99
髪型 98 美容院通ってるの!?
朧の団の若きリーダー。義賊。これでもかって程、髪型に気合いを入れている。え?毎日、美容院通ってる?ってレベルに気合いが入っている。後、仲の良い妹が一人居る。
「黄牙」
武力 96
知力 77
自称 最強剣士。
公孫翔の相棒。非常に腕の立つ剣士。最強を自負しているのだが、実際は……。
「劉士元」
武力 97
知力 67
暗殺 最強の一族
大陸最強の暗殺者一族、剣竜。
「臥龍」
武力 96
知力 68
体格 98
"天覇十傑"に名を連ねる、最強の将軍の一人。その実力は、剣竜とも互角に戦える程の強さを持つ。翔国が誇る、二大将軍である。
「張翼」
武力 94
知力 87
自分 大好き
翔国、臥龍配下の部隊長。その実力から、将来を有望視される人物。野心家で、自信過剰な所がある。
「青辛」
武力 知略型なので低め
知力 翔国一らしい
糸目 では無い。目を閉じているだけ。
知将。その知略は翔国一と称される人物。翔国の軍略を一手に取り仕切っている将軍である。二大将軍に隠れがちだが、非常に優秀な将軍と言える。




