第二十五話 「討伐軍」
朧の団による領主邸制圧の報せを受け、翔国国王は怒りに震えていた。
国王は朧の団を只の盗賊団ではなく、反乱軍と定め正式に反乱軍討伐の命を下す。
朧の団はその報せを受け、領主邸の中は一斉に慌ただしくなり始めた。
「……来たか。」
報告書に目を通している公孫翔の居る部屋に、慌ただしく駆け込んでくる優駿。
「…………。」
公孫翔は入って来た優駿には目も暮れず、届いた報告書を睨むように見続けていた。
そんな公孫翔の姿を見ながら、優駿は考える。……優駿は攻めてくる討伐軍の数は、約三千から五千と考えていた。しかし公孫翔の考えは優駿と違い、一万近くと予想していたのだ。
何も言わない公孫翔の姿を、優駿はじっと見つめながらも考えを巡らせた。……しかしたった二百程度で、そんな大軍と一体どう戦うというのだろうか?
「……俺も舐められた物だな。まだこの程度で俺の首が取れると、思われているとはな。」
「あ、あの……。思ってたより、少ないんですか?」
やはり五千以下なのかな?と、考える優駿。
「……いや。討伐軍の数は、約一万二千だ。」
──!?
「え!?一万二千?たった二百程度しかいない朧の団に、そんな大軍で……。」
「逆に少ないくらいだ。この程度で、俺の首を取れると思われているんだからな。それに、攻めてくる将軍も問題だ。"天覇十傑"の将軍が二人共外されている。……どちらか片方は、来てほしかったのだがな。」
「…………。」
優駿の頭は、訳が分からず混乱していた。優駿は頭を手で押さえ、とりあえず落ち着いて順番に一つ一つ解決しようと考える。
一万二千の大軍に公孫翔は、一体どう戦うのか?そして、勝つ事が出来るのか……。
「……それで、勝てそうなんですか?」
その言葉に公孫翔はニヤリと笑い、何時もの言葉で返す。
「それで、お前はどう思う?優駿。お前の頭の中では、俺は勝っているのか?それとも負けているのか?」
「…………。」
その言葉を聞き、優駿はがっくりと肩を落とした。
この国には、五人の将軍が居る。
"天覇十傑"の一人、翔国筆頭将軍である厳狼将軍は隣国に遠征中であり。同じく"天覇十傑"の一人、臥龍将軍は領主邸制圧の責任を取らされ謹慎処分を言い渡されていた。
その為、討伐軍の指揮は翔国三番手の実力を持つ青辛将軍に任命される事となる。
青辛将軍率いる一万二千の大軍勢が、反乱軍である朧の団目指し進軍を開始した。
──ドドドドドドドド!
優駿は今回の作戦内容を、公孫翔から一切聞かされてはいなかった。そんな中、優駿は迫りくる一万二千の大軍勢を前に、一体どの様にして戦うのかと公孫翔の方をちらりと見る。
「…………。」
大軍勢が迫っていると言うのに、陣形すら動かさず全く動く気配の無い朧の団に、だんだんと不安になってくる優駿。
「……あ、あの。」
「退くぞ、全軍退却だ。」
「……え?ええ!?退却!?逃げるんですか?」
「ああ、この人数差だ。まともにやり合っては、到底勝ち目は無いだろう。」
「…………。」
……逃げるなら、何故最初から逃げなかったのか?そう頭に過る優駿だが、今回は何も言わないでいた。
あれから優駿は、公孫翔の元で軍略を学んでいた。その為、優駿は公孫翔と言う男の知略の凄さをある程度理解していた。故にこの撤退にも何かしらの意図があり、何か狙いがあるのだろうと考える優駿。
──ドドドドドドドド!
公孫翔率いる朧の団二百五十は、全員で南の山を目指し馬を走らせる。
「…………。」
確かに優駿は、公孫翔の事を優れた軍略家だと認識している。……しかし、優駿は今回の作戦内容を全く知らされていない。優駿の頭には何処かしら、一抹の不安が残っていた。
武将紹介
「優駿」
武力 45
知力 78
主人公 オーラがあまり無い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89
知力 54
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。
「公孫翔」
武力 92
知力 99
髪型 98 美容院通ってるの!?
朧の団の若きリーダー。義賊。これでもかって程、髪型に気合いを入れている。え?毎日、美容院通ってる?ってレベルに気合いが入っている。後、仲の良い妹が一人居る。
「黄牙」
武力 96
知力 77
自称 最強剣士。
公孫翔の相棒。非常に腕の立つ剣士。最強を自負しているのだが、実際は……。
「劉士元」
武力 97
知力 67
暗殺 最強の一族
大陸最強の暗殺者一族、剣竜。
「臥龍」
武力 96
知力 68
体格 98
"天覇十傑"に名を連ねる、最強の将軍の一人。その実力は、剣竜とも互角に戦える程の強さを持つ。翔国が誇る、二大将軍である。
「張翼」
武力 94
知力 87
自分 大好き
翔国、臥龍配下の部隊長。その実力から、将来を有望視される人物。野心家で、自信過剰な所がある。




