第二十四話 「二人の夢」
領主の部屋を出た後、風に当たりたくなり外へと向かう優駿。
……その途中、優駿は歩きながら先程の公孫翔の言葉を思い出していた。
『俺は、十国全てを制圧するつもりだ。この大陸全てを制圧し、俺は世界の王になる。……ま、王様は他のなりたい奴に任せるがな。』
無茶だ、そんな事。……出来る訳が無い。
……優駿は、その言葉を何故か言う事が出来なかった。
そうぶつぶつと独り言を喋っていると、優駿は廊下で誰かと話をしている黄牙の姿を発見する。
──!?
先程の女性が、今度は黄牙にくっついている事に優駿は驚いた。……そう先程、いや常に公孫翔にくっついている女性だ。
「あ、あの……。大丈夫、なんですか?」
心配のあまり、優駿はつい声を描けてしまう。
「……何が、だ?」
黄牙は何の事か理解出来ず、優駿に聞き返す。
「そ、その……。公孫翔さんと、揉め事になるんじゃないかと思って……。」
「…………。」
「…………。」
優駿の言葉に、二人は顔を見合わせていた。
「ああそうか、優駿。紹介しておこう、こいつは公孫礼。……翔の妹だ。」
「…………。」
優駿は風に当たりながら、一人星空を眺めていた。
……ちょっと兄妹、仲良すぎないかな?と考える優駿だが、優駿にその答えは出なかった。
もし今優駿の目の前に、生き別れになった妹が現れたら……。きっと涙を流して、抱き締めるだろう。
両親を失い、この世に残された。……たった一人の家族なのだから。
優駿には行方不明の妹を探し、両親を殺した蛇国に復讐を誓った過去がある。だからこそ、公孫翔のあの言葉だけは決して笑う事が出来なかった。
十国、全てを制圧する……。
優駿が諦めていた目標を、公孫翔はさも当然の様に語っていた。そして、公孫翔にはそれだけの力があるのかも知れない。
「…………。」
優駿は、ぐっと力強く拳を握り締めた。……十国、全てを制圧する。それは、かなり馬鹿な人間の妄想でしかない。
だが諦めていた優駿の復讐が、今この時。零から一へと動き出したのである。
……優駿は両親の仇である蛇国への復讐を、もう一度決意する事が出来た事に喜んだ。
「どうした優駿、眠れねぇのか?」
一人考え事をしている優駿の元に刹那がやってくる、どうやら刹那もあまり良く眠れないらしい。
「刹那、怪我の具合はもういいの?」
「んー。痛くて、あまり眠れなくてな……。」
「…………。」
二人は暫く何も話さずに、只星空をじっと眺めていた。
「ねえ刹那、世の中には本当に凄い人が居るんだね……。」
公孫翔の話に優駿は只、驚く事しか出来なかった。自分と公孫翔との知識と見ている世界の違いに驚き、優駿は何も考える事すら出来なかった。
たった二百人程度で、万の大軍に挑む公孫翔の凄さに……。
「あ、勿論。刹那も凄いよ。」
「……俺は、弱ぇよ。」
「え?……いやいや。」
「だがな、見てろよ優駿。……俺は、必ず強くなってみせる。いつかあの二人を超える、最強の剣士になってやるぜ!」
刹那は夜空に向かって、そう誓った。優駿の"夢"と刹那の"夢"が今この時、静かに動き始めた。
「……あの二人って?」
──!?
「ん?……ああ、黄牙と剣竜だ。」
「…………。」
「……え?け、剣竜?」
「…………。」
「どうした?優駿、腹でも痛いのか?」
──!?
「えええええええ!?せっ、刹那。今、剣竜って言ったの?え?あの剣竜!?剣竜って、本当に居るの?あの伝説の、最強の暗殺者一族だよね?会った事あるの?……凄いね、刹那。」
「……は?何を言ってるんだ?優駿。お前、さっきまで公孫翔の部屋に居たんだろ?その時、部屋の中に居ただろ?剣竜。」
「は?……いや、誰も居なかったよ?」
……え?居たの?剣竜。……いや、居なかったよね?誰も居なかったよね?と、頭が混乱する優駿。
同じく不思議に思い、刹那も首を傾げていた。
……優駿は気が付いて居なかったのだが、"剣竜"劉士元は気配を消しながら壁にもたれ、眠っていたのである。
刹那程の実力者なら、強者が何処に居るのか。それを知る事が出来るのであった。
武将紹介
「優駿」
武力 45
知力 75
主人公 オーラがあまり無い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89
知力 54
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。
「公孫翔」
武力 92
知力 99
髪型 98 美容院通ってるの!?
朧の団の若きリーダー。義賊。これでもかって程、髪型に気合いを入れている。え?毎日、美容院通ってる?ってレベルに気合いが入っている。後、仲の良い妹が一人居る。
「黄牙」
武力 96
知力 77
自称 最強剣士。
公孫翔の相棒。非常に腕の立つ剣士。最強を自負しているのだが、実際は……。
「劉士元」
武力 97
知力 67
暗殺 最強の一族
大陸最強の暗殺者一族、剣竜。
「臥龍」
武力 96
知力 68
体格 98
"天覇十傑"に名を連ねる、最強の将軍の一人。その実力は、剣竜とも互角に戦える程の強さを持つ。翔国が誇る、二大将軍である。
「張翼」
武力 94
知力 87
自分 大好き
翔国、臥龍配下の部隊長。その実力から、将来を有望視される人物。野心家で、自信過剰な所がある。




