第二十二話 「軍略と言う物」
──!?
「幾ら何でも無茶だ!勝てる筈が無いっ!!」
……そう、次は一体何人で攻めてくるかすら分からないのだ。それは例え優駿で無くとも、無謀と思うのは仕方の無い事だろう。
「勝てる筈が無い……。か、それは残念だ。」
そう言いながら、公孫翔は尚も優駿の顔をじっと見つめていた。
その公孫翔の視線に、奇妙な不気味さを感じる優駿。その視線は、まるでこちらの考えを全て見透かしているかの様に感じられた。
「…………。」
──!?
そして優駿は、ある事に気が付く。それと同時に、自分は何て愚かなのだと思い知らされた。
──今、自分は試されているのだ。
……試されている事に、気が付く優駿。だが、本当に勝つつもりなのだろうか?とも、思い悩む。
「…………。」
翔国の軍隊は約五、六万以上と考えられる。それに対し、朧の団は二百五十人程度しかいないのだ。
……どう考えても、勝てる相手では無い。それにあの将軍達も居る。
「…………。」
優駿は少し俯き、顎に手を当て真剣に考え始める。
……もしかすると、何か見落としがあるのでは無いだろうか?
「…………。」
頭を働かせ悩む優駿の姿を、公孫翔はにやりと笑いながら楽しそうに見つめていた。
「……そうだ、それでいい。考えろ、俺が何を考えているのか?攻めてくる、敵の数は?そして、勝つ為に俺が取るべき策は?じっくりと、考えるんだ……。」
「…………。」
その公孫翔の小さな呟きは、頭を働かせ集中している優駿の耳には届いてはいなかった。
──!?
そして優駿は思考の末、ある結論に到達する。
「……勝てる。」
優駿は、ぶつぶつと呟きながら話を続けた。
「恐らく次攻めてくるの軍隊の数は、五千程度だ。あの将軍達が来ないのなら、朧の団にも勝てる可能性がある。」
「……そうか、それは良かった。」
「でもそれは、次の戦いに限った話だよ!……次は、必ず本気で攻めてくる。あの将軍達が万の大軍を率いてやってきたら、それはもう勝てる勝てないの話じゃなくなってくる。……勝てる筈が無いよ!!」
「…………。」
公孫翔は少し間を置き、目を閉じて静かに話始める。
「……そうか、それは残念だ。お前の頭の中では、俺は負ける計算なのか。」
優駿は、驚かずにはいられなかった。こんな無謀とも言える戦いを挑む公孫翔に、優駿の頭には疑問しか浮かばず理解に苦しんでいた。
万の大軍に、たった二百五十で勝てると言うのだろうか?しかし、この公孫翔は挑むと言うのだ……。
「……万の大軍に、勝つつもりなのですか?」
「ああ……。無論、勝つつもりだ。」
公孫翔は何ら迷いも無く、そう言い放つ。
「…………。」
優駿はそれに気圧され、何も言う事が出来ないでいた。
……しかし、それは少し仕方が無い事だと言える。例えどんな天才策略家だろうと、たった二百五十人程度では。万の大軍を撃ち破る事は到底不可能と考えるのは当然なのだ。
……言葉を失う優駿に、公孫翔はぽつりと呟く。
「……三十点って、所だな。」
「……え?」
……三十点?どうやら自分の考えは公孫翔に取って、落第点の返答だったと優駿は肩を落とす。
「まあいい合格だ。優駿、お前うちの参謀にならないか?」
「……え?参謀?」
「今は落第点だが、俺の元で軍略を学べば少しはましなるだろう。」
「……え?あの、一体何の話ですか?」
突然の言葉に、酷く混乱する優駿。
「優駿。お前は少し頭が回る様だが、軍略と言う物がまるで理解っていない。……ここは何処だ?国を見ろ。人数で考えるんじゃない、人は決して只の駒では無いんだ。国、人、心。その全てを視野に入れ判断すれば、自ずと答えは導き出せる筈だ。」
「…………。」
公孫翔の言葉に、優駿は呆気に取られた。
「……優駿、お前は幾つかの見落としをしている。」
武将紹介
「優駿」
武力 45
知力 75
主人公 オーラがあまり無い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89
知力 54
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。
「公孫翔」
武力 92
知力 99
髪型 98 美容院通ってるの!?
朧の団の若きリーダー。義賊。これでもかって程、髪型に気合いを入れている。え?毎日、美容院通ってる?ってレベルに気合いが入っている。後、仲の良い妹が一人居る。
「黄牙」
武力 96
知力 77
自称 最強剣士。
公孫翔の相棒。非常に腕の立つ剣士。最強を自負しているのだが、実際は……。
「劉士元」
武力 97
知力 67
暗殺 最強の一族
大陸最強の暗殺者一族、剣竜。
「臥龍」
武力 96
知力 68
体格 98
"天覇十傑"に名を連ねる、最強の将軍の一人。その実力は、剣竜とも互角に戦える程の強さを持つ。翔国が誇る、二大将軍である。
「張翼」
武力 94
知力 87
自分 大好き
翔国、臥龍配下の部隊長。その実力から、将来を有望視される人物。野心家で、自信過剰な所がある。




