第二十話 「決着」
「こいつめっ。」
黄牙の部下達に縄で縛られ、足で蹴り飛ばされる領主。そんな領主は涙を流しながらガタガタと震え、臥龍将軍の勝利を祈る事しか出来なかった。
「ひいぃぃ。将軍、助け……。」
「…………。」
──ガコォン。
臥龍将軍は斧を置き、髭に手を添え何やら話始める。
「止めだ、止めだ。すまぬが領主よ、諦めてくれ。……儂は、此処らで退く。」
「……は?な、何を言っているんだ将軍。金なら幾らでも払う。俺を、俺を助けてくれ……。頼む、俺を見捨てないでくれ……。」
涙を流し、必死で臥龍将軍に命乞いをする領主。
「助けてやりたいのは山々なのだがな、すまぬな領主よ。幾ら儂でも、こんな化け物二人を相手にするのは、命が幾らあっても足りんわい。」
「……そ、そんな。」
「そう言う訳だ、帰るぞ張翼!」
「……あいよっ、旦那。」
気が付けば、いつの間にか二階に。先程黄牙と一騎打ちをし、撤退した筈の剣士の姿があった。
「…………。」
二人を追う事無く、静かに見送る黄牙と劉士元。
……領主は捕らえられ臥龍将軍と隊長の張翼の撤退により、この戦いに朧の団の勝利が決定する。
歓声が上がり、勝利に沸き立つ朧の団。
その圧政に苦しめられていた民衆達も皆喜びの声を上げ、英雄である朧の団を讃え感謝をした。
そしてこの日の朧の団の活躍は、瞬く間に国中に知れ渡る事となる。
「……しかし、無事で良かったぜ優駿。それに思ってたより、怪我も軽いようだしな。」
「うん……。ありがとう、刹那。」
……そんな二人の再開を、領主の娘は浮かない表情で見守っていた。優駿は捕らえられた後、夜中の内に領主の娘が助けだし。気絶している優駿の体を必死に引き摺って、自分の部屋まで運び匿っていたのである。
「いやぁ、それにしても驚いたぜ。大怪我で動けないと思ってたら、只単に、血を見て気を失っていただけだなんてな。……俺も、びっくりだぜ。」
「ははは……。心配掛けて、ごめん。」
「…………。」
優駿は少し俯いた後、じっと刹那を見つめる。
「……やっぱり凄いね、刹那は。」
──!?
刹那は優駿のその言葉に顔を伏せ、真っ直ぐに優駿の顔を見る事を躊躇った。
……そして刹那は拳を握り締め、何も言えず黙っている事しか出来なかった。
「…………。」
「……どうしたの?刹那。」
「……俺は。」
「俺は、何も出来なかった。優駿、お前を助けたのは全て朧の団だ。俺は……何も出来なかったんだ。何も……。」
「……刹那。」
刹那は悔しかった……。何も出来ない自分が悔しくて、拳を握り締め怒りに震えていた。
「…………。」
そしてそんな二人を見守る領主の娘の表情も、また非常に暗い物だった。
……朧の団に領主は捕らえられた、そしてその圧政に苦しめられた朧の団や民衆達に。領主の娘である自分は、一体どの様な仕打ちを受けるのかと恐怖に怯えていた。
……最悪、殺される事もあるだろう。領主の娘は目に涙を浮かべ、静かにその体を震わせていた。
「大丈夫だよ、心配しないで……。」
優駿は優しく話し掛ける。領主の娘は涙ぐみながら優駿の顔を見上げた。
「僕達が朧の団に、きちんと言っておくから大丈夫だよ。……命の、恩人だって。」
「……ああ、俺達に任せておけ。何たって、優駿の命の恩人だしな。」
二人の言葉に、領主の娘はぼろぼろと涙を流し泣き始める。
「……あわわわわわわわ。」
「…………。」
どうして良いのか分からず、慌てる事しか出来ない優駿と刹那だった。
武将紹介
「優駿」
武力 45
知力 75
主人公 オーラがあまり無い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をするが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89
知力 54
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。
「公孫翔」
武力 92
知力 天才らしい。
髪型 98 美容院通ってるの!?
朧の団の若きリーダー。義賊。これでもかって程、髪型に気合いを入れている。え?毎日、美容院通ってる?ってレベルに気合いが入っている。後、仲の良い妹が一人居る。
「黄牙」
武力 96
知力 77
自称 最強剣士。
公孫翔の相棒。非常に腕の立つ剣士。最強を自負しているのだが、実際は……。
「劉士元」
武力 97
知力 67
暗殺 最強の一族
大陸最強の暗殺者一族、剣竜。
「臥龍」
武力 96
知力 68
体格 98
"天覇十傑"に名を連ねる、最強の将軍の一人。その実力は、剣竜とも互角に戦える程の強さを持つ。翔国が誇る、二大将軍である。
「張翼」
武力 94
知力 87
自分 大好き
翔国、臥龍配下の部隊長。その実力から、将来を有望視される人物。野心家で、自信過剰な所がある。




