第十五話 「暗殺者」
──ドガッ!!
激突する、両軍。
「…………。」
その大きな戦力差に、刹那は公孫翔率いる朧の団に不安が過る。
奇襲をかけず、正面から正々堂々と戦う事は決して悪い事では無い。悪い事では無いのだが……。この戦力差では、流石に刹那でも朧の団の事が不安になってくる。
……それに、刹那は優駿を助けなければいけない。ここで朧の団に、負けて貰っては困るのだ。
刹那は朧の団の戦い方に不安が募り、黄牙の方をちらりと見る。
「なあ黄牙、公孫翔はその……大丈夫なのか?」
「……何がだ?」
「公孫翔は、何か策とか考えて戦ってるのか?俺には、あまり分からないが……。こういう戦いってのは色々と作戦を考えて、事を有利に進める物なんじゃないのか?……例えば不意を付いて、奇襲をかけるとか。」
刹那の問いに黄牙は、刹那の顔では無く戦っている最中の公孫翔の姿を見ながら答える。
「……正直な所、俺には公孫翔が何を考えているかは、よく分からん。」
「……は?」
「よく分からんが……。一つ言える事は公孫翔の言う通りにしていれば、絶好に間違いと言う事だ。翔は……あいつは天才なんだ。俺達朧の団を捕らえる為に、国からは二十数回の討伐隊が派遣され攻めてきた。だが朧の団は、その全ての戦いに勝利し、討伐隊を跳ね除けてきた。……翔の策略の、お陰でな。」
「…………。」
「……それに、この戦いは既に朧の団が勝つ事が決まっている。」
──!?
「なっ!?勝つ事が決まっている、だって?どうして、そんな事が言えるんだよ!!」
……フッ。
黄牙は刹那の驚く顔を見ながら、にやりと笑みを浮かべる。
「それは公孫翔に、強力な二本の剣が居るからだ。……それも恐ろしく、強力な剣がな。
」
その言葉に驚く刹那。……確かに、公孫翔は強かった。刹那に勝利する程なのだから、かなりの実力者だろう。
そして刹那の頭に、領主の館で出会ったあの二人の姿が過る。
「…………。」
……あの二人は強かった。特にあの戦斧を持つ大男は、化け物じみた強さを誇っていたのだ。
その為、刹那には俄には信じられない話だった。少し納得の行かない表情の刹那に、黄牙はある事を告げる。
「何だ、あまり信じて無いって面だな。だがそいつの名前を聞けば刹那、きっとお前も驚く筈だ。この国で……。いや、この大陸で奴の名前を知らない者は居ないからな。」
「誰だ?……そいつは。」
黄牙は、にやりと笑いその名を告げた。
「そいつの、名は────。」
刹那はこの時、気が付いてはいなかったのだが……。公孫翔は、部隊を三つに分けていた。
朧の団の所属人数は、刹那を含めて二百五十九人である。刹那の居る黄牙隊は五十六人、公孫翔率いる本体は二百二人。
……つまり残る三つ目の部隊の人数は、たった一人だけと言う事になる。
……すたすたすた。
領主邸の裏口へ、一人の男が剣を携え近付いて行く。領主邸裏口の衛兵は、約六十名。朧の団本体が正面に現れた為、こちらは少し守りが手薄になっていた。
そこに、死神の如く現れる一人の剣士。
「何だ、貴様は!?」
「止まれ!お前、ここが何処だか分かっているのか?」
相手はたった一人、裏口の守りの衛兵は六十人も居るのだ。……その為、気が大きくなっているのだろう。
朧の団が攻めて来ている、と言うのにも関わらず。この裏口を守る衛兵達は、何処か少し気が抜けてる様に見えた。
……すたすたすた。
その剣士は衛兵達に声を掛けられても、一切気にする事も無く衛兵達に歩み寄る。
裏口を守る衛兵、五十人に囲まれる剣士。
「…………。」
剣士は歩みを止め、衛兵達を睨み付ける。
「おいっ、止まれ貴様!!」
「おいお前、聞いているのか!?」
衛兵達は怒り、その剣士の首に持っている槍を突き付ける。
その状況に全く動じず、その剣士は不敵に笑い。……衛兵達に、こう告げた。
「死にたく無ければ、そこを退け。」
武将紹介
「優駿」
武力 45 かなり低い。
知力 75 割りと賢い。
主人公オーラ 50 あまり無い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89 かなり強い。
知力 54 ちょっと低め。
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。
「公孫翔」
武力 刹那より強い
知力 高い筈
髪型 98 美容院通ってるの!?
朧の団の若きリーダー。義賊。これでもかって程、髪型に気合いを入れている。え?毎日、美容院通ってる?ってレベルに気合いが入っている。後、仲の良い妹が一人居る。
「黄牙」
武力 かなり高いらしい。
知力 そこそこ高いらしい。
キザ ちょっとキザ。
公孫翔の相棒。
非常に腕の立つ剣士。




