表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
十国伝   作者: 魔神
朧の団編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/36

第十話 「悔恨」

────────。


刹那達は、優駿が(あらかじ)め見つけておいた空き家に一時避難していた。

「…………。」

刹那は優駿の様子をちらりと(うかが)い、そして目を閉じ少し考えを巡らす。

「やっぱり、今すぐ乗り込んでくる。」

落ち着く気が全く無い刹那。置いてある剣を手に取り外に向かう刹那を、優駿は慌てて声を掛け制止する。

「待ってよ刹那、行くならせめて夜にしてくれよ。それより、今は少しでも情報を集めないと……。」


「…………。」

刹那は振り返り、二人の様子を見る。

「私を殺しても、父は悲しみませんよ。」

先程捕らえた領主の娘は、特に騒ぐ事無く落ち着き払い大人しく椅子に座っていた。まあ優駿が今正に縄で縛っている為、動けないのもあるのだが……。


「お前、殺されるかも知れねぇってのに。よく、こんな状況で落ち着いていられるな。」

「…………。」

領主の娘は少し(うつむ)き、(しばら)くしてから刹那に向かって話し始める。

「父が……。恨まれているのは、知ってましたから。いつかはこうなるのでは無いかと、ある程度は覚悟はしていました。」

「……へぇ。」

縄を縛り終え、刹那と領主の娘二人の話をあわあわと慌てふためく優駿。

「いやっ、殺さないよ?安心して。明日には解放するからさ、いやでも明日は危ないから明後日の方がいいかなぁ?」

「…………。」


「でもさ、何で領主じゃなくて君が馬車に乗ってたの?」

話したく無いのだろうか、領主の娘は(うつむ)き少しの間黙り口を(つぐ)んでいた。……しかし、(しばら)くすると優駿の顔を見つめ話し始める。

「……父は怯えているのです。ここ最近ある盗賊団から狙われていると知り、父は国に助けを求めて兵を集め、館から一歩も出ようとしません。……それで、私が代わりに。」

「……なるほどね。」

ある盗賊団と言うのは、勿論朧の団の事だろう。国に助け……。朧の団は確か、領主の護衛の兵数は千数百と言っていた。もしかすると、今はもっと増えているのかも知れない。どちらにせよ、一筋縄では行かないと優駿は何やら考え始める。


「…………。」

(あご)に手を当て、一人ぶつぶつと何か考え事をしている優駿の姿を見て。刹那は何か話す事があったのだが、まあいいかと横になり静かに夜を待つ事にした。

そんな二人の行動を領主の娘は、不安を感じながら浮かない表情で大人しく二人の様子を見ていた。

────────。


(しばら)くは危険だから、家には戻らない方がいいよ。それじゃ、僕達は行くから……。えと、気を付けてね。」

深夜になり、優駿は領主の娘をそのまま解放した。領主の娘は困惑しながらも、去って行く二人を何処か寂しそうに静かに見送る。


二人は物陰に隠れ、遠く離れた所から丘にある領主の館を様子を(うかが)っていた。朧の団から狙われていると言う事もあり、領主の館はかなり厳重な警備体制が敷かれていた。

「ここからじゃ暗くてあまり良く見えねぇが、思ったより警備の数が多いな。」

──カチャリ。

数は百強と言った所だろうか?数を確認しながら、刹那は剣を引き抜く。

「…………。」

殺気に(まみ)れ剣を構える刹那だが、背後に優駿の気配を感じ振り返った。

「……お前はここにいろよ、来るんじゃねぇぞ。」

「わ、分かってるよ。ねえ刹那、やっぱり一人で乗り込む気なのかい?」

「当たり前だろ、お前はもう戻ってろ。」

「…………。」

やはり千を超える軍隊が待ち構える領主の館に、たった一人で乗り込んで行く刹那を、優駿は流石に無茶だと心配する。

「……刹那。」


「じゃ、ちょっと行ってくるぜ。」

「…………。」


たった一人で剣を手に闇の中へと消えて行く刹那の後ろ姿を、優駿はただ黙って見守る事しか出来ず、自分の無力さを(なげ)いていた。

優駿は何も出来ない自分が悔しかった。一応優駿は、街の人達に聞いた館の情報を刹那に伝えていた。これで領主の居場所が分かり、無駄な戦闘を省く事が出来るかも知れない。

しかし千を超える軍隊を相手に、たった一人で挑む刹那に、命を懸けて村の仇を討とうとする刹那に……。

優駿は、何も出来ない事が悔しかった。


もっと自分に出来る事は、あったのでは無いか?もしくは自分が刹那の様に剣が扱えれば、刹那をもう少し助ける事が出来たのでは無いだろうか?いや、その方法は何でも良いのだ。ただ刹那が無事に戻って来さえすれば、それは例えどんな方法でも良かった。

……無事に、戻って来さえすれば。

もしかすると、これが刹那との最後の別れになるかも知れないのだから。


──だだだだだだだだっ!

「待っていろよ!!」

刹那は村の仇を討つ為、千もの敵が待つ領主の館に一人斬り込んで行った。

武将紹介

「優駿」

武力 ?? かなり低い

知力 ?? 意外とあるかも?

主人公オーラ 50 あまり無い。


一応これでも主人公。

亡き国、優国の王子。

生き別れの妹を探している。

祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。

頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。

こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。


「刹那」

武力 89 かなり強い。

知力 54 ちょっと低め。

髪型 95 かなり気合い入れてる。


村の自警団の一員。

剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。

でも頭の方は、お察し。

綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
刹那1人ではいくら強くても厳しいでしょ〜! せめて無事で帰ってきてくれたらいいですよね。 領主の打倒解決策はあるのか?優駿がんばってー\(^o^)/
領主の娘さん、悪い人でもなさそうですね。娘を囮に使う親って……。なかなかの悪役ですな。(・o・;) 娘さん、そのまま無事に帰れるのかな?一緒につるんでいくのかと思ったけれど……。 深夜の襲撃。刹那…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ