表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
痛快都市伝説 the Reverse  作者: 玄瑞
第四章
35/44

蜃気楼

 図書館で探してみたものの、都市伝説大会についての参考資料は見つからなかった。

 ただし別の収穫があったので、心理・占いコーナーにある本を五冊借りることにした。鞄が重い。自習用の席はあっさり確保できたが使用せず、借り出し手続きが終わると、すぐに建物を出た。

 司書の女性がなかなか俺に気づいてくれないこともあって、時間を食ってしまった。

 すでに夜だ。十二月の夜は寒い。

 電車で移動し、最寄駅から家までの道を歩いていると、くしゃみが出た。

 風が乾燥した空気を運び、その空気が鼻腔の粘膜をくすぐっていた。

 家に着いた。ナギーが使っている部屋に、明かりが点いている。

「おかえり~」

 部屋から出てきた。

「ただいま……。どこ行ってたんだ」

「そのセリフ逆じゃない? 帰ったの私が先だよ。今日は京都に日帰り」

「ああ、そうだったな。俺は図書館」

 自分の部屋のドアを開ける。

 いったん床に鞄を置いて、上着を脱いだ。脱いだ上着は張りっぱなしの注連しめなわに掛けた。

「寒かったでしょー」

「服脱ぎながらのタイミングでこの会話って、どこの夫婦だよ」

「おや? そーなるんだ。これはつまり、結婚して欲しいのね」

「そっちこそ何でそうなる。まあ、考えておく」

「ふーん。寒くて淋しいんなら、あっためてあげたんだけどなー。……な~んて」

「自分のほうが寒いくせに」

「へ?」

「何でもない」

 縄をくぐってから鞄を運ぶ。机の上では、ノートパソコンの占有面積が大きい。鞄は机上の空きスペースにゆっくり置いた。

「重そうだね」

「ああ重い」

 ナギーが部屋に入ってきた。

「いっぱい持ってったの? 借りたの?」

 縄に掛けたばかりの俺の上着もすり抜けて、近づいてきた。

「借りたんだ」

「ふうん」

 借りてきた五冊の本を、一冊ずつ鞄から取り出す。

 一冊目は、『死後の世界』の体験記。

「うーん、都市伝説ワールドはそれとは違うんだけどなー。ちょっとかぶるけど」

 二冊目は『易』の本。表紙に、陰陽を象徴するともえのマークが描かれている。

「あ。あの話、本当だったんだ」

 三冊目は『五行推命』の本。『四柱推命』とも呼ばれる占いだ。

「オンミョージュツの勉強? テスト勉強はしてないの?」

「テスト勉強もしてる」

 嘘だ。

「無理すると脳ミソ破裂するよー? 脳漿のうしょうぶちまけシーンは見たくないなあ」

「さんざん拳で脅かしておきながら、今更何を」

 残り二冊を出す前に、それらとは別の物を探る。

「昨日、パソコン返してもらってなかったよな。いつの間に置いたんだ」

「今朝マサヒロがあわてて学校行ったあとに。おかーさんには見られてないよ」

「縄が張ってあっただろ」

「かわしました。パソコンを引っ掛けたりはしてません。それくらい余裕です」

「霊気の壁も?」

「平気。道真様は、インテリジェンス溢れる私を追い出すことなどいたしません」

「それは持っていった」

 鞄の中からお守りを出し、ノートパソコンの上に置いた。赤く輝くお守りには、御神体――小さく分割された菅原道真の霊魂――が納められている。本体・・に較べれば、その霊力はずっと弱いことだろう。

「え? あれ? じゃあこれって」

 ナギーが部屋を見回す。

「幽霊を弾く結界だ。死んだけれど、幽霊じゃないんだよな」

「死んだ……知ってるの?」

 こちらを向いた。

「まあ、バレるよね」

「探しているの、推薦人じゃないよな」

 訊ねながら、残りの二冊を取り出して、すでに出した三冊の上に重ねた。

 それを眺めていたナギーが、ゆっくりと答える。

「うん、そうだよ……」

 相反する主張をそれぞれタイトルに掲げる二冊。どちらが都市伝説なのだろうか。

 二つのタイトルを目で追う。

 一つは、『本当の自分が見つかる心理テスト』。

 もう一つは、『自分探しがあなたを不幸にする 本当の自分なんてない』――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ