97 ジョアンの戦い
(ルーク)
あちゃ〜!と、めんどくさい事この上ない法則に、頭を抱えていた、その時────ドドンッ!!と連続した爆発音が街の外の方から聞こえて意識はそちらを向く。
「な、なんだ〜?」
「爆発……っ!街に土砂が!!」
相当焦ったらしいジョアンが大声を上げたため、ゲリーがこちらに気づいてしまった様だ。
ゆっくりとした動きで俺達が隠れていた柱を睨みつけた。
「その声……ジョアンか?なんでこんな所にいる?早く出てこい。クソガキが。」
「────っ!」
ジョアンはすぐに俺に<写影球>を渡すと、人差し指を口元に持ってきて、『しっ!』と言う。
「ルーク殿はこのままココに……。映像の方、どうかよろしくお願いします。」
「…………。」
『殺されるぞ。』
そう伝えようとしたが、それが分からない程愚かではない事は、この短い時間でよく分かった。
多分自分の命を囮に、俺にゲリーを失墜させる程の証拠を撮って欲しいという事らしい。
「『ゲリーをぶっ飛ばして!』って頼みゃいいのに、漢だねぇ。
まぁ、死なせるつもりはないから、頑張れ、ジョアン少年。」
俺の返事も聞かずに飛び出していったジョアンを見送ると、素直に出てきたジョアンを見てゲリーは笑った。
「外出許可などだしていないぞ?命令違反したクソガキはどうしてくれようかな?
俺は今、最高に機嫌が悪いし、いつも庇ってくれる母親もここにはいないぞ?」
「父様、アナタは最低な人だ。
母様をずっと傷つけ、契約できない人間を不当に追い出し続けた。
更に、決して許されない方法で契約の儀式を行ってきたと聞きました。」
「はて?なんの事やら。子供の妄想を聞いている程、俺は暇じゃないんだが?」
ゲリーはわざとらしく肩を竦め、フッ……と鼻で笑うと、爆発が起きたらしい森の方へ視線を送る。
「おやおや、森の方で爆発があった様だが……モンスターの仕業かな?
このままでは、大規模な山崩れが起きるかもしれないなぁ〜?
これは大変だ。シリンズ家の当主としてできうる限りの救出をしなければな。
さ〜て、果たして何人助かるかな〜?」
「────っ!!何故この様な非道な事ができるのですか!一体何人の人間が犠牲になるとお思いかっ!!」
ジョアンがカッ!として叫ぶと、ゲリーの前にドン・スネークが立ち塞がった。
「お前も災難だったな〜。知らなければ、母親を盾に長〜く楽に暮らせたのに。
もう少しローレンを使ってから、同じくらいのタイミングで始末してやろうと思っていたが、前倒しに────。」
「僕はっ────!!」
ジョアンはゲリーの話を遮って、大声で叫ぶ。
「母を、そして他の誰かを盾にして楽をしたいなど誰が思うものか!
今まで一度足りとも、そんな気持ちは持った事はない!
母様の僕を守りたいという気持ちが分かるから……僕はずっとそれに従って母が傷つけられるのを黙って見てきた。
それがどんなに辛いことだったか、貴方には分からないのですね。
……きっと、一生分からないであろう貴方にもう何も言いません。だからせめて潔く罪を認めて、計画を中止にしろ。」
「言わせておけば、いい気になりやがって、クソガキが。
もう死ねよ、無能で無力なくぞガキさん♡────やれ、ドン・スネーク。」
ゲリーはニヤァ〜!と大きく顔を歪めて笑うと、ジョアンを指差した。
すると、その瞬間、ドン・スネークの口から小さな火球の玉が吐き出され、ジョアンを襲う。
────ドンッ!!
ジョアンがいた場所に直撃した火球の玉は轟音を立てて爆発風を発生させ、視界を悪くした。
「は〜はっはっ!!クソ生意気なガキが燃える〜♬
きっもちいぃぃぃぃぃ〜!!あぁぁぁぁ〜……これこれ、いいよなぁ〜。未来に希望を持っちゃってるガキが一瞬で全てを失うって!その絶望を思うとイきそうぅぅ〜!」
大きく口を開けて笑っていたゲリーだったが、俺はそんなゲリーを見てニヤッと笑う。
「それはどうかな〜?あいつ、そんなに弱くなさそうだぞ。」
俺の視線の先には、風が吹き視界がクリアーになる中、防御魔法を使い全く無事な姿のジョアンがいた。
それに同じく気付いたゲリーは、ストンと表情を失くす。
「……防御魔法か。召喚もできない無能のくせに!」
「僕はいつか母様を守りたいと思って、ずっと努力だけはしてきたんだ。
しぶとく抗ってみせるさ。最後まで。」
ジョアンが床に片膝と右手をつけると、そこに魔法陣が出現しジョアンの足が一瞬光った。
【魔才師】
<羽足ステップ>
自身の魔力、魔力操作の分、スピードをあげる事ができる強化系スキル
まるで羽が生えた様な軽やかなステップが可能となり回避率が大UPする
(スキル条件)
一定以上の魔力、魔力操作を持ち、一定回数以上相手の攻撃を回避する事に成功する事
「さっさと消えろよ、お荷物がぁぁ!!」
思い通りにならなかったのが気に入らなかったらしいゲリーは、そのままドン・スネークに命じ、連続した火球攻撃をジョアンに向かい撃つ────が当たらない!
「────っこのガキ!」
「火力の高い攻撃でも当たらなければ意味がない。このまま避け続けてやる。」
ジョアンはトントン!とまるで重力を感じさせない動きで、ドン・スネークの怒涛の火球攻撃を避け続けた。
「やるな〜ジョアン!だが……。」
俺はゲリーがジョアンではなく、下に広がる街の方へと視線を移していくのを見て……次の目的を知る。
「ハァ、かったりぃぃぃなぁぁぁ!!だったら、コレでどうだ?は〜い、街破壊☆さよ〜ならぁ〜。」
「────!な、なにを!」
ドン・スネークは今度は巨大な火球の玉を作り出し、それをなんと街の方目掛けて飛ばした。
「────くっ!!」
ジョアンは慌ててその火球の玉の前へ移動し、防御魔法をとっさに使ってそれを止めた……が、勢いが凄すぎて受け止めきれない!
ジリジリと押されていくジョアンだが、後ろには守るべき街があるため、避ける事は考えていない様だ。
「駄目だ……止めきれないっ……!でも……街が……人が……母様が……!」
ジョアンの前に出した手からはプスプスと皮膚が焦げる様な匂いがし始めたが、ジョアンは足を踏みしめそれ以上進まない様に踏ん張り続けた、その時────……。
《ジョアン!!》
突然宙一杯に沢山のスクリーンのようなモノが現れ、そこに映っているスクリーンの中から女性の声がした。
そこにはジョアンにソックリな女性が映っていて、後ろにはアッシュの姿も見える。




