94 気づかないって〜……
誤字のご指摘してくださった方ありがとうございますm(。v_v。)m助かります
(ルーク)
「よ〜し、到着!」
「は、はい……。」
結局ノロノロと走るジョアンに痺れを切らし、俺は脇にジョアンを抱えて屋根の上を飛んでいったのだが、ジョアンはそれにショックを受けて固まっていた。
下ろしてやると動揺して俺の様子を伺っている様子だったが、塔を目の前にしてまた真剣モードに戻る。
「父の儀式は誰でも見学できる様に開放していると聞いてますが、このまま正面から乗り込むわけにもいかない。どうすべきか……。
とにかく計画を一旦白紙にして、それからどうすべきか考えなければ。
でも、そもそもどうすれば父の悪事を上に伝える事ができるのか……。」
「なるほど?まぁ、とりあえず目の前に迫っている計画を潰すのが先決だな。
しかし……随分とドクズな男を婿にしちまったもんだ。お前の母ちゃんは。」
ここに向かう途中、ジョアンからシリンズ家についての話や、今までの家族状況などの説明を聞き、心底呆れてしまった。
大した実力がない男ほど女を使う才能があるのは、前世も今世の世界も同じ。
ジョアンの母親は残念ながらそんなクズに捕まり、今の今まで暴力と暴言に支配され、がんじがらめにされてきたらしい。
子供という守るべきモノのため、逆らう事は捨てて自分を犠牲にする事を選んだと、そういう事のようだ。
だが────残念ながら、それは悪手。
結局その歪みは歪みを呼び、結局自分の守りたかったモノは結局そのクズ男に壊されるか、それとも自ら壊れるかの二択になる。
そもそも母ちゃんが自分のためにサンドバックになっている状況を受け入れられる様になったら……まぁ、心は壊れちまってる。
それって結局、何も守れなかったって事なんだよな……。
悲しい程空回りしている想いに複雑な感情を抱いていると、ジョアンは眉を寄せてギュッと拳を握った。
「……僕は父様が憎い。力があるなら殺してやりたいと思っている。長年母様を苦しめてきたヤツが。」
「へえ〜……そうか。それは普通の感情……だ……?」
突然、チカッ!!と頭の中に閃光が走り、微かな記憶が頭の中に蘇ってくる。
『シリンズ家……。』
『ジョアン……。』
『ゲリー……ローレン……。』
『召喚……契約……。』
「ま、まさか……。」
俺はある一つの可能性を思い出し、恐る恐るジョアンを『見た』。
【ジョアン】
<レベル10>
体力:50
攻撃:7
魔力:780
知力:230
物理防御力:35
魔法防御力:50
精神力:120
俊敏:28
現在の状態:精神衰退、怒り、憎しみ、絶望
(才能ギフト)
【魔才師】……魔力操作に優れたオールラウンダー型の魔法系剣の才能があるAランクギフト
(後天称号)
【黒心色】…………一定以上の魔力、魔力操作能力を持っている事。更に自分の望まない状況下で一定以上の時間過ごし、一定以上の怒り、憎しみ、絶望を持ち続ける事で発動するデバフ
自分に好意を寄せてくる存在との繋がりを繋がせない様にする(召喚、契約不可状態)
「は、はぁぁぁぁぁ?!」
「────???!」
俺が大声を出したため、ジョアンはビクッ!!と大きく体を震わせたが、それを気にする余裕がない程、びっくりしていた。
【攻略対象その2】
全てに無感情なクールなショタ枠少年<ジョアン>
ジョアンは、ランクAという魔力操作を得意とするオールラウンダー型の特殊な才能ギフトを持っていて、いわゆる攻撃、防御、バフ、デバフと、何にでも対応できる可能性を持っているキャラだ。
だからこそ、戦闘の際はその時の選んだパーティーによって役割を変える事ができる使い勝手の良いキャラであったが、本人の性格的には非常に扱いづらいキャラであった。
『どうでもいい。』
必死に高感度を上げようしても、基本はこのお決まりの答えが返ってきて……ジョアンは世界に対し深い絶望を抱いていた。
その理由は、ジョアンの父親であるゲリーがシリンズ家を乗っ取るため、ジョアンの母親であるローレンを秘密裏に殺してしまったから。
更にモンスターとの契約のため、沢山の街民達まで殺し、それをあろうことか母親が計画した事であると罪をでっち上げたのだ。
『ローレンは己の力が無いことに悩み、最終的に街の者達を生贄に捧げれば力が手に入ると盲信してしまった。そのせいでこんな大惨事に……っ。
しかし、そんな狂った悪女はこのゲリーが倒した!安心してこれからも生活してくれ。』
自分の大切な人を亡くした者達は、この時正常に判断する能力を失っていて、更に怒りと悲しみをぶつける相手を求めていた。
そのため、ゲリーの話を信じ、その大きすぎる悲しみを全て怒りに変えてローレンを憎む様になる。
『違う!!全ては父のせいだ!!』
そう必死に訴えたジョアン。
しかし、復讐心で一杯になっている街の人に声は届かず、それはジョアンにも向きそうになった所で、街に潜伏していた諜報員が命からがら街から逃がした。
ジョアンは大好きな母を奪われ絶望の悲しみの中、王都へと向かう馬車の中で、母への怒りを叫ぶ民衆の声と……嬉しそうに笑う父親の姿を想像し、心はズタズタに壊されていく。
いつか復讐してやる。
父と……父を信じた街の人達へ。
そうしてジョアンは猛勉強し、学院の中等部に特待生として合格した後、主人公のリリスと出会うのだ。
「えぇ〜……全然雰囲気が違うじゃ〜ん。これは気づかないだろ〜。」
「…………?」
今はまだあどけない顔で見上げてくる顔を見て、思わず頭を抱えた。
死んでる表情筋と目、暗い雰囲気。
それがすっかりジョアンという人間の外見を変えてしまっていたので、よくよく見なければ原作のイラストと同一人物には見えない。
人のイメージをここまで変える程、きっと怒りと憎しみ、悲しみが大きかったという事か……。
俺はどうしたもんかと、まだ純粋無垢な目で俺をみてくるジョアンを見つめ頭を抱えた。




