6 遊びましょう
(ルーク)
◇◇
いや、楽勝すぎんだろ〜。
堂々と食堂の一番いい椅子に座って、次々と運ばれてくる豪勢な料理達に舌鼓を打つ。
随分とお利口さんになったシェフ達が、気持ち悪いくらい張り付けた笑顔でご機嫌取りする様に料理を運んできた。
しかし、俺が一番いい椅子に座っているのを見ると、少しだけ期待している目をしていたので、おそらくあの父親が帰って来るのを待っているのだろう。
自分達の『居心地の良い日常』を取り返してくれる救世主様ってやつを。
「……でも、全然来ねぇな〜。あのやたらけばけばしい愛人女も来ねぇって事は、二人揃ってお仕事ってヤツかね?────ま、そのうち帰ってくんだろ。」
気にせず、毟ったぶどうをあ〜ん!と一粒口の中に放り込むと、少し離れた場所で、少しだけマシな反応が2つこっちに向かってくるのを感じた。
「う〜む。この反応察知は、ゲームでいうと魔力とかいう謎オーラを感知しているのかもな。孫娘がやっていたゲームに、そんなの出てきた様な……?────あれ??」
また少しだけチリッ……と何か記憶に引っかかったが、中々思い出せず苦労していると、なだ遠い所にいた2つの反応がどうやら走り出したらしく、あっという間に扉の向こうまで到着したのを感じた。
そして壊れるくらい乱暴に、バーン!!と扉は開き、先ほども見たガキ二人が怒りの形相で入ってくる。
「……おい、てめぇ……っ!!自分が何してるのか分かってんのか?!!────あ”ぁ?」
「そこは父様の席だ。貴様ごときが座る事なんて許されない。死んで詫びろ、クズが。」
最初に怒鳴ってきたのが、ガタイが良い方のガキで、額にはピクピク蠢く血管と殺気を隠さない目で俺を睨んできた。
対してもう一人のスリムな方のガキは、やや冷静さを失っていないが、怒り自体は隠せていないようで、冷え冷えした空気が部屋の中に漂う。
恐らく、ここに向かう間に他の使用人達に俺の事を聞いて大激怒して走り込んできた様だ。
「お〜お〜お熱いですねぇ〜。悪いけど、お先に食事頂いてま〜っす。」
肉料理に齧り付きながらヒラヒラと手を振って煽ってやると、分かりやすく二人は激昂し、周囲に立っているシェフと使用人二人は、大量の汗を掻いて顔色を悪くした。
そんな中、勿論俺は平然と食事を続けながら、二人のガキのステータスを見る。
【ライアー】
レベル12
体力:180
攻撃:22
魔力:6
知力:10
物理防御力:20
魔法防御力:15
精神力:5
俊敏:19
現在の状態:怒り状態
(才能ギフト)
【戦堅人】
特に前衛型の戦いに適している戦闘系の才能、Bランクギフト
【スティーブ】
レベル11
体力:110
攻撃:10
魔力:23
知力:19
物理防御力:11
魔法防御力:20
精神力:5
俊敏:16
現在の状態:怒り状態
(才能ギフト)
【魔法人】
主に魔法の攻撃に適している戦闘系の才能、Bランクギフト
「……なるほど。さっきの使用人よりは強そうだ。」
ちょっとはマシそうなステータスに心の中で拍手してやったが、正直それをどこまで信じて、強さと考えればいいのかは分からない。
前世にて力で圧倒的に劣る人類が、あの地球にやってきた化け物に勝てたのは、力以外で勝っている所があったから。
だから、ステータスだけで強さを判断するのは危険だと身を持って知っているため、しっかりと見極める必要があると考えた。
「ふ、ふざけるなぁぁ!!なんだ、その態度はっ!!無能なクズのくせに!!
それに、何でコイツラがこんなにボロボロなんだよ!!お前……一体何をしたぁぁぁ!!!」
俺が最初にボコボコにした使用人と、手を押さえて痛みに耐えているシェフを指差し怒鳴ったのは、ガタイが良い方のガキ、<ライアー>の方だ。
どうやら兄弟と言っても、性格的にはこっちのライアーの方が血の気が多い様で、スティーブの方はライアーの怒り狂っている横で、黙って睨んでくる。
「なるほどな〜。」
俺は二人の情報をしっかり頭に入れておくと、使用人二人と他のシェフ達は、ワッ!と泣きながら俺に対しての文句を一斉に口にした。
「食事をお持ちしただけなのに、いきなり暴力を振るわれました!!」
「そして、床に溢れたスープを舐めろと……強制まで……っ!」
「勝手に調理場にズカズカ入ってきて、俺の手を……っ。」
「今直ぐ美味しい料理を持ってくる様にと脅され仕方なく……っ!」
ワーワーと都合のいい言葉を吐き出すソイツらの言葉全てを信じたのか、ライアーはつり上がっている目を更に吊り上げて、無言で俺の横に移動し、顔を殴ろうとしてきたが……。
────ヒョイッ。
「……あっ?」
椅子に座ったまま、その拳を軽く首を傾けるだけで避ける。
そして前のめりになったライアーの足を軽く払ってやると、ライアーはバランスを崩して仰向けに倒れてしまったのだ。
驚きに目を丸くして俺を見上げるライアー。
そんなライアーを座ったまま見下ろし、笑顔のままコップにたっぷり入っているブドウジュースを、ドボドボと顔に掛けてやった。
「────っうぷっ!!!……っ!!な、何しやがるっ!!て、てめぇ!!」
「あ、すまんすまん。手が滑っちまった。でも別に外見的には変わらないからいいんじゃね?怒って真っ赤っ赤だったんだし、ちょっと紫に変わっただけじゃ〜ん。ドンマイ!」
ギャハハ〜!と下品極まりない笑いを見せると、使用人達とシェフ達は一気に青ざめたが、今度はスティーブの方が動く。
「……調子に乗るなよ。クズが。」
ドンッ!!と何かが発射された様な音と共に、スティーブの手から手のひらサイズの火の玉が発射された。
これが魔法か……?
ゆっくりと近づいてくる火の玉を見つめながらそう予想し、俺は指を一本立てる。
そして────……。
「ほ〜……ホイホイ!」
向かってきた火の玉にズボッ!と人差し指を突っ込み、そのままクルクルと回して火を分散してやれば、一瞬で火の玉は消えてしまった。
「────っなっ!!!??お、俺の魔法が……っ!」
「なにぃぃぃぃ!!?お、お前一体何のスキルを使ったぁぁぁ!!」
スティーブとライアーは、口を大きく広げて驚いていたが、実はコレ、な〜んも特別な事はしていない。
ただ火の逃げ道を作って、空気と混ぜて分散させてやっただけ。
口から炎の固まりをわんさか吐き出してくるあの化け物を相手にしてきた軍人なら、当然必須の戦闘技術だ。
俺は指に息を吐きかけた後、ヨイショッと椅子から立ち上がり、呆然としているガキ二人に向かい手招きをする。
「ほら、付いてこいよ。お兄様?場所を変えて、この弟と楽しく楽しく遊っびましょ〜。」
「────っ!!」
「……ってめぇ……上等だ。」
ちょっと挑発しただけで、また怒りに染まった二人は、そのまま素直に俺の後をついてきた。
正直相手にすらならないレベルだったので、普通のゴロツキ相手なら無視するレベルだが……まぁ、これからの生活を考えて、クソガキには一度痛い目を見てもらおうか。
クックック……と悪い笑いを漏らしながら、俺は外に出てちょうど良さそうな場所を探し、広場の様な庭へと辿り着いた。
綺麗に手入れされていて、周りには太くて立派な木も沢山生えているそこは、森の中と言っても通用するくらいの広い場所で、戦うにはちょうど良さそうな場所だ。
「ふ〜ん。訓練するのには良さそうな場所だな。」
フッと地面を見ると、抉れた様な場所や焦げている所がある事から、恐らくはこの二人が日頃訓練している場所だと思われる。
素直にいい環境である事に関心していると、ゾロゾロと着いてきた使用人達とシェフ達の他に、屋敷の方から沢山の使用人達が集まってきた。
そして、その中の一人がガキ二人に剣と杖を渡す。
「随分舐めた真似したよな〜?お前さ、戦闘能力皆無の無能のくせに、この俺にふざけた真似したんだ。……殺されても、文句ねぇよな?」
ライアーは手に持つ剣を軽く振りながら不敵に笑い、隣に立つスティーブは杖を撫でながら、口端を上げた。
「ちょうど新しい魔法を試したかったからちょうどいい。父様には、偶然魔法が当たってしまったと言えばいいさ。もうすぐ帰って来る二人に最高の知らせになりそうだ。」
スティーブが魔力を開放すると、杖が光りだす。
そんなスティーブの前にライアーは出て、剣を大きく引いた構えで俺を睨みつけた。




