(ルストン)16 それぞれの正しさは
(ルストン)
「俺は……何も間違った事などしていないではないかっ!!だって……弱者が強者に従うのは当然の事!!!だから俺は────っ。」
「だから、それでいいって言っただろう?『弱者が強者に従うのは当然の事』。
”お前”という弱者が、”俺”という強者に従うのは当然の事……でいいんだから。」
「ちっ……違っ!!!!」
慌てて訂正しようとしたが、時既に遅く……新たな拳が顔に飛んできて、歯がボキボキッ!!と何本も折れる音がした。
「ヒ……ヒィィィィィ……っ……!!!ちょっ……まっ……!!待て……っ待て待てっ!!な、なんでも暴力は良くないのではないか!!?人なら話し合いで分かり合える────……。」
「馬鹿か?お前は。」
────ゴっ!!!
更にもう一発顔を殴られると、残りの歯も何本か折れてしまい、口からも大量の血が流れ落ちていく。
このままじゃ……殺される!!
依然感情が読めない目が怖くて怖くて、そのまま這ってでも逃げようとしたその時……ルークに駆け寄っていくフルートの姿が見えた。
「ま、まぁルーク〜!貴方本当はそんなに強かったのね!知らなかったわ〜。
どうしてこの義母に言ってくれなかったの?言ってくれればこんな事にはならなかったのに!
ねぇ、私達、お互いに誤解があったと思うの。ゆっくり話し合いましょうよぉ〜。
これからの私達の未来♡」
フルートが、ルークの腕に自身の腕を絡ませ猫なで声で話しかけると、ルークは動きを止めてフルートの方へ視線を向ける。
しめた!!!
フルートが動きを止めてくれている間に、作戦を練らなければ……!!
そう思った瞬間、ルークはニコッとご機嫌な様子で笑みを浮かべる。
「これはこれはお義母様〜。そうですね。俺達確かに誤解があったと思うんですよ〜。
うんうん。未来の事を是非話しましょう!
まずは〜……確か、苦しみもがく姿、そしてその後は皮膚を掻きむしり〜頭の毛も引きちぎるんじゃないかな?お前の未来の姿。」
「は……は……???……え、何……?なんな……の??」
不気味な言葉の数々に、一気に青ざめたフルートは直ぐにルークから離れようとしたが、ルークはフルートの口元を片手で塞ぎ、そのまま地面に背中から叩きつけた。
「きゃぁぁぁっ!!!」
「────っ貴様っ!!!か弱い女性になんてことをするっ!!!」
俺が怒鳴りつけると、ルークは鼻で笑ってくる。
「戦場に女も男もあるか。それにか弱いって……正妻がいる中、堂々と乗り込んでまんまとその座を奪う様な女が弱いわけねぇだろうが。頭大丈夫かよ。
戦闘の実力どころか、頭まで悪いとかホント終わってんな。当主ってそんなバカでも務められるの?」
「〜〜っ!!!なっ!!!」
自分と最愛の妻が馬鹿にされカッ!!と頭に血が登ると、口元を押さえられていたフルートも同じ想いを抱いたのか、怒りに顔を歪めルークの手を思い切り叩く。
すると、ルークは何故かアッサリとその手を外したので、フルートは多少の違和感を感じた様だが……それ以上に怒りが勝ったのか、憤怒の表情でルークを睨みつけた。
「ふ、ふっざけんじゃねぇぞ!!このクソガキがぁぁぁ!!!
この美しい私が話しかけてやったんだから、『ありがとうございます』だろうがっ!!
お前みたいなブサイクで無能野郎は、この私のために役に立つのが当たり前なんだっつーの!!
『どうぞ、世界一美しいフルート様のため、好きに自分を使って下さい』だろ?お前が言わねぇといけない言葉はよぉ!!」
フルートは上体を起こして、ルークに向かい怒鳴りつける。
すると、ルークはハァ……と大きなため息をついた。
「この家の人間は、随分と極端な思想を持っている奴らばっかりだな。
あれが正しい、これが正しいって言うけどさ、結局自分が逆の立場になったら正当性はなくなるじゃねぇか。
それって、絶対正しくないぞ。ただの子供のわがままと同じだ。」
チラッと俺の方を見て呆れた顔をするルークに腹が立ったのは、俺だけではなくフルートも同じ。
そもそも、逆の立場になる事自体がおかしいのだ。
だから、こいつの言っている事は全て間違っている!どうにかしてこいつを黙らせないと!!
殺気混じりの目でルークを睨みつけていると、突然フルートの様子がおかしくなっていった。
ハァ……ハァ……と荒くなっていく息と悪くなっていく顔色。
更に大量の汗で全身が濡れていき、体がガタガタと大きく震えだした。
「ハッ……ハッ……ハァッ!!ハァッ!!!……え……な、何……?? …………うげッ!!!」
フルートはその場で膝をついて嘔吐し、荒い呼吸のままルークを見上げる。
すると、ルークはあるモノをフルートへ見せつけた。
「うわ〜辛そうだな。自分の発明品の第一被験者になった感想はどうだ?」
ルークの手に握られているのは、フルートの指に嵌まっていたはずの巨大なエメラルドがついた指輪……あの試作品の毒薬が入っていた指輪だ。
「ど……どうして……それをっ……う……ガガッ……っ!!」
フルートはとうとうその場に倒れ込み、悲鳴をあげて転がりまわる。
すると、自分の吐いた嘔吐物に塗れ、更には苦痛から逃れるために自分の顔や体中を掻きむしってどんどんと傷を増やして血まみれになっていった。
「ぎ、ぎ、ぎえぇぇぇぇっ!!!!アッ……ギギギギギッ!!!」
「…………っ……!!」
「う……ウゲッ……ッ!!」
その凄まじい苦しみ様に、俺も吊るされている息子達も、そして使用人達も真っ青になって見たが、ルークだけは違う。
本当にただ静かに見ているだけ。
その姿は、まるで死神の様にも見えた。
「さっき口元を塞いだ時、コレに入った赤い方の薬を飲ませてやったんだよ。さぁ、いつまでもつかな〜?よ〜し!ギリギリまでこのまま放って置いて楽しも〜う!」
るんるん♬と鼻歌まで歌っているヤツを信じられない想いで見つめながら、血だらけになっていくフルートの姿に震える。
こいつは……狂っている!!こんな狂人、一人でどうにかできるわけがない!
そう確信し、ここは油断させて、どうにか仲間に連絡を────……!!と考えた。
「す、すまなかった!!今までの事は謝る!!だから、この通りだ!!許してくれ!!
俺はただ……ライアーとスティーブにいい環境を与えてやりたかっただけだったんだ!!
お前の事が憎いから冷遇していたんじゃないんだよ。」
「へぇ〜。いい環境をねぇ〜。」
ぞんざいな言い方ではあったが、一応聞いてくれそうな気配がしたので、俺は話を切らない様にペラペラと続けて話し続けた。




