12 『グランド・リリスの白い華』
(ルーク)
恋愛に重きを置いている割にはPRG要素の難易度がかなり高く、剣と魔法の激しい戦闘シーンでは自分のゲームテクニックとレベルが規定以下だと進めずゲームオーバー。
更に選択をちょっと間違えるだけでたくさんの死人が出るという……中々の鬼畜ゲーム仕様となっていた。
しかし、絵の美しさに加えストーリーの奥深さや人同士の関係のリアルさなどなどが様々な層に受け、大ヒットした────らしい。
「……確かにあのゲームは、ダントツに酷かった。なのに孫娘ときたら、自分の推し(?)ルート以外頑張らないから……。」
ブツブツとつい文句を言いたくなるほど面倒なゲームだったが、孫娘にせがまれて仕方なく頑張ったのだ。
全てのキャラ達の攻略をしていく事で、いろんな視点からそのゲームの世界を知っていくのだが、多視点のストーリーにも自分の推しのキャラが出てくるからと……。
しかし────……。
「全スチルを集めると解放される『真実のルート』。それをやる前に死んじまったんだよな〜。
でも、なんだか開放されてくスチルとやらを見る限り────あまりいい話じゃないような気も……。」
次々と解放されていくスチルは、ストーリーで描かれなかった裏の歴史を語るモノも多かった。
孫娘はただその美しいスチルに夢中になっていたが、俺としてはその絵に描かれた、サイドキャラ達の残酷な運命と悲惨な末路ばかりに意識がいく。
ちなみに、このグリード家のライアーとスティーブを攻略後のスチルの題名は────……。
『ルークの最後』
ルークは正式な跡取り長男にも関わらず、才能に恵まれず、父親と愛人の女、そして腹違いの兄弟であるライアーとスティーブによって虐げられ続ける。
それを見た使用人達もこぞってルークを冷遇し、最後は愛人の女が作った新薬の実験体としてその命を終えた。
その新薬は人を苦しめる事を目的とした、のちに拷問用に使用される薬の元になったモノ。
それを飲まされたルークは、あの汚い自室の中、長い時間苦しみもがき、そして────……。
『アハハハ〜!!』
『アハハっ!フフッ……アハハっ!!』
周りには、ルークの苦しむ姿を見て笑う家族と使用人達の姿。
ルークの最後は、彼らにとって最高の『喜劇』として幕を閉じたのだ。
「……お前の最後は、随分悲しいモノだったんだな。」
暗くなってきた空には、たくさんの星が見え始める。
そんな空を見上げ、俺は光の道を笑顔で走っていった少年ルークを思い出した。
この家では認められなかった才能も、きっとあっちの平和な世界では認めてもらえるだろう。
自分の才能を信じて努力する事を諦めなければ……。
「……頑張れよ、ルーク。」
ボソッと呟くと、俺は恐怖に顔を引き攣らせている使用人達を振り返った。
────ビクッ!!
一斉に震え上がる使用人達に向かい、俺はニッコリと笑顔を浮かべる。
「なぁ、ちょっと聞きてぇんだけど、ここの家主はいつ帰ってくる?」
「────っ!!はっ!も、もう間も無く帰ってくるかと……!」
すっかり恐縮している使用人達は、全員ビシッ!と立って答えてくれたので、俺は笑顔のまま木に吊るしてやった二人を指を差す。
「じゃあ暇つぶしに付き合ってもらおうかな〜?アレ、もう壊れちゃってつまんねぇからさ。はい、一列に並んで〜。」
「────そっ!そんな……っ!!我々は何も……っ!!────グェッ!!!」
真っ先に声を上げた若い使用人の腹を殴り飛ばすと、ソイツは腹を抑えて膝をついたので、その頭を鷲掴んだ。
「へぇ〜お前、何もしてねぇの?そうかそうか〜。じゃあこれからオープン質問タ〜イム。
なぁ、なぁ。こいつ、ホントに何もしてない?」
周りで震えている使用人達に尋ねると、直ぐに他の使用人達が怒鳴り出す。
「ふっ、ふざけんな!!お前が一番ルーク様に対して当たりがきつかったじゃねぇか!!」
「そ、そうよそうよ!!私にもわざとルーク様を転ばせろとか、ちょっと突き飛ばしてみろよとか、命令してきたじゃないっ!!」
「な、な、なっ────!!!」
罪を暴露された使用人の男は、汗をドバッと掻いて俺を恐る恐る見つめてきたので────……。
────バキッ!!!
拳で顔の正面から殴りつけてやった。
「ギャキャンっ!!」
まるで尻尾を踏まれた犬の様に鳴いたソイツは、前歯が派手に飛び鼻からは大量の鼻血が噴き出す。
そしてそのままもう一発入れてやろうとしたら、ソイツは「わぁぁぁぁっ!」と獣の叫び声の様なものをあげて騒ぎ出した。
「ア、アイツだって……っ!!!ルーク様の食事に虫を入れてました!!それにあの女は、わざと服に泥をつけたり、痒くなる粉をなすりつけて笑ってましたよ!!
それに、アイツもアイツもアイツも!!ルーク様を蹴ったりつねったり、目立たない様に暴力を振るってました────!!!」
「────っばっ!!」
「そ、そんな事してません!!」
指を差された奴らは、ギクっ!と肩を大きく震わせ、なんとか自分だけ逃れようと他の奴らがしてきた事を密告し、更にソイツらはまた違う奴らの密告をし────と呆れるほどキリがない。
俺はハァ……と大きなため息をつくと、端の奴らから順番に拳を叩き込む。
しかし、その中で一人だけまだ反抗的な目をしていた使用人がいた。




