116 試験前試験?
(ルーク)
◇◇
「……広〜。」
中に入って1番に出た言葉がそれ。
とにかく中が広くて、学院のメインの学び舎らしき大きな建物の他にも敷地内に沢山の建物が建っている。
全ての建物は清潔感のある白色が基調。
そしてその建物の全てに沢山の窓が設置されていて、それが建物全体に爽やかさと明るいイメージを与えている。
正門から学び舎までの距離は結構遠く、周りの貴族受験生たちのグチグチ言う不満が聞こえてきたが、俺としてはそこまでの道のりに咲く見事な花々が見れるだけでちょっと豪華なお散歩気分が味わえて気分が良い。
「ちょっとした観光地ってくらい道に花が多いな。
それに、下に流れている水は……あっちにある噴水から流れているのか。」
道の脇に沿うように流れている水の道は、視線で辿っていくと敷地内に設置されている巨大な噴水へと辿り着く。
どうやら花がこれだけ沢山咲いているのは、水の通り道が多いからの様だ。
花を愛でるような高貴な感性を持っているわけではなかったが、綺麗なモノに囲まれると気分は良くなる。
そのままご機嫌で歩いていると、周りを歩いている受験生達から沢山の視線を向けられている事に気付いた。
「…………?」
最初は周りに咲いている花を見ているのかと思ったが、どうも違うらしいので、コッソリ周りの様子を伺えば、視線の先にいるのは俺の両隣を歩いているセレンとアッシュの様だ。
あ〜……なるほどね!
ここで二人のとっても高い顔面偏差値を思い出し、大いに納得した。
ヒソヒソと囁かれる声は、二人の外面を称賛する声ばかり。
その中には「真ん中の人誰?」「さぁ?もしかして使用人とか??」などなど、堂々と美少女&イケメンの真ん中を陣取っている俺の話題もある。
更には「あんな二人に囲まれて可哀想……。」と本気で同情する声まで……。
「…………。」
いやいや、俺がスタンダードだから。
この二人が異常なだけだから!
フッ……と全てを悟った顔で笑っていると、人の流れが止まったのに気づき、前の方へ視線を向けた。
「?皆、なんで止まったんだ?」
そのままジッと目を凝らすと、メインの建物の前にズラリと見知らぬ数十人の男女が立っているのに気づく。
そしてその集団の前には、巨大な水晶玉の様な物が置かれている台座があり、前を歩いている受験生達がその前で立ち止まったから、こうして全体の動きが止まったらしい。
「なんでしょうか?あれは……。」
「さぁな。でも、ただ占いをするってわけではなさそうだ。」
俺とセレンは、その水晶体の様なモノをジッと睨みつけながら、その周囲に並んで立っている男女の集団を観察する。
並んでいる男女からピリッ……!と漂っているのは、戦いを知る者達特有のオーラ。
恐らく、あの集団はこの学院の教員なんじゃねぇのかな〜?と予想していると、ちょうど真ん中に立っている上品なお婆さんが一歩前に出た。
「こんにちは、受験生の皆様。
私は副学院長の<テリーヌ>です。本日はよろしくお願いいたします。」
クスクスと笑う声もとても上品で、立っている姿は姿勢よく凛としている。
多分歳は六十代の半ばくらい。
やや痩せ型のほっそり体型に、細い銀色のメガネを掛けている事から、頭脳系の才能かな?と予想した。
色が薄く抜け始めている栗色の髪はショートボブで、全体的にすっきりした清潔感と仕事ができる女オーラを凄く感じる女性だ。
テリーヌ副学院長は、挨拶を終えた後、前に置かれている水晶みたいな物へ手を差し出した。
「これは触れた者の総合ステータス値を測定する特殊な魔道具です。
これで一定以下のステータス値の方は、申し訳ありませんが試験を受ける事はできません。
いわば試験前試験というモノですね。」
ニコッと笑うテリーヌ。
なるほど……つまり、ここである程度受験者をふるい落とすって事らしい。
「確かに凄い人数だもんな〜。流石に全員受けるとなると大変過ぎる。」
よい方法だと思っていると、他の教員達により1列に並ばされ、俺達一行は最後尾についた。
「めんどくさ。一人一人あんなので測らないといけないなんて。」
「文句言うな。仕方ないだろう。」
あからさまに面倒くさそうなアッシュをセレンはたしなめた後、興味津々で前の様子を見つめる。
俺も同様に興味があったので、1番前の奴がゆっくりその水晶みたいなモノに触れるのを注視していた────が……?
────チカッ……。
まるでマッチの炎の様な光が水晶体に一瞬見え、直ぐに消えてしまう。
「不合格!────次!」
すると水晶体の前にいる男性教員が容赦ない言葉を贈り、その受験生はガックリと肩を落として帰っていった。
その後、後ろに並んでいた者が同じ様に水晶を触ると、今度はポポっ!とさっきの受験生より明るいかな?という光が発せられる。
「合格!────次!」
今度は合格。
どうやら光の大きさで合否が決まるみたいだった。
「なるほどな。ステータス値が高いと、あの水晶玉が強く光るって事か。」
う〜む……と考えながら順番待ちをしていると、次から次に受験生達が到着し、俺達の後ろにも長い列ができ始める。
しかし、それと同じくらいのスピードでサクサク試験も終わっていくので、問題なく進行していった。
「────次!」
「では、お先にいってまいります。」
とうとう俺達の番になり、前に並んでいたセレンが先に前に進み出て、恐る恐る水晶体に手を乗せると────……。
ピカピカピカ〜ッ!!!
今までで1番強い光が水晶から放たれる。
すると、教員達や他の見ている受験生達からはざわつく声が聞こえ、テリーヌはわずかに目を見開いた。




