112 王都到着!
(ルーク)
「ほほ〜う?これが王都か……。」
まるで山の様だと表現できる程大きな大きな正面門を、馬車の中から見上げて感動に息を吐き出す。
「そうです。まずは検問を通らないといけないのですが、ルーク様はお貴族様なので、あちらのお貴族様専用検問へと向かいます〜。」
カーターが指差す先には、俺と同様のキラキラした装飾品がついたザ・セレブの象徴の様な馬車達がずらりと並んでいた。
巨大な門は今は大きく開かれており、大きく分けて二つの検問があるのだが、右側が一般用の検問で、沢山の人々や積み荷を沢山積んでいる商人のモノらしき荷台車や従業員らしき人達でそれはそれはゴチャついている。
一方、左側の貴族用の検問は、道も広く、検問をしている守備隊員の数もかなり多そうなので、早く終わりそうだ。
「なんかズルする気分〜。」
そんなひしめき合っている人々の横を颯爽と通っていき、俺達はセレブ・馬車達が並ぶ列の最後尾へついた。
その間に、街を囲うこれまた巨大な防壁を見渡し、またもや息を吐き出す。
「俺達の街やサマナイズにもあるが、王都は桁違いの大きさだな。
確か、これに色んな魔法も付与されているんだろ?」
「そりゃ〜お偉いお貴族様だけじゃなくて、王様と王族までいるんだから、そのへんの安全面は国1番でしょ。」
ジッ〜と防壁を眺める俺を見て、アッシュがどうでも良さげに言う。
『王族』という言葉を聞き、先程王都が見えてきた際、真っ先に見えたモノについて考えた。
まず見えてきたのは先が尖っている巨大建造物であるお城らしき建物と高い塔。
高い塔の方はどうやら教会の様で、つまり王都はこの教会とお城が中心部を占め、その周りに住人達の居住区や商業区、その他の施設などなどがあるらしい。
「どの街もお偉いさんと教会が1番安全な真ん中に置かれてる事が多いよ。
モンスターや人が襲ってくる場合は、入口の方に近い場所から襲われるからさ。」
「なるほどね〜。ありがちな立地だな。」
いつの世も犠牲になるのは下々から。
それがとっても分かりやすい形で形成されている街、それがこの王都らしい。
「確か……現在1番勢いのある勢力が、結構な身分に重きを置く考えを持っているんだっけ?え〜と……確か、ラニーさん?いや、ライオンさん……。」
「ライン様です。」
カタカナの名前を覚えるのが苦手で忘れてしまった俺に、セレンが教えてくれた。
そうそう、第一王子様のライン様。
実はコイツも攻略対象だ。
【攻略対象その4】
冷酷非道、ドSを極めし傲慢王子様<ライン>
ラインは非常に傲慢で、自分を選ばれし人間だという妄想に近い考えを持っている。
だからこそ自分以外は道具!と言い切るくらいのあからさまな扱いをしてくるため、正直敵サイドじゃない?と思わせる様なキャラなわけだが、なんとコイツも立派な攻略対象だ。
しかし難易度はかなり高め。
リリスとは歳も違うため、接触も限られてくるし……なによりその過激な思想のせいで、後々こっちの思想もダークサイド寄りにしないといけない。
孫娘が小さい時によく見ていた某青い猫型ロボットのお話にでてくる乱暴な悪ガキ大将と、その隣にくっついているちょっとスネている少年……みたいな?
そんな関係は、正直お互いを尊重しあう『愛』とは性質の違うモノの様な気がするが……まぁ、世の中には沢山の愛情の種類があるので否定はしない。
迷惑をかけない限りは。
「ほほほ〜ん?ちょっと面倒くさそうな王子様だったっけな。」
「……アンタ、本当に大丈夫?座学のテストに不安しかないんだけど……。」
国の第一王子様の名前を、うっかり間違える俺。
アッシュに本気の心配をされ、セレンもソワソワと体を動かし気になっている感じが伝わってきた。
「大丈夫大丈夫!試験なんてもんは、得意なモンで100点取れば合格だから!後は運!」
俺は力こぶをつくって、その腕をペチペチと叩くと、アッシュは「あ、そう。」と言って興味をなくしたのか、視線は窓の外へ。
セレンは「なるほど!」と言って、俺の言葉を肯定してくれた。
今までの人生の中、座学でのテストなんて正直実戦に使うための材料とレシピ。
戦い続けていくと、それは形をどんどん変えていき……今や見る影もないモノに変わっていった。
要は座学のテストなんて点数より、如何にそれを上手く使うか、それ一択だから!
勉強キライな子供が言う様な言い訳を心の中で叫んでいた、その時────……。
「ふざけるなよ!!守備隊ごときが、この俺に口答えするつもりか!!」
突然大きな怒鳴り声が前方から聞こえ、意識はそっちへ向く。
「んん〜??なんかトラブルか?」
ヒョイッと窓から顔を出してカーターに尋ねると、カーターは声を潜めて答えた。
「どうやら貴族側の方に手続き不備があった様ですね。
それを突っ込まれた瞬間、その馬車に乗っていた貴族が怒ってしまったみたいです。
まぁ、どの街でもよく見るありふれたトラブルってヤツですよ。」
「ありふれたねぇ?さっさと謝って書き足せばいいのにな。余計めんどくさいじゃ〜ん。」
理解不能な行動に俺が首を傾げると、アッシュがハァ〜と呆れた様なため息をつく。
「お貴族様は、基本効率よりも自分のプライドが大事なヤツラが多いからね。
理不尽な言い分なんて、挨拶並に言っているよ。ルークみたいなお貴族様がレアだと思うけど……。」
アッシュは面倒くさそうに手を頭の後ろに組み、馬車の背もたれにもたれかかる。
その隣ではセレンも同じ様に渋い顔で待ちの体勢だ。
まぁ、確かにそういうヤツは前世でもいたか……。




