10 助けるわけないじゃん
(ルーク)
(才能ギフト)【戦堅人】
< 一閃 >
剣を横一文字に振り切る物理攻撃系スキル
(スキル条件)
一定以上攻撃力があり、一定回数以上剣を振ること
その衝撃波は横一線で土煙を消し去り、ライアーとスティーブ、そして見学している使用人達は、歓声を上げた。
誰もが俺の無様にふっとばされる姿を想像した事だろう。
そして、それを誰もが疑わなかった様だ。
しかし────……。
「────な……な……なな……っ。」
「ば……ばかな……っ。」
ライアーとスティーブ、そして周りの使用人達は、目を大きく見開きジッとある一点を凝視した。
振り切ったライアーの剣の先を、軽く摘んで止めている無傷な俺の姿を────。
「なんだぁ?このクソみたいな攻撃は。避けるまでもないんだが……。」
「そ、そんな…………う、嘘だっ!!!こんな事……っこ、こ、こんな事ぉぉぉぉぉ!!!」
ご自慢の剣を止められたライアーは、雄叫びの様な声を上げながらまた俺に剣のラッシュを仕掛けてきたが、勿論そんなモノは一つとして当たるわけなく、またヒョイヒョイと全て避けてやった。
「────っクソっ!!当たれ……当たれよっ!くそったれ!!」
剣の攻撃を避け続ける俺に向かい、スティーブの方はちょいちょい火の玉魔法を使って攻撃してくるが、勿論そっちも当たらない。
次第に息が上がっていく二人を見て、二人の勝利を疑わなかった使用人達の顔から血の気が引いていった。
「う……嘘だ……。」
「そんな……戦闘系の才能持ちの……ライアー様とスティーブ様の攻撃だぞ……?お二人が……まるで、相手にならないなんて……。」
「夢……これは悪夢よ……っだって……だって……っ。」
呆然と立ち尽くす使用人達は、その場で尻もちをつく者達までいて、激しく動揺している。
その様子から察するに、どうも才能ギフトとやらは俺が思った以上にこの世界で重視されるモノの様だ。
「う、うぉぉぉぉ────!!!」
ライアーの、避けて下さいと言わんばかりの大ぶりの振り下ろし攻撃。
それをトンっと一歩踏み込む様に避けると、それと同時に手を軽く後ろに引く。
「────あん?」
そして間抜けな顔で驚くライアーの横っ面を────バチンッ!とビンタしてやった。
「────っがっ!!!??」
本当に軽く叩いただけなのに、ライアーの顔は大きく変形した顔のまま吹っ飛んでいき、それをスティーブが目で追う。
「なっ!!??な、なんで無能野郎にライアーが!!」
「だから言っただろう?弱いからだって。」
意識を逸らした一瞬で、俺はスティーブの横へ。
驚くスティーブの顔を見ながら杖を掴むと、そのままクルッと回してその身体を地面に叩きつける。
「────グアッ!!!」
そしてバウンドするスティーブの体を、俺はサッカーボールの様に、軽く蹴ってやった。
「────っ!!」
すると、スティーブはライアーが叩きつけられた場所まで飛んでいき、2人は揃ってその場に倒れ込む。
顔を大きく腫らしているライアーと、肋骨の辺りを押さえているスティーブの目には恐怖の色が浮かんでいた。
「おいおい、もう終わりか〜?流石に降参するのは早すぎだろう。」
「────っお、お前本当にあの無能……じゃなくて、ルークなのか……?!
だってお前の才能ギフトは交渉人────。」
必死に未知への恐怖を誤魔化し、ライアーは叫ぶ。
俺はハァ……と大きなため息をつき、ゆっくりとライアー達が倒れている方向へと歩いて近づいていった。
「まごうことなき、俺がルークで〜す。────っていうか、お前らホント才能才能うるせぇな〜。
才能でアドバンテージ取れんのなんて最初だけだぞ?
努力なく才能に驕れば、ほ〜ら?お前達みたいな力で押すだけの雑魚助の出来上がり。
攻撃は単調、動きが派手で隙だらけ。
こっちの戦いは未経験だが……なぁ、そんなクソみたいな実力で戦えるほど弱い奴しかいねぇの?ここ。」
「は……な、な、なっ────……っ!!」
カァ〜!と怒りで顔を赤らめるライアーとスティーブ。
そのまま前に立った俺に向かって2人は殴りかかってきたが……俺はそんな2人にそれぞれ一発づつビンタを喰らわせた。
「えっと〜無能なクソ雑魚野郎はぁ〜どう扱われてもいいんだもんな?この家は。
いや〜これからめちゃくちゃ楽しみだわ〜!だって弱い奴しかいねぇもんな、ココ。
ぬるま湯に浸かって、な〜んもできなくなっちまった無能野郎ばっかりだもんな?」
「────っ!!がっ!!」
「────っひっ!!」
更に続けて連続ビンタを何度も食らわしてやれば、ガタガタ震えて周りに視線を回す。
自分より実力が上の相手と戦ったことなどなく、常に馬鹿にできる下を用意された環境を与えられた結果────人間は自分で解決する力を取り上げられる。
つまり危険に直面すると、こうしてただの役立たずへと成り下がるって事だ。
「周りは助けてなんざくれねぇさ。だってそれをずっと見てきたんだろう?
今の俺と同じ立場から。」
「ひ……ひぃ!!か、顔がこ、こんなに腫れて……っ。や、止めてくれよぉぉ……お、俺にこんなことして……っ────オゴっ!!」
ごちゃごちゃうるさいライアーの腹に一発決めると、ライアーは腹を抑えてその場で嘔吐してしまった。
ゲェゲェ吐く兄弟を見て、スティーブは大量の汗を掻き頭を押さえる。
「こ、こんなはずは……っこ、こ、こんな事ありえなぃぃぃ!!父様と母様が知ったらタダじゃ────。」
「パパとママにいいつけるぞ〜……って、赤ちゃんか、お前は。」
「────ギャッ!!!」
情けないことを言い出したスティーブの顔に拳を叩き込むと、鼻を押さえてその場にうずくまってしまった。
そして自分の鼻からダラダラ滝の様に流れる鼻血を見下ろしながら、ブツブツと呪詛の様な言葉を吐き続ける。
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ……。あり得ないあり得ないあり得ないあり得ない……っ。
俺たちがこんな無能に負けるなんてあり得ないんだ……俺達は俺達は……っ!」
「今度は現実逃避かよ……。戦場に出たら、一瞬で死ぬな、お前ら。」
俺はうずくまっている2人の髪の毛を鷲掴むと、そのまま大きな一本の木に向かって引きずって行った。
「ひ、ひぃぃ!!!や、やめてぐれぇぇぇ!!」
「い、痛い痛いぃぃ!!!だ、誰でもいいからどうにかしろぉぉ────!!」
2人は悲鳴混じりに叫んだが、誰1人動かないので鼻で笑ってやる。
だって、強い奴にくっついて旨みを吸いたかっただけなんだから、立場が悪くなったクソガキ共を誰も助けるわけないじゃん?




