(カーター)108 使用人達の答え
(御者の男:カーター)
人間は話し合えば全て理解し合える。
そう子供の頃に教えられたけど、それは自分を客観的に見れる人だけなんだと思った。
主観的にしか物事を見れない人は、永遠に理解しあえる事はない。
だって、主観的な視点から見れば、自分を不快にさせるモノはすべて完璧に間違っているモノにしかならないからだ。
『人間って本当に面倒で、どんなに自分が悪くても復讐されたらまた復讐をしてくる奴が多いんだよ。
多分、自業自得ってやつを受け入れられないんだろうな〜。』
『そういう奴は駄目だな。もう、手遅れってヤツ。ただただ自分の欲望のために、周りを壊し続ける化け物だ。』
『だから俺は、いつも一度だけチャンスを与えてやるんだ。
徹底的にやり返した後は、自由を与える。
人間ってのは根本は変われねぇ弱いヤツが多いからさ、それが変わらなくとも、今後世に迷惑を掛ける事なく生きていくなら見逃す。』
『だが、もう一度自分にとっての楽園を取り戻すために復讐しようとしてきたら……次はない。分かるか?』
────うん、よく分かった!
僕はルーク様が言っていた事に大いに納得して、今までどうやって暮らしてきたのか、何を正義としていたのかを一気に思い出すと、新たな出発をルーク様の元で歩き出そうと決めた。
それから使用人達の半分は、実家やルーク様からできるだけ離れられる土地へ。
そして僕を含めた半分は屋敷に残る事になり、元いた半分の人数で仕事を回していかないといけなくなったのでさぞかし大変に────……ならない!
すたこらさっさ〜♬と逃げていったのは、全く仕事ができない……いや、それどころか足を引っ張る事しかしない見た目麗しいだけの人達だったからだ。
寧ろ、あれしろこれしろ、こうするべきだ!と命令してくるだけの人達がいなくなった事でとってもクリーンな職場へと変わる。
特に今までルストン様にYESマンだったセブンさんの変わりようは凄くて、まるで水を得た魚の様に生き生きと働きだし、どんどんと職場も街も活気を取り戻していった。
僕なんて、ちょっと街へグリード家の家紋入の馬車を走らせれば、『ルーク様万歳!』『グリード家万歳!頑張れ〜!』なんて声援を受けてしまい、ちょっといい気分!
そうそう!ウチの主人は凄いんだ!
もっと褒めて〜もっと褒めて〜!
ニコニコとご機嫌で買い物を済ませて帰ると、突然セブン様に呼びつけられた。
一体なんの用だろう?
首を傾げつつ直ぐに向かえば、集合場所のホールには使用人全員が集まっていて……僕が来たのを確認したセブン様が全員に向けて喋り始める。
「仕事で疲れている中、集まってくれてありがとう。話したい事は、今後のグリード家の事についてだ。」
セブン様の話を聞いた全使用人から、緊張した雰囲気が伝わってきた。
これからのグリード家の未来。
それはまるで濁った水の様に不透明である事は、誰もが分かっている事。
僕もゴクリと喉を鳴らして話の続きを待つと、セブン様は神妙な面持ちで続きを話し始めた。
「現在グリード家の当主、ルストン様は表向きはご静養のためと部屋に引きこもってらっしゃる。
そのため、現在は正当なグリード家の御子息であるルーク様が当主代行をしてくださっているが……今後、ルストン様達がどう出るかで我々は選択を迫られるだろう。」
全員が覚悟していた事だったので、シーン……とその場は静まり帰る。
つまりセブン様が言いたい事は、極端に言えば『ルストン様につくか』それとも『ルーク様につくか』の二択。
現状、まだ圧倒的に強いのはルストン様の方だろう。
勿論正面切っての勝負にはならない事は知っているが、人と人の争いには必ず外野の存在が重要になってくるからだ。
一人では戦えない。戦いは多方面だから。
それはただの御者の僕でさえ知っている常識である。
だから『幸せ』に暮らして生きていきたいなら、今まで同様ルストン様につくのが正解なんだろうけど────……。
「俺はルーク様につきます。」
静かに手を上げ、1番に発言したのはザムザさんで、続けて隣にいる侍女のサリーさんも手を挙げ「私もルーク様につきます。」と迷いなく発言した。
この二人はセブンさんと共に頭角を現し出した執事と侍女で、二人揃ってルストン様ではなくルーク様に忠誠を誓うと言う。
すると、次から次へと手が挙がり、「俺も!」「私も!」と叫んだ。
「僕もで────す!!」
僕もすかさずぴょんぴょん必死に飛び上がり、自分の意思を伝えると、セブン様は嬉しそうに笑う。
「私もルーク様に従うつもりだ。
よってこれより、ルーク様が気持ちよくお過ごしいただける様、屋敷内を綺麗にしていきたいと考えている。
元当主ルストン様達の様子はどうなっている?」
「────ハッ!いまだ正常な判断能力はない状態だと……。」
「侍女兼用愛人の名前を呼んでたので〜『坊主になって故郷に帰りました。』と伝えました〜。」
「そうしたら発狂してしまったので、それからは部屋のお外にご飯を置いて話しかけてません〜。」
サリーさんがちゃんと報告している傍ら、他の若い侍女達は軽い調子で答え、サリーさんに軽くたしなめられていたがどこ吹く風の様だ。




