103 ラッキー!
(ルーク)
「遠慮しておくわ〜。年取ってから新しいのを入れちまうと、今持ってるモンがポロッと落ちちゃうからさ!
若い頃に目一杯手に入れたモンを、あとはお迎えが来るまで全部抱えて守っていかなきゃいけねぇのよ〜。一応全部大事な大事な思い出だから。」
《???》
「????」
フェイスとジョアンが不思議そうに首を傾げていたが、これは自分で経験して初めて悟った事の一つ。
ザ・ところてん脳みそ。
何か新しい事を覚えると、何かが代わりにでていく現象で、コレにプラスして新しいモノが古いモノとくっつき認識違いを起こす最高に迷惑な現象だ。
絶対上手く使えない。
ただでさえ一つも魔法使えないし!
ハハハッ〜!と笑いながら、頭に浮かぶのは今の自分を構成している沢山の思い出だ。
もう自分を変える様な、大きな『力』は望まない。
今持っているモノだけしっかり抱えて、それを使って生きていく。
《変な人だ〜。変な人、変な人〜光っている変な人〜。》
フェイスはキラキラ目を輝かせながらジョアンに同意を求める様に、首を横に倒した。
「変な人って……俺、別に変な事ってねぇだろ〜?俺の名前はルークだ。よろしくな。」
《うんうん!よろしく、ルーク!》
フェイスは小さい手を上に挙げ、楽しそうに笑っていて、精霊は随分人間に好意的なんだなと驚きつつ……先程言っていた話が気になった。
『ジョアンについてる変なの、アナタのじゃ……?』
……変なのって何??
俺は『はて……?』と首を傾げながら、スキル<全視透神>を発動し、ジョアンを見た。
(後天称号)
【黒心色】
【&$%#のピース】NEW!
…………全てのデバフ称号を無効化し、今後の成長率を自身の感情値によってUPする
一定以上&$%#の感情を動かした事で発動
「…………はぃぃ??」
またしても正体不明の称号の様なモノを発見し、驚きに目を見張ったが……とりあえずどうして精霊がジョアン少年と契約できたのかは判明した。
【黒心色】によって召喚や契約ができなくなっていたジョアン少年だったが、後からついているNEWな称号、【&$%#のピース】とかいう謎の称号によって、それが見事にかき消されているというわけだ。
問題はこの【&$%#のピース】が何故ついたのかだが……。
「……ま、いっか!悪いモノじゃなさそうだし!」
考えるのが面倒くさくなって、早々に頭の中から放り投げた。
悪いモノじゃないなら基本は放置!
ジョアン少年が好きな方向へ進める『力』になっているなら、それは良いもの!
うむ!と満足げに頷くと、ニョキッと顔を出したのは、ゲームの中でジョアンが召喚し契約した闇属性のモンスターについてだ。
召喚も契約もできないはずなのに、あれってどうやって契約したんだろう?
少しだけ気にはなったが、今は全く別の精霊と契約できたわけだし、気にする必要はないと判断した。
「それにしても、このスクリーンは誰のスキルなんだろうな?街にいる奴らの誰かの……?」
「どうでしょうか……。光属性の魔法に類似しますが……。」
ジョアンと俺が宙に浮かんでいるスクリーン達を見回すと、突然その中の一つを残し、他は全て消える。
「な、なんだ〜??」
ボンヤリと残っているスクリーンを見つめていると、今度はそこに見知った人物が映ったので、『あ……!』と口を開けた。
「ハ、ハクさん??」
ついさっき出会った今夜泊まる宿<白鳥のとまり木>の女将、ハクさん。
なぜ彼女が……?
ハクさんは、俺とジョアンを見下ろしニコッ!と嬉しそうに笑う。
《これでやっと復讐できたわ。ありがとう、ジョアン様、そしてルーク様。》
「?復讐……?とりあえず、このスクリーンはハクさんのスキルって事でいいのか?」
ハクさんがコクリと頷くと、肩に泊まっていた契約モンスター<ピリン>が、彼女の周りをクルクルと回りだす。
(契約モンスタースキル)
<プリズム現世鏡>
光属性の鏡を作り出し、現在起きている事や過去に撮影した映像などを映し出す事ができる情報伝達系スキル
《私は元々このピリンの能力を生かし、諜報ギルドで働いていた諜報員でした。
以前よりゲリーの行動が怪しいと依頼が入り潜伏していたのですが、その途中で相棒を殺されたんです。
情に熱い男だったので、きっと酷い場面に立ち会い見ている事ができずに飛び出したのだと思います。》
「そうだったのか……。それはご愁傷さま。」
重い過去を聞き、それ以上何も言えずにいたが、ハクさんはまた肩に止まったピリンの首辺りを人差し指で優しく撫でる。
《お互い覚悟して諜報員になったので、それは仕方ない事。
しかし、大事な相棒を殺したゲリー達に一矢報いたかった。
だから今回の事はチャンスだと思い、こうして独断で動きました。
勿論全ての映像は保存しておりますので、どうか上への報告の際は御使い下さい。》
「助かる。ありがとう。」
ハクさんの申し出に対し、ジョアンは胸に手を当て感謝の意を示した。
これで上が何を言った所で、正当防衛が成立する事は間違いないはずだ。
「こいつはラッキーラッキー!上っつーのは、ホント理不尽かつ、重箱の隅どころか蟻の巣穴の奥底まで突くような奴らだから!
これで黙らせてやればいい。」
「フフッ。そうですね。」
ジョアンの顔に笑顔が見られた事にホッとし、頭をグリグリ撫でてやるとジョアンの顔はまた真っ赤に。
それが楽しくて誂う様に頭を撫で続けていると、ハクさんが突然真剣な顔になった。
《先程の黒い虫のようなモノなのですが、私は何度かアレと同じモノを見ています。
正体はいまだに不明なのですが、、一つだけハッキリしている事があります。》
「ハッキリしている事?」
俺はジョアンを撫でる手を止め、再びハクさんの方へ視線を向けると、ハクさんはコクリと頷く。




