100 勝負の行方
(ルーク)
「────っ〜……うおぉぉぉっしゃぁぁぁ!!!」
還暦超えのおじいちゃん、胸熱な戦いに思わず飛び跳ねる。
なんか色々、精霊だの加護だのと訳分からん展開になっているけど、胸踊る展開で何でも良し!
イヤッホ〜!と叫びながら、着地した途端に倒れ込んでしまったジョアンに駆け寄り、その体を起こしてやった。
「凄いぞ!ジョアン!あのデカいヘビを一人で倒すなんて!」
「は……はは……。あ、ありがとうございます……。」
震えている体から、きっと恐怖を感じながらの戦いだったと思われるが、ジョアンはハッ!とした様子で、すぐに立ち上がろうとする。
「ま、街が……土砂を止めなきゃ……!」
宙に浮かぶスクリーンを見れば、現在どんどんと流れ込む土砂によって、街は依然危険に晒されていた。
《────グッ!!だ、駄目だ!!勢いが強すぎる!!》
《でも、ここで踏ん張らないと終わりだ!皆、踏ん張れぇぇぇぇ────!!!》
『うおぉぉぉぉ!!』と、街民達は一斉に雄叫びを上げて契約モンスター達と土砂を押し戻そうとしている……が何せその勢いと、どんどんと後方から発生する新たな土砂流のせいで、押し戻しきれない様だ。
それを見たゲリーは、ハハハ〜!!と大声で笑った。
「俺を裏切ったクソ街民共が!!こうなったら全員土砂に流されて死んじまえ!!
ハハハ〜!一体何人残るかな〜♬」
「────グッ!!」
ジョアンは父親であるゲリーを睨みつけながら、震えている足で立ち上がろうとしたが……俺がその体をもう一度ストンと座らせてやる。
「まぁまぁ、ジョアン少年は休んでいなさい。大丈夫だから。」
「し、しかし!あのままでは……!」
ジョアンは血の気の引いた顔でスクリーンを見上げたが、大丈夫。
そこには、レイピアを大きく後ろに引いたセレンが映っているから。
《好きに動いていいと言われた。だから今から好きに動く。お許しを。》
「頼んだぞ、セレン。」
セレンは俺の答えが聞こえたのかニコッと笑い、そのままレイピアを横に大きく振った。
すると、横一文字の剣圧は覆いかぶさる様に襲ってきた土砂に直撃し、それを全て吹き飛ばす!
《はぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!??》
スクリーンに映る街民達は、一斉に目玉をポーン!と飛ばしながら、一瞬で土砂が消え、綺麗に晴れた空を見て叫んだ。
「な……なな………っ……。」
「な、なんと……。」
絶句し顎が外れるほど驚いているゲリーと、ジョアン。
俺はそれにニコッと笑ったが、ゲリーはすぐに我に返り、ローレンとアッシュがいるスクリーンを指さした。
「ま、まだだ……!まだ、山崩れは続いて────……。」
「あ〜……うん、そっちも大丈夫だろう。アイツ、遊んでいるだけみたいだから。」
ローレンがブルースター・マーメイドと一緒に大きな土砂崩れを必死に止めている傍ら、それをボンヤリ見ていたアッシュは、欠伸をしながら足先でトントンと地面を打つ。
《そろそろ飽きたな。もういっか。》
不謹慎極まりない言葉を吐いたアッシュは、そのままローレンの頭上を軽々と飛び越え土砂流の前へ。
《────っ!!??あ、危ない!!》
止めようとするローレンを完全無視したアッシュはそのまま足を軽く後ろに引き────……。
ボンッ!!!!
前に蹴り上げると、まるで竜巻の様な風が発生し土砂は一瞬で消え失せた。
《&%$$###&((!!!??》
「なぁぁぁぁぁぁぁ────────っ!!??」
目の前で突然土砂が消え、目を白黒させているローレンと、こっちで絶叫をあげるゲリー。
街の人達もスクリーンの中で、今まで必死に止めていた土砂が一瞬でなくなった事に思考が追いつかないのか、黙ったまま呆然と立ち尽くしている。
「ナ〜ッハッハッハ〜!!!見たか!我が護衛達の力を!凄いだろう凄いだろう!」
自慢の弟子たちをここぞとばかりに自慢してやったが、残念ながらゲリーは聞いていない様で、尋常じゃない汗を垂れ流しながら、一歩……また一歩と後退りを始めた。
「う……嘘だ……嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ……!」
現実を受け入れられないのか、ゲリーはブツブツと独り言を呟き続けている。
「……父様。」
ジョアンは複雑そうな表情で父親を見つめたが、すぐに表情を引き締め、キッ!と睨みつけた。
「父様、もう終わりです。証拠は嫌という程揃いました。これから正当な裁きを受けて頂きます。」
「はぁ!??な、なんで俺が裁かれないといけねぇんだよ、ふざけるな!!!」
この期に及んで全く自分の非を認めない姿。
これは珍しいモノではなく、今まで心なく人を犠牲にしてきた者達の当然の反応といえる。
ま、自分に都合のいいルールの元に罪を犯してきたヤツにとって、不都合な展開は全て『間違い』だという事だ。
素直に罪を認められるヤツは、そもそもこんな事してないもんな。
復讐心で一杯の目でジョアンを睨むゲリーにため息をつきながら、めんどくさいから殴って脅しておこう!と考えて近づこうとしたその時────……倒れているドン・スネークから妙な気配がした。
「……?なんだ?」
《────ジョアン、気を付けて。なんか変な気配がする。》
精霊にフェイスもその妙な気配を察知したようで、ジョアンの顔の前に飛び出す。
俺達がドン・スネークの方へ注意を向けている間も、ゲリーの口からはまるで呪詛の様な言葉が続いた。
「お前らの様なクズ共は、この俺の様な選ばれし上級貴族のために命を差し出すのが当たり前なのに……っ!!
俺は……俺は上に……上に行くんだ……!あの方達がいるあの場所へ……っ……そこに本当の俺の場所が……っ……!!」
「?あの方達??」
随分と気になるワードを口にしたので、俺がフッとゲリーの方を見たその瞬間────突然ドッ!!とドン・スネークの体の内部からミミズの様な細長い生き物が沢山飛び出し、その体に巻き付く。




