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天声だだ漏れ転生〜女神の温もりと共に〜  作者: 白銀鏡
【第二部】 第三章 出会いと共に
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第22話 感情の具現化

この世界における魔法とは、こういう力なのでした。

カガミと共に授業参観をお楽しみください。


感情の具現化


どうぞ。

 ——ルミナによる公開魔法試技も終わり、教室に戻る一同。

 ここからは、彼女が見せた魔法を参考に、その仕組みを紐解いていく。


 教壇に立ったヨヨは、皆が席についたのを確認し、早速説明を始めるが——。


「魔法を使う上でまず知るべきは、マナの”特性”と”属性”についてだ。始めに、マナの特性を——」


「——はいっ! 私から説明します!」


 突然、手を挙げたニーテは、立ち上がり、すらすらと口を動かした。


「——マナとは、主に女性に多く潜在する魔力の総称。対象者に付与し傷を癒したり——具現化により攻撃に転じる事が可能とされる、緑色の発光が確認された力。また、それらは全て”魔法”と呼ばれます」


 百点満点の説明に、ヨヨは微笑み着席を促す。


「ありがとうねぇ——座ってよろしい」


「このぐらい、当然です——」


 目を瞑り鼻高らかに着席したニーテは、薄目を開き、左隣にそっと目を配った。


「……うう」


 そこには、顰めっ面で俯くルミナの姿。その様子に彼女は優越感に浸り少しだけ口角を上げる。しかし、当の本人は——。


(すごいわ……ルキのやつにも、爪の垢を煎じて飲ませたいくらい——)


 ルキとさほど歳の変わらない少女の秀才っぷりに、魔法の()()()も知らない彼を憂いてるだけだった。


「さて、次に説明するのは——その、具現化魔法の発動条件、”感情の制御”についてだよ——」


 やがてヨヨは、先ほど見た五つの魔法を元にそれらを説明する。


「まずは、炎の属性だ。

 ——怒りや情熱、心が外へ燃え立つように働いた時、それは発火し現れる。

 次は氷。こちらは逆だ。

 ——悲しさや寂しさを胸の奥に押し込み、心を閉ざした時、冷気が形を取る」


 彼女曰く、この二つの属性は、比較的具現化のしやすい属性だとの事。


「それから雷……こいつは、少し難しくてね。——好奇心だったり、何かを楽しんだり——跳ね上がる様な感覚が、発動を促す魔法。”変わり者”に多い属性と言えるね——」


 また、こういった感情の制御を主とする魔法の適性は、それぞれの性格によって決まるとの事だった。


「——感情を表に出すのが苦手な人は、氷の属性に適し。楽観的に物事を考える人は、雷属性が適している。——中には、怒りが爆発して、その辺を焼け野原にしちゃったやつも、いるんじゃないかねぇ?」


 ——すると、ヨヨの注意を促すような言葉に、ニーテは呆れる様子を見せた。


「うまく感情を制御すれば、それらの魔法なんてすぐに扱えます。それに、私なら——そんな()()はしませんね」


 既に三つの属性を持つと言う彼女。感情を制御する事など、お茶の子さいさいだと言うが——。


「……そ、その通りね」


 何度も心当たりがあったルミナにとっては、それは胸の痛い言葉だった。


「ただし、複数の魔法を使えるからといって、それが必ずしも有利に働くとは限らない。単色の魔法使いであっても、それを特化させ磨いていけば、強力な魔法が扱える——」


 若くしてその才を見せるニーテに、ヨヨは釘を刺すように説明を続ける。


「多く長所を持つ者は、安定こそするが特化には遠い存在にもなり得る。この世界での魔法とは、そういった特性、特徴を持つものなんだよ」


 周りに、失笑が漏れた。鼻を明かされムッとなったニーテは、すり替えるように次の話題へと目を向けた。


「そ、そんなことより残りの属性について、詳しく教えてください!」


 残る属性は二つ——。

 ここにいる誰もが、完全には使いこなせてないこの魔法については、皆も気になるところだった。


「風と土。自然を操るこれらはちょいと特殊で、説明が難しいんだよ——」


 するとヨヨは、少し難しそうな顔で続けた。


「まずは風だ——この条件は、とにかく逆らわないこと。その場の空気に身をまかせ、そっとマナを重ね合わせる事で、“空気の制圧”が可能となる。風は刃にもなるし、汎用性が高い魔法だね」


 そして次に、彼女は困った顔を見せる。


「残るは土の属性なんだけどね——これに関しては、私もうまく扱えないから、よくはわからないのさ」


 この二つの属性に適応できる人間は、あまり多く存在しておらず、土の属性に関しては、ヨヨでさえも完全に使いこなすに至らなかった。


「発動条件としては、風と似たものを持つが、このように言われている。えっと、確か……——」


 口が止まり、何かを言いあぐねている彼女に、そっと言葉が添えられる。


「——自然の摂理に逆らわず、それでいて、盤石なる静の心を持つこと。焦らず安定したそれは、大地を揺るがす程の力となる」


 その声の主は——ルミナだった。

 流れるような説明を施す彼女に、皆が息を飲み唖然とする。


「ルミナさん……どうして、何もかも知ってるの?」


「えっ! ええ。まあ……アリヴェルにいた頃に、ちょっとね」


 ——女神の一族に生まれ、大陸一とも言える英才教育を受けてきたルミナ(アリシア)

 この程度の魔法の文言など、彼女の頭の中に既に叩き込まれていた。


「あなたは……一体?」


 常人離れした彼女の知識に、ニーテはやがて、不信感すらも覚える。


 しかし、その問いに答えられず、ルミナが口をごもらせていると、今度はヨヨが言葉を返した。


「おお。そうだったねぇ……助かるよ、ルミナ。さて今日は、ここまでにしようか——」


 そして彼女は、終業の合図を告げる。ルミナの助けもあり、今回の魔法講習は幕を閉じられたのだった。




 ——その場にいた弟子達は、再び訓練場に足を運んだり、寮へと帰宅したり、皆それぞれの持ち場へとついていった。


 皆が席を離れる中、初日を終えたルミナが一息ついていると、目の前に魔導書を抱えたニーテが立ち尽くす。


「——ルミナさん。アリヴェルでは、ずいぶんと英才教育を施されたようですね。でも、私だって——」


 一瞬だけヨヨの方に目を配った彼女は、何かを言いたそうにごもっていた。

 だが、その先の言葉を吐き出す事なく、反抗心の混じった瞳だけをルミナに向ける。


「絶対、負けませんから——」


 しかし、彼女は立ち上がり、それを流すように笑った。


「——そう硬くならないで。ニーテだって、たくさん勉強していて凄いと思う。だから私、是非あなたの魔法も見たいわ!」


 その攻撃的な態度など気にも留めず、ただ彼女に期待を寄せるルミナ。


「えっ⁉︎ は、はい。ルミナさんが、良ければ……」


 ——ニーテはとっさに、魔道書で口を隠し頬を染めた。

 まんざらではない気持ちを隠しつつも、ルミナにやきもちを妬いていた彼女は、少し複雑な心境を覚えるのだった。


* * *


 ——その後ルミナは、魔法使いたちが暮らす“寮”へと案内されていった。

 そして、残された教室には、並べられた書物を整理するヨヨの姿。


(……むぅ、この世界の魔法は複雑なんだなぁ。このままじゃ熱が出そうだ)


『ふふ、そのようね。それにしてもあのニーテって子、ルミナさんよりも幼いのに、よく勉強しているわね——』


 若くして、魔法の原理をよく理解していた彼女に、マリラは感心していた。


(ああ。ニーテはヨヨ婆の弟子である前に——実の孫だからな)


 俺は、彼女達の関係をあっさりと暴露した。それを聞いたマリラも少し驚くが、すぐに納得した様子を見せる。


『通りで……あんなに優秀なのね。お孫さんがいるってのは聞いてたけど——あの子将来は、きっと素晴らしい魔法使いになるわ』


 ——あの時、ルミナに何かを言おうと迫っていたニーテ。

 最も優れた魔法使いと言われる“法王”の称号を持ち、その血を引く自分だって負けてはいないと、きっとそれを言いたかったのだろう。


(ルミナもそうだが、格式高い生まれを持つ者は大変だろうなぁ——)


 ——そうこうしているうちに、日は傾いていた。皆が寮へと戻り、辺りからは人の気配がなくなっていた。

 書物を片付け終えたヨヨは、ようやく一息をつき腰をかける。


『ヨヨ婆様……疲れたのね』


 しかし、マリラがそう思ったのも束の間、その口は——突然開いた。


「アリステラや——()()に、いるんだろう?」


『——えっ! カ、カガミさん⁉︎』


 慌てふためくマリラ。

 真っ直ぐとこちらを向いていたヨヨには、俺の存在が見えているようだった。

 

 ——だが、その信じられない光景に、なぜか俺は——平静を崩さなかった。

 

 初めて見るはずの姿、初めて聞くはずの声、それなのに、このヨヨという人物だけは、俺の全てを預けられる。

 ()()()()()が、自然とそう思っていたからだ。

たまに登場しますね。

カガミを視認できる存在が。

彼女は一体……?


お次は火曜日!


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