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天声だだ漏れ転生〜女神の温もりと共に〜  作者: 白銀鏡
【第二部】 第三章 出会いと共に
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第21話 魔法の原理

カガミ視点とルミナ視点の混合で、少々ごっちゃになりますが、どうかついてきてください。

ルミナの弟子入りの物語です。


魔法の原理


どうぞ。

 ——少年隊に、新たな風が吹いていた少し前の時間、アバンに案内された場所へと、歩を進めていたルミナ。

 

 その胸に、覚悟と期待を抱いていたが、それは彼女だけに限った話ではなかった。


(いよいよ——ヨヨ婆に会えるのか……)


 一人歩くルミナの背中を見守りながら、心の内を漏らす俺に、マリラは首を傾げていた。


『——カガミさんは、ヨヨ婆様に会いたいの?』


 俺がルミナの元についていくのには、真の目的があった。

 それは、俺自身に潜在する、()()()を役立てる為だ。


(ああ。ラキが言うには、俺の体からは——マナの光が溢れているらしい。だから、ヨヨ婆の元で、魔法ってやつの原理を解析できればと思って——)


 以前聞いた話では、転生者である俺の体は、青白いエギルの光だけではなく、緑色のマナの光()()()含まれてると言う。


『ラキには、()()()光が見えているのね——私には、緑の光しか見えないけど……』


 マリラには、俺がそういう風に見えているらしい。

 つまり、彼女に見えているのは、マナだけだと言う事になるが、この違いも何かの参考になりそうだ。


(何もできず、見ているだけなんて嫌だからな。やれる事は、全部やっておきたいんだ——)


 自分を戒める様に呟く俺を、マリラが優しい笑顔で見守っていると——。


『カガミさんも……みんなを大切に思ってるのね——あっ! そろそろ着く頃よ』


 ルミナの足が向く先に、教会と思しき建物が見えてくる。


(——あれが、魔法使いの訓練場……今回は、屋内のようだな)


『知らなかったの? てっきり、カガミさんは何でも知っているものだと思っていたけど』


 疑問ばかりを投げかける俺に、違和感を感じるマリラ。


(物語の事なら、よく知っているつもりだが——その世界の決まり事や、建物の作りなど——中には、俺の知らない事もたくさんある)


 国の動きなどをわかってはいても、ギルバディアの中の細かい事情については、この国に長く住む彼女の方がよく知っていた。

 

『魔法の修練は、主に勉強と同じ。マナを鍛えることも重要だけど、そこに知識がないと何の役にも立たないわ』


 何もわからない俺の為に、次々と説明の手が添えられ、彼女の知識がどんどん露わになる。


(へぇ——どうしてマリラは、そんなに詳しいんだ?)


『うん……昔は、人にものを教える先生になるのが夢だったから、このぐらいは——』 


 彼女は少し、切なげな表情を見せていた——。


 度々俺に見せる知識の裏付けには、彼女が生前抱いていた願望があったのか。

 ……俺も、マリラみたいにたくさん勉強しないといけないな……魔法とは、一体なんなのだろうか——?


* * *


 ——この世には、”魔法使い”と呼ばれる人間がいる。

 己の中に潜むマナを、なんらかの力で具現化させる。この“魔法”という技術を用いて戦う者の事を、皆がそう呼んでいた。


 ルミナが足を運んのは、魔導院(まどういん)と名付けられた場所。

 この国には数多くの訓練場が存在するが、魔法使いを養育するための教室は、ここただ一つしかない。


「ここから——始まるのね」


 ——ギルバディアの戦士としての始まり。

 深呼吸をし、心に新たな風を送り込んだ彼女は、その壁を叩いた。

 

「——失礼します」


 扉を開けるとそこには、一つの教壇と、その周りには書物の置かれた勉強机が並び立つ。


「——おや? ……ひっひっ。よく、この魔導院に来てくれたね」


「ヨヨ婆様……今日から、よろしくお願いします」


 教壇に立つヨヨにペコリと頭を下げ、彼女が横を向くと——椅子に腰掛ける、十数人の少女。

 彼女達は、ヨヨに教えを乞う魔法使いの弟子だった。


「新しい仲間を紹介するよ。さあ——」


「私はルミナ。出身はアリヴェル——みんな、よろしくね」


 皆の注目が集まる中、ルミナは少し硬くなるが、ヨヨは笑いながらその背中を叩く。


「なぁに——ここでは、皆んなが足並みを揃える必要は無いからね。だから、兵隊みたいにかしこまる必要はないんだよ」


 ヨヨは優しい言葉をかけ、その場の弟子達も彼女を柔らかい表情で迎え入れた。


「アリヴェルから、来たんだぁ……」

「こちらこそ、よろしくね! ルミナ——」


 彼女を歓迎する和気あいあいとした柔らかな空気が流れる。

 ——しかし、それを凍らすかのように、一人の少女が立ち上がり言い放った。


「では、ヨヨ婆様。早速始めましょう——」


 ——歳は、ルキと同じぐらいだろうか。

 ヨヨによく似た、紫色のお下げ髪を両肩に下ろした少女。

 笑み一つこぼさない彼女は、教団へと目を向ける。


「そうだねぇ。——さて皆んな、表へ出ようか」


 彼女の言葉を皮切りに、皆がぞろぞろと外の広場へと足を運んでいく。

 そして、ルミナの前へと——その少女はやってきた。


「私はニーテです。ヨヨ婆様の、最も優れた弟子として——ルミナさんの実力を、測らせていただきます」


「ええ——よろしく」


 礼儀正しく会釈をしたニーテに、笑顔を返したルミナは、そのまま彼女の後をついていくのだった。


* * *


 ——屋外に広がるのは、石畳の壁で作られた囲い。

 魔法使いの、実践訓練所だった。


「それじゃあ今から、あんたの魔法適性を見る。今、使える魔法を——皆んなに見せてちょうだい」


 魔法使いの女王が統治していたという、女神の王国の生まれだったルミナを、皆が期待の眼差しで見守る中——ニーテだけは、腕を組み、真剣な面持ちで彼女を見据える。


「アリヴェルの人間が、どれほどのものか……見せてもらいますよ——」


 そして、深呼吸をしたルミナは、いつものように、——両手にマナを具現化させ、弾き飛ばした。


「わあっ! すごい……」

「一気に、二つも⁉︎」


 彼女が放ったのは、爆炎と氷塊の魔法。

 両の手で膨れ上り、強力な魔力を物語るそれは、ここにいる皆を驚かせるのには十分な大きさだった。


「ここまでは、私だって簡単にできるわ——」


 それでもニーテだけは、表情を崩さない。

 しかし、彼女が腕を組み呟いていると、今度は——光が一閃、皆の前を通り過ぎた。

 

「一瞬だけ……光が?」

「今のって、まさか……」


 ——その刹那の光の正体は、雷。

 その場はさらに驚きに包まれ、ついにニーテの作っていた余裕の表情も曇りを見せる。


「か、雷の属性まで⁉︎ ……なかなかやりますね」


「ひっひ、流石だねぇ。——皆もよく見るんだよ。魔法はよく観察する事で、分析につながる」


 ヨヨが、ルミナの力を皆に披露させたのには、そういう目的があった。

 しかし、全てを出し切ったかに思えた彼女には、まだ引き出しがあった。


「後は、こんなものも——」


 ——彼女が手のひらを返すと、あたりに凪のような風が舞い上がる。

 そして、もう一つの手には、地面の砂が丸みを帯びるように集まっていった。


 それは、今まで彼女が、誰にも披露してこなかった魔法だった。


「まだまだこれは、実践では使えないんだけど……こんなとこかしら」


 全てを終えたルミナは両手を下ろし、微笑み謙遜をしていたが、その場の誰もが、彼女の恐るべき力に言葉を詰まらせる。


「こいつは驚いたね……炎、氷、雷だけでなく、風や土までも——」


 優しく見守っていたヨヨも、思わず目を見開いていた。ルミナの才能は、彼女から見ても群を抜いていたようだ。

 

 呆気に取られていた一同だったが、すぐに彼女を拍手喝采で包んだ。


「——私だって……負けない」


 ——その賞賛の空気に混じれないニーテは、ただ爪を噛んでいた。

 己の才能を超えるルミナに、対抗心を燃やしながら。

 

* * *


 一方、一部始終を見届けたマリラは、皆に混ざる様に手を叩いていた。


『さすがは女神族——アリシア様ってところね。私なんか、一番簡単な治癒魔法しかできなかったのに……』


 ルミナの日々の努力が認められて、俺は鼻を高くしていたが、一つ疑問を持った。


(——治癒魔法って、そんなに簡単な魔法なのか?)


『ええ、そうよ。対象にマナを直接流し込むだけだからね。具現化ってのは、発動条件が色々と複雑で——』


 その事実を知り、さらにルミナの苦労が浮き彫りになる。


(魔法で戦うってのは、簡単な話ではないんだな……)


 魔法使いの思わぬ苦悩に、俺が頭を抱えていると——やがてヨヨが、その思いに答えるように、皆を教室の中へと呼び集めた。


「——いい機会だ。今日は具現化魔法について、おさらいするとするかね。——さぁ皆んな、入った入った」


 助け舟の様な彼女の言葉に、俺は飛び上がる様に喜んだ。


(や、やった! 俺達も行こう——)

 

『カガミさん⁉︎ ちょっと待って——』


 ルンルン気分で教室へと入っていく俺を追いかけるマリラ。

 ——皆の為に何かができると思うと、俺は何もかもが楽しみでならなかった。

ルミナも魔導院で、魔法使いの一員として頑張ります。

そしてお次は、カガミの授業参観回です。


金曜日にお待ちしております。それでは

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