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天声だだ漏れ転生〜女神の温もりと共に〜  作者: 白銀鏡
【第二部】 第三章 出会いと共に
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第20話 芽生える友情と……

少年隊の、仲睦まじき物語。

まさに青春!って感じの展開です。


芽生える友情と……


どうぞ。

「——今日はこれまでだ。各自ゆっくり休み、明日の訓練に備えるように」


「「「はっ!」」」


 夕暮れ時、リデルの号令と共にそれぞれの宅へと戻っていく訓練兵達。

 しかし、皆の背中を見送る彼は、怪訝そうな顔で辺りを見回していた。


「——リデルさん? 何かありましたか?」

 

 それに気づき、彼の元を尋ねたのはテゴラ。


「ナポルはどこへ行ったんだ? ルキの案内を、任せるつもりだったのだが——」


 新兵の、兵舎への案内を任されていたナポルだったが、彼はいち早くその場を後にしていた。

 すると、待ちぼうけをくらうルキを見つめていたテゴラが、手を挙げた。


「それなら、私が案内します! 私の兵舎も近くなので——」


「それならば、助かるな——」


 ルキへの当てつけだったのか、幼なじみが放り投げた仕事を快く受けたテゴラは、足早に彼の方へと近づいた。


「ルキ君! 私についてきて。兵舎まで案内するから——」


「兵舎なんてあるのかぁ……どんなとこか、楽しみだな!」


 新たな生活に目を輝かせるルキは、彼女の背中へとついていった。 


『——テゴラちゃんは、いい子ね。それより、ナポル君は一体どこに……?』


 二人を微笑ましく見守るラキだったが、それよりも彼女は、姿をくらました少年を心配するのだった。


* * *


 ——兵舎には、いくつかの合同施設があった。

 食堂や医務室、それから”剣庭(けんてい)”と呼ばれる、訓練場とは違い、自由な時間に剣を振り鍛錬を許される場所。

 だがそこは、ほとんど使われていなく寂れている状態であった。


 それぞれの施設の案内を終え、ルキはようやく、無数の扉が立ち並ぶ廊下へと足を運んでいた。


「——ここが、ルキ君の部屋よ」


 テゴラが扉を開けたそこには、三畳もの寝床があった。少年隊の一人一人に与えられる部屋だ。


「ここか! へぇ、結構広いんだな——」


 訓練の疲れがどっと出たルキは、思わずベッドに座り込み、一息ついていた。


「ルキ君、初日だったもんね——私の部屋は、扉出て右奥んところだから、わからないことがあったら何でも聞いてね!」

 

 彼の疲労を労り、優しい言葉をかけてくれるテゴラに、ルキは呟いた。


「テゴラは、優しいやつだな——すげえ助かるよ」


 感謝の意を見せた彼の瞳に、照れ臭そうに目を伏せるテゴラ。


「ルキ君にはさ、感謝してるんだ……ナポルの事——」


「ナポル? なんであいつが?」


 壁にもたれかかり、天井を見上げていた彼女は、さらに語り出した。


「あいつさぁ——小さい頃から何でもできて、少年隊でも、すぐに一番になったの。そのせいで、訓練もあまりしなくなっちゃったもんだから、誰かにその鼻、へし折って欲しかったんだ——」


 少しだけ、すっきりしたように笑うテゴラだったが、その表情に徐々に悔しさを滲ませる。


「頑張ったら、もっとできるくせに……それに、なんだか腹が立って——本当は、私があいつを負かせてやりたかったんだけどね。……私って剣の才能ないし、魔法だって、一番簡単なのしか使えないし……」


 明るく接してくれていた彼女が、内に抱いていた劣等感。それを見ていたルキは、ふと疑問を投げた。


「なんでテゴラは、それでも兵士になろうとしたんだ?」


 その質問に——目を輝かせ、顔を向けるテゴラ。

 

「——ジーンさんって、知ってる?」


 ルキが首を横に振ると、彼女は自慢げに言葉を並べていく。


「ジーンさんはね、すごいの! かっこよくて、強くて、こないだついに——女性で初めて”上位六騎士”に就任したんだよ!」


 女戦士ジーンの存在は、少女兵みんなの憧れだった。彼女の勇姿を知って剣を取った女の子は、この国では少なくなかった。


「女なのに、強ぇんだな——」


「そうなの! だからね。いつかジーンさんみたいな、すごい戦士になりたいと思って、兵に志願したんだ」


 ——ルキには、彼女の強い憧れがよくわかった。

 

 いつしか、マルクの様な強い戦士になりたいと、他者を目標にし、力にしているのは彼も同じだったからだ。


「でも実際は——私なんかには、遠すぎる夢なんだけどね……」


 声高らかに語っていたテゴラは、やがて、その憧れを誤魔化すように、作ったような笑顔を見せた。


 ——すると、その様子に納得のいかなかったのか、ルキは突然立ち上がり、彼女の手を握った。


「ルキ君——⁉︎ ちょっと、どこ行くの?」


 そのまま走り出す彼の行動に、驚きを隠せないテゴラ。 


「剣……庭、だったか? まだ開いてるんだろ? 今すぐ行こう!」


 彼が向かおうとしていたのは、先ほど通り過ぎたばかりの中庭の広場、剣庭——。


「剣庭? あんなとこ、誰も使ってないよ」


 兵舎に戻るのは、クタクタになるまで訓練に励む若者達。こんな時間にまで出てきて自分を追い込む者など、ここにはいなかった。


 しかし、戸惑う彼女の手を引き、歩を進めていたルキは言い放つ。


「——なりたい自分がいるなら、立ち止まってる暇なんてねぇよ! やれることやんなきゃ、なれなかったときに絶対後悔するぜ」


「……それは、そうだけど」


 ——彼女だって、頭ではわかっていた。

 自分なりに、努力はしていたつもりだ。でも、いくら頑張ったってやれない事も世の中にはある。

 現実ばかりが頭を離れず、彼の激励を受け取れないテゴラ。


「……そんなの、私にできっこないよ——」

 

 ——すると、前を走るルキの背中がピタリと止まり、彼女へと振り向いた。


「俺も一緒に手伝ってやるから——だから、やろうぜ! な?」


 それは、前向きで無邪気な笑顔だった——。


「ルキ君と……一緒に——」


 彼が一緒にいてくれるなら、傍で笑顔が見れるなら……。

 そう思ってしまったテゴラにとっては、彼の存在は大きな力になっていた。


「……ありがとう。ルキ君——私、頑張ってみる!」


 ようやく笑顔を見せ、彼の手を握り返し、自分から足を動かしたテゴラ。


「——そうこなくちゃ!」


 ——彼女は、まっすぐな彼の心に、少しだけ近づけた気がしていた。

 鳴り止まぬ鼓動と共に、初めて芽生える——()()()()()を灯しながら。


* * *


 ——剣庭にて。

 そこには、無我夢中になって剣を振る一人の少年兵を見守る、ラキの姿があった。


『——あの子、あんなに頑張って大丈夫かしら。今日の訓練でも、一番頑張ってたのに……』


 訓練中、最も汗をかいていた彼の事が心配になり、ずっと見守っていたラキ。


 ——やがて彼女は、そこに近づいてくる二人の足音に振り向いた。


『あ、あれは⁉︎ それに、あの子も——』


 ——やってきたのは、テゴラと手を繋ぎ現れるルキ。

 すると、手を離した彼女は、()へと目を向けた。


「うそっ⁉︎ あんた、一体こんなとこで何やってんのよ——」


 そこにいた少年の名は、ナポル。

 合同訓練を終え、早々に席を外していた彼は、この剣庭へと足を運んでいた。


「——別に、お前こそどうしたんだよ……()()()まで連れてよ」


 ルキを見るなり、腕を組み顔を背けるナポル。


「私、決めたの。ジーンさんみたいに強くなって、副隊長——いや、隊長の地位まで上り詰めるって」


「隊長って……お前、何言って——」


 彼女の無茶とも言える発言を、呆れた様子で見つめていた彼は、さらに言葉を詰められた。


「あんただって! 何かを変えたくて、ここに来たんでしょ?」


 ——何も言い返せず、下を向くナポル。

 その言葉の一つ一つが、彼には刺さっていた。


 今までで一番だった彼は、突然やってきた新兵に敗北を喫した。

 悔しくて、惨めで、このままじゃいけないと思った彼の足は、ここに向かわずにはいられなかったのだ。


 ——すると、沈黙を続けている彼に近づき、そっと手を差し出すルキの姿。


「せっかく出会えたんだし、一緒に強くなろうぜ。それに、お前がいてくれたら、俺達もっと強くなれるんだから——」


「……ぐぐっ」


 すぐにその手を取ろうとせずに、幼い自分と戦いながらも——彼は思い出す。


 初めての敗北の時も、ルキはこうやって握手を求めていた。

 敬意を持って、相手を認めていた——この心こそが、彼にあって自分にないものだったのだ。


 ——そして、ナポルはようやく、自分の敗北と向き合った。


「——そこまで言うなら……やってやるよ」


 さらに勇気を振り絞り、ルキへと向き直った彼は言い放つ。


「言っておくが、最後に勝つのは俺だからな——それから……俺だって、いつかは隊長になってやる! わかったかルキ!」


 真正面から彼を見据えるナポルは、拳を突き出した。自分の弱さを認める事ができたこの経験は、彼にとっては、大きな一歩だった。


「——俺だって! 負けねぇからな、ナポル」


 握手の代わりに、拳を合わせた二人。

 同じ目標を持った彼らの思いが、やっと重なり合い、新たな友情がそこに生まれていた。

 

 ——そんな中、二人の仲睦まじい光景を、満足そうに見守るテゴラ。


 幼なじみだったナポルを、彼が変えてくれた。

 夢を諦めようとしていた自分を、変えてくれた。


 ルキとの出会いによって、前に進む事が出来なかった彼女の時間は、ここでやっと動き出したのだ。


 ——しかしそこに、高なる鼓動を胸で抑えながら、彼に色づいた視線を向けていた少女を、草葉の陰から見守る者が一人だけいた。


『テゴラちゃんってば——もしかして……』


 彼女を見つめていたラキは、素敵な友情を見せた弟の行動に感心しつつも、彼が作ってしまった一つの()に、複雑な思いを抱くのだった。

揺れ動く色んな感情との戦い。

これこそが青春ですね。


お次はルミナパート!

火曜日にお会いしましょう〜

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