第19話 少年達の出会い
少年隊としての活動がスタートしました!
今回はルキ編!
少年達の出会い
どうぞ。
『——さて、始まるわね!』
弟の新たな門出を、張り切った様子で見守るラキ。
彼の背中を追っていると、やがてその足は——ある男の前で止まる。
「あ、あの……俺、アバンの紹介で——」
そこには、ギルバディアではお馴染み、十字架の紋章の鎧に、無表情でこちらを見つめる赤髪の男がいた。
「——話は聞いたよ。君がルキだな? 私はリデル。少年隊の教育係と隊長を兼任している——よろしく頼むよ」
リデルと名乗ったその男は、アバン、レオンと肩を並べる三隊長の一人。肩書きに劣らない、その大きな力を観察するラキ。
『アバンさんと違って、リデルさんは、どこか厳格そうな人ですね……ルキったら、生意気な口を聞いて、怒られなきゃいいけど——』
バルナでの弟の生意気な発言を思い出し、ラキは心配するが、やがてリデルは少年隊の皆を呼び集めた。
「——彼が、今日から共に戦う新しい仲間だ。……さぁ、自己紹介をしてくれ」
そして、紹介の場を預かったルキは——大きく息を吸う。
「——俺はルキ! 最強の戦士になるためにここに来た!」
突然、訓練場へと響き渡る彼の大胆発言。誰もが呆気に取られ、その場にしばし沈黙が流れたが、すぐにどよめき立つ若者達。
「——最強だってさ」
「面白い奴だな——」
隣にいたリデルは思わず笑みを浮かべ、彼の挑戦的な発言を皮切りに、一人の少年兵に目を向けた。
「最強の戦士か——面白い。ナポル!」
「ん? ——俺すか?」
注目を集めた少年の名は、ナポル。長く垂れた前髪を、くるくるとつまみながら前へと出る。
「彼の実力が見てみたい。お前が相手をしてやれ——」
「——はいよ」
気だるそうな態度をとっていたナポルは、やがてルキに歩み寄り、笑みを浮かべた。
「お手柔らかに頼むぜ——ルキ君」
「お、おう」
——新兵ルキと、ナポルという少年兵の対峙を、固唾を飲んで見守る少年少女達。
弟の前で、やっと木剣を構えた少年を見ながら、ラキは心配そうな表情を浮かべる。
『大丈夫かしら……あの子、ルキよりも——』
彼女の目に映るのは、弟に勝る大きなエギル。
「いきなりかよ……」
「ルキってやつも、気の毒だな」
「ナポルに勝てるやつなんて、いるもんか」
そこにいた若者達も皆、ルキに対して同情の目を向ける。ラキが不安していた通り、彼の実力は少年隊で最も秀でていた。
そして——無情にも、試合開始の合図が鳴る。
「——始め!」
——掛け声と同時に仕掛けたのは、ナポル。
ほどよく力の抜けた華麗な剣を、横に振り払った。
「「「キャー‼︎」」」
一太刀、二太刀と振られるナポルの剣捌きに、一人を除いた少女兵達から黄色い声援があがる。
『あの子、やっぱりすごい——ルキと同じ位の子なのに』
引導を渡そうとするナポルの剣に、皆が目を見張っていたが、肝心のルキは——。
「(右……次は左だ)」
瞬きもせず、すべての攻撃を受け切っていた。
「ほう——よく見ているな」
全てを見切り、難なくその攻撃をいなすルキの実力を、リデルだけは冷静に分析する。
「(見える……そして、次だ!)」
ルキは、一つ一つの攻撃を受けながら何かを狙っていた。
そして、ついに——。
「うぐっ……!」
——右脇腹に、なぎ払うような剣戟を受けたナポルは、仰け反り剣を落とす。
ルキは既に読んでいた。一見、完璧なまでに見えた剣の呼吸の間に、わずかに見せる一部の隙を。
『うそ……勝っちゃった』
尻餅をつき、信じられない様子でルキを見上げるナポル。その横から、ずっと黙っていた一人の少女兵が、飛び上がるようにして声を上げた。
「——すごいわ! ナポルに、勝っちゃうなんて!」
さらに、それにつられた周りの群衆も、手を叩きルキに歩み寄る少女兵について行った。
「すごーい」
「お前、強いんだな」
「今の、どうやったんだ?」
番狂わせを見せ、憧れや尊敬の混じった視線の数々を当てられたルキは、少したじろいでいた。
『バルナの戦いを乗り越えたルキにとっては、当然ね!』
——今までの旅の中で見てきた、強者の戦いの映像が、少しずつ彼のものになりつつあった。
目にも止まらぬ光速剣、全てを押し負かす剛剣。
圧倒的な体躯を持つ妖魔や、それを操る半妖の恐怖。
圧倒的な実践経験が多かったルキにとっては、この結果は、当然とも言える成果だった。
「今のは……油断しただけだ——」
立ち上がり、群衆に野次を飛ばすナポル。
自分の実力に、よほどの自信を持っていたのか、彼の実力を認められない様子。
——するとルキは、黙って彼の元へと歩み寄った。
『ちょっと! 喧嘩なんかしちゃだめよ——』
ラキの心配を横切り、ナポルの目の前まで歩を進めた彼は——優しく手を差し出した。
「お前も、すごかったぜ——今度俺にも教えてくれよ」
握手を求めるその手には、敬意が込められていた。
勝利こそしたものの、ルキはナポルを見下す事をせず、素直に彼の技を讃えていた。
「ぐぐ、くそっ!」
思っていた言葉と違った彼の好意に、恥ずかしさを覚えたナポルは、そのまま後ろを向いた。
「——んもう! あんたも、認めなさいよね」
彼の惨めな背中に、遠慮なく言葉を投げる一人の少女。
そして、和気藹々とした雰囲気を締めるように、その場に低い声が響く。
「それまでだ、ルキ……君の実力はわかった。それに、ナポル——また技が増えたな、見事だったぞ」
——リデルの試合終了の声により、ルキの力試しは幕を閉じ、少年兵達は、それぞれの訓練の持ち場へとついていく。
すると、彼の勝利を喜んでいた一人の少女兵が、ルキの目の前へとやってきた。
「やっ。私はテゴラ——今日からよろしくね!」
深緑色の短い髪を結い上げた少女の名は、テゴラと言った。八重歯をはにかんで見せた彼女は、去ろうとしていた肩を、再び組み寄せた。
「こいつはナポル——幼い時からの、腐れ縁ってやつ」
少し口を尖らせ、横を見ていたナポルは吐き捨てるように言う。
「ナポルだ……次は負けない」
彼のぶっきらぼうな態度にも、ルキは気にせず笑顔を向けた。
「おう! これから、よろしくな——テゴラ、ナポル」
彼は新たな出会いの中で、互いを認め高め合う喜びを覚えるのだった——。
『ルキ……もういつまでも、子供じゃないのね』
——向こう見ずな性格の弟が、誰かに目をつけられはしないかと、ずっと見守っていたラキ。
けれど、いつも泣いてばかりで、ただ後ろをついて来るだけだった彼は、知らぬ間に大きく成長していた。
その姿を見て、胸に込み上げるのは確かな喜びと、そして、ほんの少しの寂しさだけだった。
彼の強さだけではなく、心の成長が見れる感慨深い回でした。
ですが、彼はまだまだ成長しますよぉ〜
お次は金曜日に!




