【やり直し軍師SS-581】遠路訓練(11)
更新再開いたします!
またお楽しみくださいませ!
SQEXノベル書籍版第5巻、コミック第二巻は今春発売予定!
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私がディオウに連れてこられたのは、廃集落の奥にある家だった。
ログガットと対峙していた屋敷とは一転、建物はぼろぼろ。いつ崩れてもおかしくないような気さえする。
ディオウは扉だけが妙に新しい部屋に向かって進むと、開いてすぐに、私を乱暴に放り込んだ。
「……念の為伝えておくが、当然見張もいる。ただでさえ短い寿命をさらに縮めたくなければ、ここで大人しくしている事だ」
それだけ言い残し、私の返事も聞かずに出てゆくディオウ。扉が閉まるとすぐに、かんぬきの音が響く。
でも私は、かんぬきよりも別のところに意識を向けていた。部屋の中にはスワンソン先生、ミティ、そしてアンナが床に倒れていたのである。
いずれもピクリとも動かない。
まさか、不要とみなされて既に!? 慌ててアンナに駆け寄れば、アンナの口元には吐瀉物が。口元からは僅かにアルコールの匂いが漂う。
良かった、呼吸はある。
最悪の事態は避けられたみたいだ。私はアンナを優しく揺さぶった。
「アンナ、大丈夫? アンナ、ねえ」
しばらくしてアンナの瞼がぴくりと動く。
「う、うう……」
「アンナ、しっかりして!」
ゆるゆると目を開いたアンナは、まだ焦点が定まらぬ状況の中で、私を見た。
「……あ、よかったぁ。アヴリも無事だったんだぁ」
「私は大丈夫。それよりも何があったの?」
「なんか変な飲み物を無理やり飲まされて、そしたら急に眠たくなって……」
多分、睡眠薬か何かだ。それを無理やりアルコールで流し込まれたのか。酷いことをする。
「アンナ、気持ち悪くない? 痛いところは?」
「う、うん。まだ少し頭がぼんやりするけれど……」
アルコールが合わずに吐いてしまったことが、功を奏したのだろう。スワンソン先生とミティの様子も見たけれど、しばらくは起きそうにない。
ひとまず全員の無事を確認していると、アンナが背後から声をかけてくる。
「ねえ、どうしてアヴリだけ別の場所に連れて行かれたの? 何があったの?」
「うーん。なんていうか……」
どんなふうに説明したものか。あまり長々と説明していられるような状況にはない。
あ、そうだ。
「ごめん、その話は後で。それよりも私の荷物はどうなったか知らない?」
「荷物? えっと……荷物ならその辺りに」
アンナの指差した先に、荷物がまとめられていた。ただ、肝心のものが見当たらない。それでもダメもとで近づいてみれば、
「……やっぱり私の荷物は取り上げられてるか……」
そりゃ、短剣やら暗器が入ったバッグなど、その辺に転がしておきはしないだろう。
多少でも武器があれば、無理に脱出する方法もあったかも知れない。けれど、流石にそう上手くは行かないか。
「アンナ、悪いけど、みんなの荷物、開けるね。文句は助かってからいくらでも聞くから」
せめて何か、誰かの荷物に使えそうなものは……。
と言っても、淑女の嗜みに武器の携帯は該当しない。化粧品や衣類が関の山だ。
スワンソン先生、ミティの荷物の中を見てがっかりを繰り返し、それから最後にアンナの荷物に手をかける。
そうして半ば諦め気味に開いてみれば……。
「……アンナ、どうしてこれ、持ち歩いているの?」
「ん〜? あ〜やっぱり変かな? でも私、それが近くにあると、知らない場所でもよく眠れるの。だから、こうしてバッグに……」
これがあれば、もしかすると何とかなるかも知れない。
「ねえアンナ。これ貸して」
「え? うん。……いいけど。ねえ、何がどうなってるの? せめてそれだけでも教えてくれないの?」
うん。もしもこれが使えるんなら、うまくいった時の展開は想像できる。とすれば、アンナには余計な混乱を呼ばない方がいい。
……仕方ないか。
「まだ少し時間がある……かな? これ、タイミングがすごく重要だし……。あいつ(ゼクシア)がどれだけ時間を稼ぐのか。全く無策で来るわけじゃないと思うし。……そうすると、こっちにするのはサザビーさんの方だとして……」
「ねえ、アヴリ。何を一人で呟いているの?」
不安そうなアンナ。
私は真面目な顔を作って、アンナの前に座った。
「一つ、アンナに謝らなくちゃいけないことがあるの。私、本当はね―――」
こうして私の秘密を、友人の一人に明かすことになったのだ。




