【やり直し軍師SS-504】南征(13)
本作をいつもお楽しみいただきありがとうございます。
コミック第一巻の発売日が正式に公表されました!
10月7日です!
カバーイラストも解禁となりましたので、詳しくは活動報告をご覧くださいませ!
スラン王国、ブラノア執務室にサーバルスが報告にやってきた。
そのサーバルスが口を開く前に、ブラノアは指摘する。
「モリネラ王が悲鳴をあげたか?」
サーバルスも驚くでもなく、こくりと肯定。
「もうこれ以上の引き伸ばしは無理だと、泣きついてきました」
概ね予想通りの期間だ。むしろ、モリネラ王にしては頑張った方か。
「準備は整っている。問題はない。モリネラ王には『次の段階へ』とお伝えせよ。それからヴィアレとロフロの両国に兵を動かすように打診を」
「は。承りました」
短く返事をしたサーバルスはしかし、いつものようにすぐに退出しようとはしない。
「どうした?」
「は、いえ。すみません。本当にブラノア様が出ずとも大丈夫でしょうか?」
サーバルスがそのようなことを口にするのは珍しい。いや、おそらく初めてだろう。ブラノアはサーバルスの顔を見て、ほお、と思う。
「ドラク=デラッサ、ロア=シュタインのどちらだ?」
実際に本人達を見たサーバルスが、危機感を覚えるような怪物がいる。
「どちらも、です」
「……そうか」
面白い。サーバルスがそこまで評価する相手とは。しかし、だ。
「お前ほどの者が懸念するのであれば、両名ともに傑物なのだろうな。さすが、北の大陸の生ける伝説。だが、ドラク=デラッサ、ロア=シュタインともに、世界には一人しかおらん。ならばやりようはある」
ブラノアは立ち上がると、一面に地図が貼られた壁の前に立つ。つい先日までほぼ白紙であった北の大陸の地図には、今や無数の用紙が挿し止められている。
「まあ、それにだ」
ブラノアは北の大陸をなぞりながら、小さく笑う。
「失敗したところで、我らがスランにはなんの痛痒もない。仕切り直せば良いだけのこと」
「その通りでございます。さしで口を致しました」
「構わぬ。忠告は心しておこう」
「恐れ入ります。では」
サーバルスが退出し、室内に静寂が戻る。
「そう。我らにはなんの被害もないのだ」
ブラノアは歌うように、呟いた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ヴィアレ王国とロフロ王国の両国が動き出したという一報が届いたのは、船着場完成の翌日のことだった。
実にタイミングの良いものだ。
「それで、どういう状況だ?」
陛下にせっつかれながら、ダラーロさんが説明を始める。
「両国示し合わせてディアガロス街道へと部隊を押し出してきております」
ディアガロス山沿いの街道は、そのままディアガロス街道なのだなと、僕がどうでもいいことを考えている中、陛下が矢継ぎ早に質問を飛ばす。
「数は? 率いる将は? なぜ今出てきたか分かるか?」
「数はどちらもおそらく8千から1万ほどかと……率いる将はこれから」
「情報が不明瞭だな。貴国の諜報は何をしている」
「……まだ第一報でございますゆえ……。両国が動いたのは、無論、陛下らが大軍を上陸させたからにほかなりますまい」
うーん。微妙に嫌味な言い方だなぁ。まあいいけど。かえって話を持って行きやすくなった。僕は2人の会話に割って入る。
「では、我々のせい、とダラーロさんはお考えなのですね」
「け、決してそういう意味では……」
「いえ、別に責めているわけではありません。実際にこちらの部隊を見て敵は慌てたのでしょうし。我々の責任もあると思います。そこで少々提案が」
「はて、なんでしょうか?」
「この初戦。できれば最後の一戦にしたいとこではありますが、ともかく初手は我々、ルデクと帝国の軍のみで当たりましょう。モリネラ軍は王都の守護をお願いしたいと思います」
「なんと!? しかしそれは……」
声を上げたのは鎧姿の将だ。流石にモリネラ軍部としては侮られたと感じたのだろう。
「断っておきますが、初戦だけです。せっかくですから、僕らが味方に回った際の、信用というのを見せておきたいですし。戦いが続けば、当然あなた達にも共に戦っていただきます」
「そ、そういうことであるなら……」
うん。問題なく話が進みそうだな。
正直今回、僕らはモリネラと共同戦線を張りたくなかった。敵か味方か分からない部隊とは戦えない。これは事前に陛下とも相談済み。最初からモリネラを抜きにして戦う腹づもりでいたのだ。
そして同時に、一戦でけりをつける。
これ以上ダラダラと滞在するつもりはない。
こうして僕の意見は通り、僕らはディアガロス山に向かって進軍を始めたのである。




