【やり直し軍師SS-457】知者の戦い(12)
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ルベットと入れ替わるように登場したリヴォーテは、僕らを一瞥すると、
「では、俺はこれで」
と立ち去ろうとする。
「待て、太郎」
「お手、太郎」
即座に止める双子。
「誰が犬だ! 俺は忙しいのだ、貴様らの相手をしている時間はない!」
ともかく双子が足止めしてくれて助かった。このままリヴォーテにも立ち去られては、たまったものではない。
「リヴォーテは何か事情を知っているの? ちょっと説明して欲しいんだけど」
「……仕方がない。人を待たせているのだ、話が聞きたければついて来い」
そう言って、すたすたと進み始めたリヴォーテについてゆく僕ら。リヴォーテは城門を潜ってすぐに、一つの家屋の前で立ち止まる。
「ここだ」
「勝手に入っていいの?」
「ふん。初日に聞かなかったのか、この通りの建物は、すべて退去が済んでいる。誰も住んではおらん」
実に庶民的な家屋に入ってみれば、リビングにはオリヴィア様が待ち構えていた。
「あれ、オリヴィア様がどうしてこんな場所に?」
「うむ。むしろそれは我の聞きたいことであるが……いや、なるほど、ルベットの目当てはお主であったか。ロア」
一人で合点がいったと頷くオリヴィア様。僕らは思い思いに椅子に座り、あたらめて事情を聞くことに。
先にリヴォーテが見聞きした事をオリヴィア様へと伝え、それを聞いたオリヴィア様は、嘆息してから口を開いた。
「事情、といっても大した話ではない。ここのところ、ルベットの様子がおかしかったのでな、リヴォーテに頼んで様子を探ってもらっていたのじゃ」
オリヴィア様の言葉の続きを、リヴォーテが引き継ぐ。
「今日は試合が終わったあと、ああして城門の前でウロウロしていた。誰かと待ち合わせかと、念の為オリヴィア様を呼んでおいたのだ」
「なるほど。でも良く、ルベットに気づかれずにここに隠れることができましたね」
オリヴィア様は機敏に動けるタイプではない。けれど、その答えは簡単だった。
「屋敷の裏口から入れば良いだけであるからの」
「あっ、そうか」
ちょっと間抜けな質問をしてしまった。通りは封鎖されていても、家屋を挟んで反対側は人通りがあるのか。勝手に出入りできないように当然警備はいるだろうけれど、オリヴィア様やリヴォーテなら止められることはない。
「それよりも、愚息がすまぬ。迷惑をかけた」
オリヴィア様が頭を下げ、僕は慌てて返事をする。
「いえ。迷惑というほどの話では……」
「……いや、あの馬鹿者は、発言の意味を全く理解しておらぬのよ。幼い頃からちゃんと言い聞かせておいたというのに……」
「どういう事か伺っても?」
「うむ。時にロアは、我が出自についてはどこまで把握しておるかの?」
オリヴィア様の出自、それはかなり有名な話だ。かつて、初代帝国皇帝ドラクが最初に滅ぼした国、ウルテア王国の王の娘。すなわち亡国の姫である。
「あ、そうか」
「うむ。察してもらえると話が早いの」
満足げなオリヴィア様に対して、不満げなのは双子だ。
「おいロア説明しろ」
「オリヴィアの出自など知らん」
「うん。オリヴィア様は元々、別の国の王族だったんだ。その国は昔、陛下に滅ぼされた。細かい説明は省くけれど、そのあと色々あって帝国の重臣に落ち着いた。で、問題はここから。真意はともかくとして、ルベットは他国の重臣、つまり僕のことだけど、僕に対して戦を望むような事を言った。ここまではいい?」
誰からも質問が出ないので、僕は続ける。
「ルベットは僕に『戦に出られない八つ当たりをしたい』と言った。これは含みのない発言なのだと思う。戦争を知らない若い将官が、その時代を羨むのは、ルベットに限った事じゃないと思うから。けれど、オリヴィア様の息子であるルベットの発言は、ちょっと事情が違う」
「……確かに、解釈次第では亡国の王族の血筋をもつ者が、戦を望んでいると捉えられるわけですね。そのような発言をするのは、あらぬ誤解を与えかねないという」
「そう、ウィックハルトの言う通り。もちろん、陛下は気にしないと思うけれど、時代は確実に移ろっている。帝国皇帝はビッテガルド様になったし、徐々に帝国を創った重臣も引退してゆく」
「うむ、その通りぞ。我が血筋はとりわけ、その辺りの発言に気を払わねばならん。兄の方は我に似て、外交や政略に興味を持ったが、ルベットはネッツに似たのかもしれん」
本人は叶わなかった気持ちを、せめて僕にぶつけたかっただけなのだろうけれど、なかなか難儀なものだなぁ。
「それでオリヴィア様、このあとはどうするつもりなのですか?」
オリヴィア様の方で説得するのだろうか? まあ、その辺は僕が口を出すことではない。
「ドラクには我からも話しておく。すまぬが、一度相手してやってもらえぬか?」
「まあ、僕の方は構いません。でも、オリヴィア様も知っての通り、僕は古典的は初心者ですよ。一方的に負けたら、ご子息が妙な自信をつけたりしませんか?」
「あれも古典的は付け焼き刃よ。我も教えてはおらん。それに、古典的はより実戦に近い。ロアが簡単に負けるとは思わぬよ」
そんな風に期待をかけられ、僕は困惑しつつ、話を受けることになったのである。




