【やり直し軍師SS-434】双子と双子(上)
更新再開いたします!
三巻発売記念更新として、このまま発売日の3月7日まで連日更新です!
今回は少し毛色の違うお話となります。お楽しみ頂けたら嬉しいです!
SQEXノベルの第三巻もどうぞよろしくお願いいたします!!
きっかけは、私の土産話からだ。
私の生まれ故郷は、双子の村という。本当の名前もあるけれど、今はみんなこの通称を使っていた。理由は単純で、この村にはたくさんの双子が住んでいる。
これには少々事情があり、元から双子が多い村だっだわけではないけれど。
とにかくその故郷で新年を迎えるために帰省した私。王都に戻り、同郷の友人とお茶をしながら話した内容が始まりだった。
「双子の捨て子?」
「誰の仕業だ? モリス?」
私たちの村を双子の村にした張本人である、ユイゼストとメイゼスト。
2人が村に戻る事はほとんどない。最初は近所の人たちの取り止めもない話を聞くともなしに聞いていたのだけど、話題が捨て子の双子に移ると食いついてきた。
「捨て子だから、親はわからないわ。でも、わざわざあんな山奥まで子供を置きに来るんだから、私たちの村を知っていたのね」
「いくつくらいだ」
「誰が面倒を見ている?」
「面倒を見てくれているのはマリーさんよ。ほとんど喋らない兄妹だから正確なところはわからないのだけど、見た感じ歳のころは5歳前後かしら」
「マリーか」
「ならいい」
「他の双子達も何かと面倒を見ようとするのだけど、なかなか心を開いてくれないみたい。一度は村から逃げ出そうとしたって聞いたわ」
すでに村に住んでいた双子とは、やや事情が違うというのもあるのかもしれない。今いる双子は全員戦災孤児で、ユーとメイっちがどこからか連れてきた人たちだ。
彼ら彼女らは割とすぐに村に馴染んだ。まあ、背後に2人の圧力があったと言うのも大きいのだけど。
「ふうん」
「ふうん」
2人はそれ以上は追及せず、これで話は終わったと思った。ところが、その翌日私の職場へとやってきた2人は、
「モリス、村に行くぞ」
「準備しろ」
などという。
「ええ!? お休みが明けたばっかりだよ?」
「気にすんな」
「許可は取った」
私が上司に視線を移せば、やや困惑気味ながら手を払うような仕草をした。行ってこいという意味だ。
ユーとメイっちは英雄宰相様の側近であるので、彼女達がそうしたいと言えば、大概のことは通る。
子供の頃から2人を知っている私としては、絶対に権力を与えてはいけない人たちだと思う。
こうして私は、半ば連れ去れされるようにして、再び故郷に舞い戻る羽目になったのである。
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故郷に到着すると、入り口近くで顔見知りのおばさんが洗濯物を干していた。
「セザンおばさん!」
私の声に反応したセザンさんは、
「あら? モリス? あんた王都へ帰ったはずじゃ……」
言いかけてから、私の背後にいる2人に気づいて絶句する。
「もしかして……ユイゼストと、メイゼスト?」
「おう」
「久しぶりだな」
セザンさんは少し迷って、手を口に当て、それでも意を決したように私たちに近づいてきた。
「モリスから話は聞いていたけれど、本当に立派になって……」
私たちの故郷は、ユーとメイっちを追い出した過去がある。単に彼女達が双子であると言う理由で、双子は厄災を呼ぶという風習を盲信して。
セザンさんは比較的2人に友好的な方だったけれど、それでも負い目はあるのだろう。
まあ、ユー達が気にしているとは思えない。すでに“仕返し”は済んでいたし、ごくたまに両親には会いにきていた。他の住民には気づかれないように。
考えてみれば2人が正面から入ってきたのは、追い出されて以来初めてかもしれない。村の住民からすれば、衝撃は大きいだろう。
涙を浮かべるセザンさんと、二言三言、言葉を交わしていると、荷物を運んでいた双子の姉妹が、ユーとメイっちに気づいた。
「ユイゼスト様! メイゼスト様!」
持っていた荷物を投げ出すようにして駆け寄ってくる姉妹。彼女達もまた、ユー達が引き取ってきた孤児だった。
「ラロ、レンか」
「デカくなったな」
「「はい! おかげさまで!」」
騒ぎに気付いたのだろう。家々から人々が次々と、何事かと顔をだす。そうしてユー達を確認した住民達の反応は様々だ。
すぐに家を飛び出し、駆け寄ってくるのは2人が拾ってきた双子達。
セザンさんのように、やや困惑しながらも、それでもおずおずと近づいてくるのは、ユー達を表立っていじめていなかった人たち。
そして慌てて部屋に閉じ籠ったのは、2人を迫害し、追い出した張本人たちだ。
村には今でも、ユーとメイっちに嫌なことをした大人達がそのまま住んでいる。面白いことに、1人残らずだ。
彼ら、彼女らは恐ろしいのである。
かつて2人は村に対して罰を与えた。『送った双子を責任を持って面倒を見ろ』と。
あの当時ですでに、第四騎士団の副団長という権力を背景にした命令だった。さらに今は、ルデクで知らぬ人はいない、生ける伝説の一角である。
そんなユーとメイっちの命令に対して、大人達は考えた。
『村で双子を育てろと言った。それを破り、村を出れば制裁があるのではないか』と。
くだらないけれど、本気でそう考えているのだ。勝手に恐れ、勝手に罰を妄想して、そうして村から出られないでいる。
哀れだなと思うと同時に、私が口を出す話でもない。
そんな事を考えていたら、ユーとメイっちのお母さんがやってきた。
「あらあら、珍しい。今日は正面から入ってきたのね」
「新しい双子を見にきた」
「そいつらはどこだ?」
すると途端に、皆の顔が曇る。
年若い兄妹は、3日前に行方が知れなくなっていたのである。




