【やり直し軍師SS-423】グリードル91 平野の覇者16
SQEXノベル書籍版第三巻の表紙イラスト&特典SSについての情報が解禁となりました!
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ブランの前に駆け込んできた兵士は、ルボットの使者だと名乗る。
「ルボット殿の? 何の用だ? 今は見ての通り戦闘中ぞ」
ブランがやや不快そうに応じるも、使者も引き下がらない。
「ルボット様より、『現在の戦況はどうなっている』との事です」
「貴様は何を言っているのだ? そんな事を俺に聞いてどうする。ラノエルに聞くべきであろうし、そもそも、王都にいながら戦況を把握していないとはどういう了見だ?」
信じられない質問。ブランは続ける。
「むしろこちらが聞きたい。戦場はどういう状況なのだ。俺が事前に聞いていたのは帝国兵を疲弊させてから、俺たちが襲いかかるという話だった。見る限り予定と全く違う。不測な事態が発生しているならば、まずはそれを説明せよ」
ブランの逆質問に、兵士は首を傾げるばかり。
「私は、ブラン将軍に戦況を聞いてこいと命じられただけで、他には何もわかりませぬ」
「分からんという事があるか!」
ブランは怒鳴った。ブランは本来、北部にあるランビューレ第二の都市、ガザムの守護者である。ガザムを中心にルガー王国に睨みを利かせていたブランには、中央からの情報が乏しい。
今回とて、『帝国が攻めてきたゆえ、急ぎ可能な限りの兵をまとめて参上せよ』との知らせを受けて慌てて部隊をまとめている中で、後詰策が知らされたのだ。
そうして帝国に気づかれないためという理由で、王都への入城も許されずに離れた場所にとどめ置かれていた。
ようやく命令が下り、軍を進めてみれば予定とは全く違った状況。戦況を知りたいのはこちらの方である。
「そうは申されましても……」
ブランはふざけた態度の兵士の胸ぐらを掴む。
「おい。先ほどの言葉が理解できなかったか? 今は戦闘中だ。阿呆と話している暇はない」
「し、しかし……」
流石に顔色をなくした兵士を地面に叩きつけるように押し倒すと、ブランはもう一度怒鳴る。
「今、貴様の無駄話のせいで負けるかもしれんわ! 一言一句違えず、ルボットに申し伝えるがいい!」
最後に兵士を足蹴にしたブランは、再び眼前の敵に集中し始めた。
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「ブランは確かに『負けるかもしれん』と言ったのだな」
「はっ。ルボット様に一言一句違えずに伝えよ、と」
城内にある軍議の場で報告を受けたルボットは、難しい顔をして腕を組んだ。そんなルボットに対して、守備兵長の一人が意見を述べる。
「ルボット様、後詰が来て早々に『負ける』などというほどの状況とは思えません。何か、言葉の行き違いがあるのでは?」
「ほう? 貴殿は我が部下の報告に疑念があると?」
「……そういうわけではございませんが、しかし、ルボット様はずっと城内におられます。せめて、城壁からでも戦況を確認されては……」
「不要だ」
「しかし……」
「くどいぞ。武官には武官の。軍師には軍師の領分がある。貴様らも、守備兵としての仕事を全うすれば良い」
「ならば、ラノエル様にも状況を……」
「くどいと言っていようが! なんのためにブランに状況を確認したのか、貴様には何も分かってはおらぬな」
「一体、何を……」
「無論、王の御身を守るためだ。後詰にきたブランであれば、撤退も容易かろう。そのままガザムまで王をお連れし、立て直すことも念頭におかねばならん」
「まさか!? 王都を捨てられるか!?」
「人聞きの悪いことを言うな! 今回の苦戦は周辺国の援軍が来なかったためぞ。一度王都は帝国に預け、周辺国をまとめ、すぐに奪還する心づもりである」
「そのような都合の……」
「貴様程度の意見など聞いてはおらぬ! 私はこれより王に言上せねばならん。貴様らは帝国のゴミどもが王都に近づかぬように警戒を徹底しておれ! 良いな!」
それだけ言い捨て出て行くルボットの背中には、多くの冷めた視線が突き刺さっていたが、ルボットがそれに気づくことはなかった。
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丘の戦いも終盤を迎えようとしていた。
ラノエルの本隊も戦闘に参加し、どうにかこうにか丘を登る敵を押し返す。
ブランの方へ兵を出さずに正解であった。援軍を向かわせていれば、丘を獲られていたかもしれない。しかしまだまだ戦えている。ブランの方が優勢になれば、戦況は五分まで巻き返せるだろう。
戦いの本番はここからだ。
ラノエルが気合いを入れ、新たな伝令を飛ばすその最中。
ブランの部隊がゆるりと戦場から退き始めた。




