【やり直し軍師SS-407】共演⑦
皆様
今年も本当にお世話になりました。
初の書籍化、そして2巻発売と怒涛の一年でございました。
読者皆様の温かいご支援により、こうして無事に乗り越えることができました。
おかげさまで来年は3巻、加えてコミカライズの開始も控えております。
来年も皆様に楽しんでいただける物語を紡いでいけるように精進してまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
旅一座の祭典は、実に10日間の長期開催である。
レナーデ様たちの滞在は2ヶ月。その終盤に行われるのだ。思ったよりも準備に時間がかかったので、予定を少し繰り下げた感じ。
競い馬の場の場外に用意した舞台は、実に12個にものぼる。事前申請なしでも芸を見せることができる場所も、3箇所と当初の予定より増やした。
ちなみにこの各ステージに、僕はちょっとした遊びを盛り込んだ。
12の舞台での芸事は、それぞれの1日3組の一座が担当し、日替わりで芸を競いあう。最終日はその中でも一番好評を博した一座が、ステージを独占する権利を手にするのだ。
なお、最終日を獲得した一座には、ちょっとした賞品も出る。これはもう決まっていて、新しい馬車である。どこの一座も年季の入った馬車を騙し騙し使っているので、きっと喜ばれるはず。
昔の未来の僕の経験則からなので、そんなに外してはいないと思うけど、まあ、もしもいらないって一座がいたら、別のものを考えよう。
せっかく集まってくれたんだ。最終日の栄誉を手にできなかった一座にも、何らかの参加賞は提供したい。
ただし、お金はだめだ。お金は観客からの投げ銭のみ。これは旅一座の尊厳を守るため。金は観客が、宿は権力者が、規模が大きくなっても、不文律は変わらない。
念の為ゾディアにも確認したけれど、『そのほうがよい』という返事だった。
参加賞については一つ、ルファから面白い提案があった。
『衣装交換券はどうかな?』
詳しく聞けば、王都の仕立て屋に持ってゆけば、希望の服を作ってくれる券だという。もしくは既製品との交換でもよい。
以前、ゾディア達から専制16国のお土産として服を貰った時に聞いた話から、そのアイディアに至ったらしい。
『みんな新しい服を買うのも大変だって言ってたから!』
良い考えだと思う。今は王都の仕立て屋さんと調整しているところだ。問題なければ決まるだろう。あとは配る数かな? できれば人数分あげたいけれど、一座の規模で差が出るしなぁ。
うん、そうだ、いっそこの件はルファに任せてしまおう。ルファも王太子妃として色々と公務に参加しなければならないし。こういったところで功績を積むのは悪くない。
ある程度道筋ができたら、そこで引き継ぐのがいいかな。よし、決めた。
「さてと、次は……」
僕が山積みになった書類を一枚摘んだところで、
「なんだ、忙しそうだな!」
と、ズカズカと部屋に乗り込んできた人物が。
「陛下? いつ王都に?」
グリードル帝国皇帝陛下、ドラク=デラッサである。ルルリアを誘った段階で、来るのは確定していたけれど、思ったよりも早い到着である。
「ついさっきだ。ゼウラシア王に挨拶した足で、ここにきた」
全く、この部屋に来るのはノックもしない人たちばかりである。
「でも、催し物開催まであとひと月近くありますよ? 公務は大丈夫なのですか?」
僕の言葉に、皇帝は少しだけ真面目な顔をする。
「そろそろ引退する」
「えっ!?」
帝国皇帝がこんなところで安易に発して良い言葉ではない。驚いた僕に、皇帝はうまくいったとばかりにニヤリとした。
「つっても、引退まであと7〜8年か。その間に、ビッテガルドを中心に、権力を振り分ける。ロア、お前もいるか?」
「帝国の権力はいりませんね」
今ですら手いっぱいである。
「ちっ。せっかく勧誘してやったのによ」
「少なくともルデク王都ではやめてくださいよ」
「お? じゃあ王都以外ならいいのか」
「いいわけないでしょ?」
そんなしょうもない会話をしていたら、
「陛下、ここにおられましたか!」
と慌てて部屋に飛び込んできたのはリヴォーテだ。
「せめて私にだけでも行き先をお告げください!」
「細えこと言うなよ、左遷するぞ?」
「なっ!? そのような事を……!!」
なんか、最近似たような光景を見たなぁと思いながら、僕は放っておいて書類仕事を続けるのであった。




