表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
227/584

【やり直し軍師SS-226】山村の娘達③

書籍版表紙イラスト公開解禁となりました!!

今回のあとがきにて公開いたします!


おかしな旅人がやってきた翌日早々、私の家に双子がやってきた。双子は揃って朝が弱いので、ちょっと珍しいことである。


「珍しいね。どうしたの?」


 小首を傾げる私を半ば強引に森へと連れ出すと、


「昨日の話、くわしく聞かせろ」

「モリスのおやじ、話を聞いてたろ?」


 と、急かすように言う。


「昨日のって、旅人のこと? なんか大きな木材工場を作るから、周辺の村に協力して欲しいって言ってるらしいよ。2人のお父さんからは聞いてないの?」


「うちのはそういうの興味ないからな」

「昨日もずっと森にいた」


 双子の父親は腕の良い木こりだけど、寡黙だし人付き合いはあまり良くない。元々、双子の一件で一部の人からは白い目で見られているから、あまりこういった話は回っていかないのかもしれない。


「それで“あいつら”、また来るのか?」

「来るなら、いつだ?」


「今日、また来るらしいけど……あいつら? え? ひとりだったでしょ?」


「何言ってんだ。村の周りにいっぱいいたぞ」

「嫌な匂いを撒き散らしてた。あれ、血の匂いだ」


「えっ!? じゃあ、悪い人ってこと!?」


「たぶんな」

「逆にだれも気づかないことにびっくりだ」


「大変、お父さんに伝えないと!」


 慌てて戻ろうとするモリスの腕を、ユイゼストが掴む。


「むだだぞ。信じてもらえるわけがない」

「へたにさわげば、あいつらから目をつけられる」


「じゃ、じゃあどうしたら……」


「まあ、任せとけ」

「今日来るってことは、今日の夜かな? メイ」


「いや、明日の昼だろ? ユイ」

「あ、そっか。戦える大人は少ないほうがいいもんな」


「今日の夜やるか?」

「だな。あとで尾けよう」


 モリスを放置して、何やら危険な会話をする2人。


「ねえ、危ないことはやめようよ。相手は大人だよ? 2人のいう通りなら、殺されちゃうよ」


「あんしんしろ。ほうっておいても殺される」

「やられる前にやるしかない」


「全然安心できないよ!?」


「モリス、たぶん大丈夫だが、今日の夜はねるな」

「もしも騒がしくなったら、すぐに逃げろ」


「ユー……メイっち……」


 2人がこんな風になったら、私には止められない。ただ、相手が相手だ。私はただ、2人が無事に帰るのを祈るしかなかった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 村から少し離れた場所に、野盗が集まっている。


 そのうちの1人は、2日続けて村にやってきた旅人である。


「それで、どうだった?」


 野盗の頭がその旅人へ問う。


「上々ですよ。明日、朝一番にもう一度村に行って、この辺りの木の質の確認をするために、男衆と山へ入ります。俺の話をすっかり信じているんで、皆、馬鹿みたいについてくるでしょうね」


「愚かな奴らだ」


「まあ、目の前でパンパンに詰まった金貨を見せられちゃあ、まさか嘘だとは思いませんて」


「ふふん。その金貨が他の村を襲って手に入れたものだとは思いもしねえか」


 旅人の報告に満足した頭は、部下たちにを見渡すと、


「野郎ども、いよいよ仕事だ! 襲撃は明日の昼。目についた奴らはガキ以外全て殺せ。ガキは攫ってゴルベルへ連れて行く! そこそこの金になるだろ! 金目のものは見逃すなよ!」


「「「「「へい!」」」」」


「そんじゃあ、今日は前祝いだ!」


 頭の宣言で盛り上がる野盗たち。


 だが、


「よし! かんぱっ!?」


 頭が乾杯を最後まで言い終わることはなかった。その額には、暗闇から飛んできた片手斧が突き刺さっている。


「お、お頭!?」


 状況が掴めずに、頭の元へと駆け寄ろうと立ち上がったひとりの背中にも、片手斧が命中。血反吐を吐きながら焚き火の中へと突っ伏した!


「誰だ!」


「出てこい!」


 慌てて武器を掴んで構える野盗たち。


 がさりと音が鳴った方向へ剣を振り回しながら分け入った男は、首につるをかけられて、声を上げることもできずに倒れ込む。


 また飛び散った焚き火を松明代わりに周囲を窺っていた男は、足元から掌底を喰らい、松明を口に突っ込まれて昏倒。


 何が何だか分からぬ間に数を減らしてゆく仲間に、その場は混乱の極みに至る。


「ひっ」


 騙し役の旅人は、暗闇からやってくる得体の知れぬ怪物に腰を抜かし、どうにかその場を逃げようと、這いずりながら進む。


 そんな旅人の手が、何かに触れた。


「?」


 闇の中で手の感触だけで“それ”が何か確認しようとすると、どうやら靴であることがわかった。


 野盗の誰かだろうか? 旅人が恐る恐る顔を上げようとするよりも早く、


「よう、どこに行くつもりだ」


 耳元で、この場には似つかわしくない、可憐な少女の囁きが聞こえるのだった。




SQEXノベル書籍版 第1巻の書影!

森沢先生の表紙イラストです!


挿絵(By みてみん)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
虎はなにゆえ強いと思う?もともと強いからよ 虎を双子に変えても違和感がないな
[良い点] ふおおお……双子ぉぉ……! 村人に嫌がらせされても、こんなことを……! いやしかし、本当に強い。 大の大人を手玉に取るとは、さすがです。 [一言] 素敵な表紙絵ー! ついにこの表紙絵で飾…
[良い点] 子供の頃から危機感知能力含め強すぎる… 結果を見た村の人々の反応が気になりますね。 これ事後処理もどうなるんだろ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ