【やり直し軍師SS-148】雨
更新再開いたします!
またお付き合いのほど、よろしくお願いいたします!
今回作者も想定外の13話更新となります。気が付けば11月は24話くらい更新しておりますね。
加減がわかりません…
とにかくお楽しみいただければ嬉しいです!
タン、タタン、タン、タタン。
雨粒が中庭に面した通路を叩き、軽快な音楽を奏でていた。
ゼランドは書物から目を離し、しばし女神ローレフの使徒たちの音楽会を楽しむことにする。
少々湿気はあるが、雨によって冷やされたことで、部屋には心地よい空気が流れ込んできていた。
久しぶりの丸一日の休息日。それが生憎の雨でガッカリしていたが、体を休めるにはちょうど良い。
「音楽みたいだよねー」
いつの間にか筆を置いたルファが、同じように雨音に耳を傾けていた。
その横顔は日々大人びてゆくが、口調は出会った時と変わらぬままだ。
本来であれば、今日はルファや第10騎士団の面々と遠乗りをする予定であったが、この雨で中止に。
先ほどまでこの部屋にはロア夫妻もおり、テーブルを囲みお茶を楽しんでいたのだ。2人が先に帰り、ここにはゼランドとルファだけが残っている。
ゼランドはしばらくルファとの会話を楽しむと、その後、ゼランドは書物を開き、ルファは絵を描き始めた。
別に会話が続かなかったわけではない。最近はルファとこんな時間が増えてきている。心地の良い沈黙、ゼランドはこの時間が嫌いではない。
「私が鍵盤楽器でも弾けたら、この雨音にどのような音色をつけるだろうか」
「あれ、ゼランド君、弾けなかったっけ?」
「教養としての嗜み程度だ、即興で曲を奏でられるほどではない。そういえば、ルファは? 何か楽器を嗜んでいるのか?」
「弦楽器と笛は少しできるよ」
「へえ。それは初耳だ。誰かに師事しているのか?」
「最初はル・プ・ゼアの人から教えてもらったんだ〜。で、たまに一人で外で練習していたら、ポーラさんがたまたま通りかかって、笛を教えてくれることになったの」
「ポーラ女史が?」
ゼランドにとっては少々意外な話だ。ポーラ=イルセウス。貴族院の中心人物の一人で、法の番人たる厳格なお方だ。彼女が笛を嗜むのか。失礼ながら、あまり想像ができない。
「うん。ポーラさんの笛、すっごい澄んだ音色で、とっても良いんだよ。でも、あんまり外では吹かないって言ってた。もったいないねぇ」
「ん? ということはどこで習っているのだ?」
「ポーラさんのお家」
それもまた、驚くべき話だ。あのポーラ女史が簡単に自宅に招くとは。ルファの人の懐に飛び込む能力には常々感心していたが、改めて舌を巻く。
ゼランドが密かに呆れていると、ルファはさらに驚くことを告げた。
「それでね、弦楽器はゼウラシア様が教えてくれてる」
「ええっ!? 父上が!?」
思いもよらぬ言葉に、ゼランドは少し間抜けな声をあげてしまう。しかしなぜ、父上がルファに楽器を教えているのだ? 意味がわからないし、そもそも父上が弦楽器を奏でるところなど見たことがない。
「あ、これ言っちゃダメだったかな。ゼランド君、今の内緒ね」
「あ、う、うむ」
今更内緒と言われても……
「約束は守るが……その、せめて経緯を聞いても良いか?」
理由を聞けば単純な話であった。父上とポーラ女史、それとあと数名で、秘密の楽団を結成しているらしい。ポーラ女史から父上に話が行き、ルファを教えることになったのだと。
「しかし2人とも、なぜ隠しているのだろう」
ルファの話によれば、父上もかなりの腕前であるという。それならば余計に、皆の前で弾いても良いのと思うのだが。
「なんかねー、若い頃に仲間で楽団を作ったんだって。でもみんな貴族だから、旅一座の真似事みたいな事は周りにいい顔されなかったの。だから、密かに活動していたって言ってたよ」
「なるほど、確かに弦楽器などは庶民的な楽器ではあるな。しかし、別に貴族が扱ったとしても、それほど嫌悪されるような話ではないと思うが、昔は違ったのだろうか?」
「秘密組織みたいで面白かったんだって」
「……」
父上にもそのような時代があったと言うのは少し愉快に思う。今度聞いてみようか。
いや、やっぱりやめておこう。今でも密やかに続けていると言うことは、父上やポーラ女史にとっては、その空間が楽しいのだろう。今の私のように。
そうだな。こんな雨の日、ルファと音楽を楽しむのも、また、贅沢な時間かもしれない。
「ルファ、私も何か手軽に扱える楽器を覚えようと思う。笛など良いかもしれんな」
「あ、それなら私が教えてあげようか?」
「そうだな、それも良いな」
近々笛を準備しよう。折角だ、ルファにお揃いの彫刻を施した笛をプレゼントしたら、喜んでくれるだろうか。
雨はタタン、パタタンと音を奏でる。
ゼランドは、雨音に2つの笛の音が添えられることを想像して、雨の日も悪くないなと、改めて思った。
このお話、外で雨が降っていて、部屋にゼランドとルファがいる。と言うシーンだけ決めて書き出したのですが、思ったより良い感じになって満足です。




