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第207話 プリン。2

 あかっちが携帯をいじり始めてから15分が経過した。この間に客は誰一人来ていない。

  

 ……あれ?売り場整理しとけっていうから黙ってやってたけど……こいつ売る気ある?もしかしてかっこいい台詞言っといて、ソシャゲのスタミナとか消費してるんじゃねえだろうな。そんなんだったらマジでこいつにプリン300個投げつけてやるからな。食べ物を粗末にしてはいけないとかいう親の教えを遂に解禁してやるからな。おい。


「あかっち。本当にこれ大丈夫なのかよ」


「……売れる商品って何だと思います?例えば食べ物とかでいいっすけど」


 携帯を触りながら俺の話を無視して質問してくるあかっち。相変わらず舐めた態度を取りやがる。


「食べ物で売れる商品って……そんなのめちゃくちゃ美味いやつに決まってるじゃねえか」


「正解っすね」


 こいつは一体どんな意味があってこんな質問してきたんだ。時間の無駄じゃねえか。


「それがどうしたっていうんだ」


「このプリンって美味しいっすか?」


「……そうでもねえな」


「じゃあ売れないっすよね」


「だから困ってんだろ!!!」


 なんだ。俺に現実を突きつけて諦めさせる作戦か???


「でも実は売るのに大事なのは美味しいよりも美味しそうなんすよ」


「……は?美味しいのが大事に決まってんだろ」


「美味しいから買うっていうのはリピーターの行動原理なんすよ。今回売るのは新商品なんでいかに美味しそうに見せるかが大事なんすよ」


「……な、なるほどな。しかし、言ってることはわかったが、うちの店に客なんて大して来ねえんだぞ?美味しそうに見せた所で意味ねえじゃねえか。CMやってるわけでもないし」


「それで大事なのは口コミの力なんすよね」


 携帯を指さして見せるあかっち。


「口コミ?」


「まあ後で説明しますよ。俺の予想だと30分後、この店に列ができるんで、もう一人ぐらい用意しといてください。頼みましたよ」

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