第181話 トマト。2
「あかっちさん誰と電話をしていたのですか?」
「あざらしがカラーボールを投げた相手だよ」
「……その……怒っていましたか?」
「いや、トマトだって言ってた」
「え?」
バカ先輩との通話が終わり、この後どうするかを少し考えてみる。
……俺が出て行ってしまうと、新人のあざらしが一人になってしまうため、店が回らないだろう。
……あざらしが一人で出て行った場合、バカ先輩に会えたとしてもお互いの性格的にトラブルが大きくなるかもしれない。
……代わりの人を呼ぶというのはどうだろうか?……七海ちゃんと店長はデート中だから無理。……柚子ちゃんはたしか予定が空いてたはずだけど、なんとなく無理ということにしておこう。
そうなると選択肢は一つしかない。
「よし、店を閉めよう。お客さんが来る前に早めに出る準備してきてくれ」
「え?いいのですか?うちの店は24時間営業じゃないのですか?」
「まあ普通のコンビニなら絶対ダメだろうけど、うちの場合、店長が客から精神異常者だと思われてるから全然問題ないよ」
「そうなのですか?それなら着替えてくるのですよ」
念のためレジの金だけは金庫に移動させ着替えが各々済んだ後、店内照明を消した。
一度やってみたかったんだよな。店閉めるの。何の理由なしに閉めるのは流石に気が引けるが、謝りにいかなきゃいけないしな?カラーボールの塗料が付いた先輩を見に行きたいしな?全然オッケーでしょ。
外に出た後、適当な理由を書いた張り紙をドアに付ける。……自分でやっておいてあれだが、こんな真昼間にコンビニが閉まっているのも何だかシュールだ。
記念にスマホで写真を撮ってから俺とあざらしはバカ先輩の元へと向かった。




