第174話 だべる。
「あかっちさん。今日は店長さんいないのですか?」
「店に住み着いてるイメージがあるけど、今日は休みだよ」
「ずっと働いていると思っていたのですよ」
今日のシフトはあざらしと一緒だ。普段店長と一緒に入ることが多かったせいか、休みだったことが意外のようだ。24時間働いているイメージを持たれている店長も少し可哀想な気はする。
「まあ実際人手不足だから普段は働いてるんだけどね。今日は七海ちゃんとデートしてるはずだよ」
「デート???店長さんは七海さんの事が好きなのですか?」
「逆だよ。逆。今頃俺が勧めた所で飯でも食べてるんじゃないのかな」
「そうなのですか?」
「前に七海ちゃんから色々聞かれたからね」
以前七海ちゃんから店長とデートに行くことを聞き、その時に何かと質問を受けた。どんな食べ物が好きだとか遊びに行くならどこがいいとか……本人に聞けばいいんじゃないかと思ったが、変な所で不器用なんだろう。珍しくメモなんか取って俺の話を聞いていた。
……かなり今更だけど、そんなに頑張るほど店長って魅力的なのだろうか。全く持って理解できない。悪い意味で少年のような心を持った大人なのに。
「店長さんのことが好きだったとは意外だったのですよ」
「まあ完全に見たまんまだけどね。店長にだけ嬉しそうにしっぽをぶんぶん振ってるよ」
「しっぽが生えているのはもっと意外だったのですよ……」
「例えだよ。例え」




