第X話 エイプリルフール 番外編。2
「あ、ゴリラだと思ったら店長さんじゃないですか」
「……何しに来た」
仕事をしている最中に七海ちゃんが店にやってきた。
……まさかわざわざ嘘を付くためだけに店に来たのか?
「あの……今日って何の日かわかります?」
「エイプリルフールだろ?あかっちから嘘付かれたばかりだから、流石に今日は騙されねえぞ」
「いや、エイプリルフールもそうなんですけど……実は今日って私の誕生日なんです」
「…………そうなの?」
「はい。だから店長さんにお祝いしてもらおうと思って」
「へぇ……そうなのか」
「……お、おめでとうとか言ってくださいよ!誕生日なんですよっ」
「え?ああ、おめでとう」
「…………なんでそんなにリアクション薄いんですか。……流石の私でも傷つきますよ……」
「……だって嘘だろ?」
「……え?なんでわかったんですか??わかりにくい嘘だと思ったのに……」
たしかに誕生日を覚えてなければわかりにくい嘘だ。そう。覚えていなければ。
「だって七海ちゃんの誕生日って6月15日じゃん」
「…………わ、私の誕生日覚えてるんですか!?」
「ああ。七海ちゃんは俺にとって大事な従業員だからな」
「……な、何言い出すんですかっ!」
「何かプレゼントをしようと思って覚えてたんだよ」
「……そうだったんですか???……う、嬉しいですっ」
「………ふ、ふふふ」
「え?どうしたんですか?」
「……まさか七海ちゃんが俺の嘘に引っかかるとはな!!大事な従業員ってところから全部嘘だよ!!誕生日はさっき履歴書を整理した時に見たから、たまたま覚えてたんだよ!」
「…………え?」
「いやぁーあかっちにやられた嘘を真似できたぜ。やっぱエイプリルフールに人を騙すのって楽しいな!」
「……う、嘘付くなんて最低です!!!大嫌い!!!」
七海ちゃんも俺を騙そうとしていたはずなのに、何故かその後ボコボコに殴られた。




