第150話 しごと。
「店長、質問してもいいっすか?」
「なんだ?」
「カラーボール隠しました?」
「ふふっ……ようやく気付いたか」
今日のシフトはあかっちと一緒だ。カラーボールをそのまま置いておくと、何を仕出かすか分からないため、事務所の中に隠しておいたのだ。これで俺がいない隙に投げようと思ってもそうはいかない。ざまあみろ。
「いや……別に隠すのはいいんすけど……防犯的にどうなんすか」
「投げる機会なんて一生ないからいいんだよ!」
「カラーボールの存在全否定しましたね……。ま、この話は別にどうでもいいんすけど。もう一個質問していいっすか?」
「なんだ?」
「店長ってなんでコンビニで働いてるんすか?」
「……え?」
「いや、世の中いろんな職業があるのに、なんでコンビニなのかなって」
……意外に真面目な質問をしてきて少し考えこんでしまう。こいつも今は学生だが、就職に対して不安があるのだろう。だから近くにいて頼れるイケメンの俺に質問をしてきたってわけか。
「そんなに気になるのか?よし。それじゃあクイズだ」
「いや、そういうのいいんで」
「冷てえな!あれだよ。働いてる理由なんて何となくだよ!何となく!」
「……他にやりたいこととか、好きなことってなかったんすか?」
「別になかったな。だからまあなんとなくコンビニだ」
「好きでもないことを仕事にするってよく続きますね」
「最初は滅茶苦茶大変だったし、他にいい仕事あるだろって思ったよ。でも働いていくうちに、仕事っつうのは頑張った分だけ好きになれるもんなんだって気づいたよ。……今はお前らみたいな変な仲間が増えて結構楽しく過ごしてるぞ」
「……あ、腹減ったんで先に昼休憩もらいますね」
「人の話聞けよ!!今めっちゃいい事言ってただろ!!!」




