第123話 抜打ち。
バイト同士でシフトを組むとサボっているケースがある。
信用していない訳ではないが、同じ年代の子が集まればお客さんのいないときに雑談をする。なんてことはよくある話だと思う。少し会話をしているぐらいなら構わないが仕事を疎かにされては困る。こちとら雑談をしている1分1秒に対しても給料を支払っているんだから――。
というわけで俺は今、自分の店の前にいる。
……我ながら完璧な変装だ。頭にはニット帽をかぶり、度が入っていない超絶オサレ黒縁眼鏡を着用。そして口元を隠すためにマスクも付けている。このファッションなら、まず俺だと気づかないだろう。
今日のシフトは柚子ちゃんとあかっちが入っている。柚子ちゃんは真面目だからコツコツ仕事をしているだろうけど、あかっちは俺がいなければ、サボっていてもおかしくない。まずは店に入ったら本を立ち読みしよう。そこから二人の働きっぷりを確認するのが一番よさそうだ。
よし、それでは来店だ――――。
「……いらっしゃいませ……あっ!ふぇーふぇーふぇーふぇーふぇー!!!」
「えっ!ちょ!」
「ふぇーふぇーふぇーふぇーふぇー!!!」
「柚子ちゃん急にどうしたの?……って店長そんなかっこで何してんすか」
「なんで分かるんだよ!!!」




