第101話 キング。5
「師匠!お久しぶりです!」
「来る頻度高いな」
他店舗の店長、水川なんちゃらがまた店にやってきた。俺から学ぶことなんて何もないって。
「師匠。前回の課題だった「前出しとは何か」について考えてきました」
「……お、おう」
「前出しとは…………爆発です」
「ば、ばくはつ……?」
「はい、爆発です」
前出しってこんな哲学的でしたっけ。奥にある商品を前に出すことじゃねえの。
「な、なんで爆発なんだよ」
「物理学者シダエマ・ルエキの前出理論をご存じですか?」
「まず誰か知らねえよ」
「簡単に言いますと、前出理論は宇宙空間の歪みから発生する現象を前出しとして捉える理論の事を言います。そして私は「爆発」という結論に至りました」
「前出理論どこにいった!!最後説明適当すぎだろ!!」
「師匠……私は前出しの本当の意味を理解できたでしょうか……?」
「あーもう!よくわからんからもういい!」
「合格ということですね!?2週間仕事を休んで考えたかいがありました……」
こんなに時間を無駄にできる奴、世の中にいないんじゃないだろうか。
…………はぁ。また無茶な課題を出すしかない。
「次は前出しで富士山登ってこい」
「前出しで……富士山を……登る……?」
「そうだ」
「し、師匠!どういうことですか!!」
「自分で考えろ」
あーあ。師匠っての辞めたくなってきた……。




