<番外編>断罪イベント午前中
ここからは番外編です。
本編で出てこなかった所や、恋愛的なシーン、書きたかったエピソードを不定期に更新します。
第一弾はルーカスが連れてこられた後の話です。
マグノリア視点
「で、俺はなにすればいいの」
諦めたルーカスはふてぶてしく言った。
「君、ずいぶん態度が違うじゃないか」
「年上は敬え。お前が今元気なのは俺とマグノリアのおかげだからな」
「元気? それもそうか」
カイルは多分違う解釈をしたのだろうけど、何か納得している。
多分、ルーカスはアニメのカイルをイメージしているのだろう。あれは精神的に病んでたとおもう。
それに比べて今のカイルは心身ともにとっても健康的だ。
「その前に朝食にしよう。ルーカス、君の分もある」
「え? マグノリアの手料理?」
「そうだ」
「いや、そこでしれっと嘘つくのやめてください」
「その方がモチベーションが上がるかと思って」
4人で大変おいしい朝ご飯をいただきました。
「なんでルーカス、衝撃を受けているの」
「4人の中で、料理ができるキャラってルーカスだけじゃなかったっけ」
「……そうね」
お片づけをして、改めて座る。このまま厨房のテーブルで作戦会議するようだ。
「まず先に伝えておく事がある。昨日、五公の承認をもらい、マグノリアの婚約解消を成立させた」
「「は?」」
私とルーカスの声がハモる。レオンは平然としているので知っていたのか。
「王の配偶者を公の身内から出す制度も無くした。それならいいだろう? キャンディ嬢も犠牲にはならない」
「え、えええ」
「なんだ、喜んでくれないのか? そのまま王妃になりたいと言うのならその余地は残してあるが」
「そう言うわけではないですが」
「君は自由だ、と言う事だ。その話は後程な」
なぜ私の話が私を蚊帳の外において進んでいるのだ……
「まだ国王陛下含め王家には話していない。本日の会議で通知する。それはそれとして、僕もアルフレッドには心底腹が立っていてね。一言言ってやらないと気が済まない。仮にも幼馴染みだ。愚かなやつだと思ってはいたがここまでとは」
アルフレッドの話をするとどんどん目つきが悪くなる。
「昨日王宮に置き手紙をしてきたので、武装でもして乗り込んでくるだろう。そのままにしておいたら自分の所業が国王にバレるしな。怒られるのは嫌いなやつだから、なんとか誤魔化そうと僕を悪者にして倒しに来るのではないかと思う」
「ぶ、武装して倒しに?」
反乱イベントか?
いや、ゲームの反乱イベントはカイルが武装して王宮に乗り込んできた。逆?え、どっちが反乱?
「あいつが1人で丸腰で、僕に逆らえるわけないだろう」
カイルがふん、と、鼻を鳴らす。アルフレッド関連だと少し子供っぽくなるのは、やはりライバル視してるからなのだろうか。
「アルフレッドもあまり大事には出来ないはずだ。自分に非があるのは明白だし、そこを上手く誤魔化せるほどの頭はない。なので個人的に兵を借りてくるのが関の山だろう。多くて15くらいか?」
「10も連れて来れれば上出来じゃ無いですか」
「との事だ。で、それを無力化し、アルフレッドを一人にして僕のところに連れてくる、と言うのをルーカス、君に頼みたい」
「お、おう。10人か……俺の能力、目を合わせて、そうかもな、って思わせないと上手く発動しないんだよな。数人ならなんとかなるんだけど、10人か……ちなみに、取り逃がしたらどうなる?」
「俺がいるから問題はない。怪我人が増えるだけだ。なんなら全部逃がしてくれても構わない」
「……頑張ります」
要は、兵士をルーカスが無効化する。できなければレオンが肉体的言語で解決する、と、そういう事? ルーカス次第で暴力沙汰になるじゃない。
「ル、ルーカス、頑張って!」
私には応援することしかできない。ルーカスは弱弱しく笑って見せた。
「あのー」
蚊帳の外だった私は勇気を出して手を上げる。
「なんだ」
「私は? 何をやればよろしいかしら?」
「君は結果を受け取ってくれればそれで良いのだが」
「結果?」
「婚約解消と、アルフレッドの反省した姿は君に献ずるつもりでいる」
その時、私の脳内に、ありし日に読んだ悪役令嬢の物語がよぎった。
婚約破棄宣言(王子側からだが)、惨めな悪役令嬢(そして転生したり巻き戻ったりする)。
婚約破棄宣言というのは、そのようなストーリーの柱になるものではなかろうか。
華々しく、悪辣な王子とかわいそうな令嬢を際立たせるものではなかろうか。
「……ちなみに、どこにお通しするつもりですか?」
「応接でいいだろ」
「いいえ……お兄様。それはいけません」
そんなツカミとも言える大事なシーンを、会社の会議みたいな雰囲気にしてたまるか!
「断罪は大広間と相場が決まっています」
本当は豪勢なパーティーのスタート時、と言うのが良いと思うけど。残念ながら今から来賓を御招待するのは無理だわ。
で、あれば。
私は自分の手持ちのドレスと、カイルとお父様の衣装を脳内に並べる。
魔王のようなカイルとそれに従うマグノリア。レオンが軍服でも着て後ろに控えていたらすごく絵になる。
アルフレッドはたしかお化けが苦手だ。ゲームの肝試しイベントでビクビクしながらヒロインを守っているシーンがあった。
我が家は西洋風お化け屋敷のような雰囲気。……ちょうどいいではないか。
「ねえ、私もかなり頭にきているの。私からも一言言いたいわ」
私はにっこりとみんなを見回した。
「それに、見てみたくない? ビクビクしてみっともなく這いつくばる王子の姿を」
一瞬の間ののち、なぜかレオンもルーカスも、カイルを非難の目で見る。
「な、なんだ」
「なぜこうなった。悲劇のヒロインのはずなのに」
「間違いなく兄貴の影響だ」
「僕が何をしたというんだ!?」
脳内に、どんどん構想が広がる。準備には何時間くらいかけられるだろう、今手持ちの魔道具で使えそうなのはあるだろうか。
這いつくばったアルフレッドにそれを見下ろすカイル。
ゲームではなかった、反乱イベントのカイル勝利ストーリー。
大丈夫、ケガをさせなければ、何とでもなるはずだ。
「ふふふ、アルフレッド様には、ひと時の悪夢を見て戴きましょう」
私はなんだか楽しくなって、久しぶりに高笑いをしてみたのだった。
お読みいただきありがとうございました。
本編完結後、たくさんの方に読んでいただき本当にありがとうございました。
あと番外編として、レオン・ルーカス・ブルーの話と、兄妹がイチャイチャしてる話など更新予定です。
引き続きお付き合いいただけますと幸いでございます。




